神崎(かんざき)つくねは目を覚(さ)ました。まだ朦朧(もうろう)としている。だんだん頭がはっきりしてくると、目の前に顔が並(なら)んでいたので思わず叫(さけ)び声を上げて飛び起きた。つくねは見回して、
「な、何なの? どうして――」
いきなり月島(つきしま)しずくが抱(だ)きついて、「おかえり。ずっと待ってたんだからね」
それがしずくだと分かると、つくねはしずくを引き離(はな)し、「もう、何するのよ。しずく、やっと目を覚ましたのね。あたし、あなたに言いたいことがいっぱいあるんだから…」
「目を覚ましたのはあなたの方よ。戻(もど)って来てくれて、ありがとう」
「戻って…? あたし……。そうだわ。あたし、あいつのところへ行って…」
「あなた、覚(おぼ)えてないの?」柊(ひいらぎ)あずみが訊(き)いた。
「何を…。あたし、どうしてここに…」ベッドの横に座(すわ)っているアキを見て、「あなた、どこかで……。ああっ、あなた、ハルちゃんね」
アキはクスクス笑(わら)って、「残念(ざんねん)でした。あたしはアキよ」
「あっ、ごめん。でも、ずいぶん大人(おとな)びたわね。ハルちゃんは、一緒(いっしょ)じゃないの?」
アキは自分(じぶん)の胸(むね)に手を当(あ)てて、「いるよ、ここに。わたしの中にちゃんと生きてるよ」
つくねには何のことか分からないようだ。しずくが、そんな彼女を見て言った。
「おいおい話してあげるわよ。今は、ゆっくり身体(からだ)を休(やす)めて――」
<つぶやき>やっと戻って来ました。さて、これからの展開(てんかい)は…。どうすればいいんだ?
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