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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1204「侵略者」

2022-02-18 17:50:41 | ブログ短編

 とある一軒家(いっけんや)。ごく普通(ふつう)の家族(かぞく)が住(す)んでいた。母親(ははおや)が子供(こども)たちに言った。
「電気代(でんきだい)が上がってるんだけど…。あんたたち、遅(おそ)くまでゲームとかしてるんじゃ…」
 娘(むすめ)は即座(そくざ)に答(こた)えた。
「あたしは、受験勉強(じゅけんべんきょう)してるだけよ。お兄(にい)ちゃんじゃないの?」
 息子(むすこ)は、「僕(ぼく)だって…。そんな遅くまでやってないよ」
 天井(てんじょう)の方からコトンと物音(ものおと)が聞こえた。娘がビクッとして、
「ねぇ、今のなに? 上から変な音がしたわ」
 その時、急(きゅう)に家中の灯(あか)りが消(き)えた。父親(ちちおや)が手元(てもと)にあったスマホのライトを点(つ)けて、
「何で停電(ていでん)したのかな? ちょっと、ブレーカーを見てくるよ」
 父親は配電盤(はいでんばん)の蓋(ふた)を開けると、首(くび)をかしげた。見たこともない物が着(つ)いているのだ。父親は何だろうと思って手を触(ふ)れると、まるで感電(かんでん)でもしたように身体(からだ)を震(ふる)わせて気絶(きぜつ)してしまった。息子が駆(か)けつけると、ライトの微(かす)かな明かりの中に、何か動くものを見つけた。それが、突然(とつぜん)こっちに向かってきた。息子は叫(さけ)び声を上げた。
 ――朝になると、家族はリビングで目を覚(さ)ました。何でここで眠(ねむ)ってしまったのか…。誰(だれ)も、何も覚(おぼ)えていなかった。息子は身体をほぐしながら言った。
「何か、すごく嫌(いや)な夢(ゆめ)を見た気がするんだけど…。こんなとこで寝(ね)てたからかなぁ?」
 父親は、「朝ごはんにしよう」と言ってキッチンへ向かった。今までにない行動(こうどう)だった。
<つぶやき>もし電気代が増(ふ)えてたら、家の中に侵略者(しんりゃくしゃ)が入り込(こ)んでいるかもしれません。
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1203「新種発見」

2022-02-16 17:49:04 | ブログ短編

「教授(きょうじゅ)、こんな街中(まちなか)で新種(しんしゅ)の生物(せいぶつ)なんか見つかるはずないですよ」
 教授は振(ふ)り向くことなく双眼鏡(そうがんきょう)を覗(のぞ)き込みながら答(こた)えた。
「何を言ってるんだ。そんな先入観(せんにゅうかん)は捨(す)てたまえ」教授は突然(とつぜん)身を伏(ふ)せて、「見たまえ。あそこに動物(どうぶつ)が寝(ね)そべっているぞ。新種かもしれん。写真(しゃしん)を撮(と)るんだ」
「あれは…どう見たって、ただの猫(ねこ)じゃないですか。教授、もう帰りましょうよ」
「君(きみ)には忍耐(にんたい)というものがないのかね? そんなことじゃ、何の成果(せいか)も上げられないぞ」
 教授は、また歩き出した。少し行ったところで、教授は急に物影(ものかげ)に身を隠(かく)した。突(つ)っ立ったままでいる助手(じょしゅ)を手招(てまね)きすると、ひそひそと言った。
「見たまえ。何と美しい動物なんだ。これは、新種に間違(まちが)いない」
「教授。あれは若(わか)い女の子です。でも、それほど美人(びじん)じゃないですよ」
「君には、あの美しさが分からないのか? あんな美しい動物は、今まで見たことがない。何をしてるんだ? 捕獲(ほかく)するぞ。何としても手に入れるんだ」
「そ、そんなのダメですよ。人間(にんげん)の女の子ですよ。そんなことしたら、犯罪(はんざい)です」
「君は、何をびくついてるんだ。網(あみ)を出すんだ。あのくらいなら、私ひとりでも…」
 助手は、出て行こうとする教授の身体(からだ)を抱(かか)え込んで叫(さけ)んだ。
「止(や)めてください。そんなことしたら、僕(ぼく)まで失業(しつぎょう)することになっちゃうでしょ」
<つぶやき>新種を発見(はっけん)するには、とんでもない忍耐が必要(ひつよう)です。でも、これはダメです。
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1202「クローゼット」

2022-02-14 17:42:15 | ブログ短編

 彼は引っ越(こ)しを機(き)に、断捨離(だんしゃり)をすることにした。クローゼットの中のものを出しながら、「よくこんなにつめ込んだなぁ」と彼は呟(つぶや)いた。
 奥(おく)の方から紙袋(かみぶくろ)が出てきた。中を見てみると、クマの縫(ぬ)いぐるみが入っている。なぜこんなものが…。彼にはまったく記憶(きおく)がない。袋に入っていたので、新品(しんぴん)のように綺麗(きれい)なままだ。彼は考えた。こんなの飾(かざ)れないしなぁ。捨(す)ててしまうか…。彼はごみ袋に入れようとして、ふと手を止めた。
「いや、待てよ。ネットで売(う)れないかなぁ。きっと欲(ほ)しがる人がいるかもしれない」
 彼はまた考えた。これって、ゲームセンターの景品(けいひん)だったのかなぁ。それとも誰(だれ)かにもらったものだったか? 彼は、別れた彼女のことが頭に浮(う)かんだ。
「そういえば…。あいつ、こういうの好きだったよなぁ。まさか、あいつが置(お)いて行ったのか…。いや、そんなことは……」でも、それ以外(いがい)に思いつかなかった。
「何でこんなとこに入ってたんだろう。俺(おれ)が入れたのか…。う~ん、分からん」
 彼は彼女のことを思い出していた。楽(たの)しかったこともいっぱいあったはずなのに、思い出すのは口喧嘩(くちげんか)している場面(ばめん)ばかりだ。彼は呟いた。
「やっぱり、返(かえ)したほうがいいかなぁ…。でも、今さら連絡(れんらく)するのは…」
 彼はしばらく考えたが、引っ越しの段(だん)ボールの中へそれを詰(つ)め込んだ。
<つぶやき>クローゼットの中には、ものだけじゃなく思い出も詰まっているのかもね。
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1201「プラ層」

2022-02-12 17:43:35 | ブログ短編

 大学(だいがく)の研究室(けんきゅうしつ)に緊急連絡(きんきゅうれんらく)が入った。助手(じょしゅ)は講義(こうぎ)が終わったばかりの教授(きょうじゅ)に駆(か)け寄って、
「大変(たいへん)です。今、プラ層(そう)が見つかったと連絡が入りました。すぐ来てほしいと…」
「何だと…。すぐに、みんなを集(あつ)めてくれ。防護服(ぼうごふく)も用意(ようい)するんだ」
 現場(げんば)は防護幕(まく)に覆(おお)われていた。中に入ると、防護服を着た人たちが作業(さぎょう)をしていた。教授たちはプラ層がどこまで広がっているのかを確認(かくにん)すると、サンプルを手際(てぎわ)よく集めた。教授たちの作業が終わると、プラ層はまた埋(う)め戻(もど)された。
 学生(がくせい)の一人が助手に訊(き)いた。「あの…、プラ層って何ですか?」
 助手は呆(あき)れて、「君(きみ)は、そんなことも知らないで研究室に入ったのかい?」
「すいません。だって、この研究室なら誰(だれ)でも入れるって聞いたんで…」
「確(たし)かに、うちの研究室は人気(にんき)がないからなぁ。プラ層って言うのは、二万年くらい前の地層(ちそう)なんだ。この地球(ちきゅう)の至(いた)る所で見つかっている。君は大量絶滅(たいりょうぜつめつ)のことは知ってるかい?」
「ええ、高校(こうこう)の授業(じゅぎょう)で聞いたことが…。ホモサピエンスがいた時代(じだい)ですよね」
「そうだ。このプラ層に大量(たいりょう)に含(ふく)まれている物質(ぶっしつ)を、彼らが作り出したと言われている。この物質が大量絶滅の原因(げんいん)だったんじゃないかと、教授は調(しら)べているんだ」
「へぇ、そうなんだ。でも、何でこんな防護服まで着ないといけないんですか?」
「それは、ナノレベルの物質だからだよ。空中(くうちゅう)に舞(ま)い上がると、生物(せいぶつ)に取(と)り込まれてしまう可能性(かのうせい)があるんだ。何でこんな危険(きけん)なものを作り出したのか、理解(りかい)できないよ」
<つぶやき>未来(みらい)の人達に、こんな風に思われちゃうかも。でも、人間(にんげん)って絶滅したのか?
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1200「しずく155~帰還」

2022-02-10 17:40:05 | ブログ連載~しずく

 秘密(ひみつ)の場所(ばしょ)にみんなは帰っていた。神崎(かんざき)つくねは白いベッドに寝(ね)かされていて、アキが手当(てあ)てを始めている。そこへ、月島(つきしま)しずくが帰って来た。水木涼(みずきりょう)が立ち塞(ふさ)がって、
「あなた、本物(ほんもの)のしずくなの? 証拠(しょうこ)を見せなさい」
 しずくは面食(めんく)らって言った。「なに言ってるの? 私よ。見れば分かるじゃない」
 川相初音(かわいはつね)が口を出した。「そうよ。どう見たって、しずくじゃない」
「私は欺(だま)されないわよ。じゃあ、しずくの恥(は)ずかしい話しを聞かせて」
「そ、そんなこと言えないわよ。バカなこと言わないで…」
 柊(ひいらぎ)あずみが興味(きょうみ)を持ったようで、「私も聞いてみたいわ」
「先生(せんせい)まで…。もう、止(や)めてください。私は本物です。…じゃあ、いいわよ。話しても…」
 見かねたのか日野(ひの)あまりが味方(みかた)について、「間違(まちが)いないですよ。わたし、確(たし)かめました」
 初音が笑(わら)いを抑(おさ)えきれずに吹(ふ)き出して、「もうだめ…、ハハハハっ。我慢(がまん)できないわ」
 涼は残念(ざんねん)そうに、「もう、なにやってるのよ。もう少しで聞けたのに…」
 しずくは怒(おこ)った顔をして、「何なのよ。私のことからかってたの? ひどいわ」
 その時、千鶴(ちづる)が声を上げた。「静(しず)かにして。つくねが目を覚(さ)ますわよ」
 みんなは、つくねの回りに集まった。アキが治療(ちりょう)を終(お)えて言った。
「薬(くすり)は消(け)したわよ。他(ほか)には、怪我(けが)とかもないし、大丈夫(だいじょうぶ)だと思うわ」
<つぶやき>友達(ともだち)だからって、こんなことしちゃダメじゃない。仲直(なかなお)りしてくださいね。
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