goo blog サービス終了のお知らせ 

みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1209「転生す」

2022-02-28 17:43:20 | ブログ短編

「今度(こんど)は蛙(かえる)か…」彼は呟(つぶや)いた。「確(たし)か、その前は…蜘蛛(くも)だったかなぁ。まぁ、何に生まれ変わってもいいんだけど…。ゆるーく生きてくだけさぁ」
 彼には向上心(こうじょうしん)というものはないようだ。彼は、田植(たう)えが終(お)わったばかりの田んぼの水面(すいめん)に浮(う)かんでいた。鳴(な)くこともせず、身体(からだ)を動かすこともおっくうのようだ。
「どうせ何かに喰(く)われちまうんだ。じたばたしたって仕方(しかた)がない」
 田んぼの水がわずかに動き、彼の身体がふわっと上下した。何かが彼に近づいていた。
「やっときたか…。サギかなぁ、それとも蛇(へび)かもしれないなぁ。まぁ、何でもいいさぁ。これで蛙の人生(じんせい)も終わりだな。次(つぎ)は、もっと気楽(きらく)に生きていけるのがいいなぁ」
 彼は、何かに身体を掴(つか)まれた。彼が目を開けると、そこには人間(にんげん)の顔があった。どうやら子供(こども)のようだ。彼はあせった。でも、手足を動かそうにも身動(みうご)きができない。
 彼は小さな水槽(すいそう)の中に放(はな)された。彼は思った。
「なんてこった。俺(おれ)は、これからどうなるんだ? 人間に飼(か)われるなんてまっぴらだ」
 そうは言っても、ここから逃(に)げ出すことはできそうにない。子供たちが集(あつ)まってきて、水槽の中の彼を見つめた。子供の一人が言った。
「何だ。こんなちっちゃいカエルなんていらないよ。もっと珍(めずら)しいのじゃなきゃ」
 彼の身体は空(そら)を飛(と)んだ。そして、田んぼの中にぽちゃっと落(お)ちた。
<つぶやき>どんな生き物も、そこで生きてる理由(わけ)があるんです。諦(あきら)めちゃいけません。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする