とある一軒家(いっけんや)。ごく普通(ふつう)の家族(かぞく)が住(す)んでいた。母親(ははおや)が子供(こども)たちに言った。
「電気代(でんきだい)が上がってるんだけど…。あんたたち、遅(おそ)くまでゲームとかしてるんじゃ…」
娘(むすめ)は即座(そくざ)に答(こた)えた。
「あたしは、受験勉強(じゅけんべんきょう)してるだけよ。お兄(にい)ちゃんじゃないの?」
息子(むすこ)は、「僕(ぼく)だって…。そんな遅くまでやってないよ」
天井(てんじょう)の方からコトンと物音(ものおと)が聞こえた。娘がビクッとして、
「ねぇ、今のなに? 上から変な音がしたわ」
その時、急(きゅう)に家中の灯(あか)りが消(き)えた。父親(ちちおや)が手元(てもと)にあったスマホのライトを点(つ)けて、
「何で停電(ていでん)したのかな? ちょっと、ブレーカーを見てくるよ」
父親は配電盤(はいでんばん)の蓋(ふた)を開けると、首(くび)をかしげた。見たこともない物が着(つ)いているのだ。父親は何だろうと思って手を触(ふ)れると、まるで感電(かんでん)でもしたように身体(からだ)を震(ふる)わせて気絶(きぜつ)してしまった。息子が駆(か)けつけると、ライトの微(かす)かな明かりの中に、何か動くものを見つけた。それが、突然(とつぜん)こっちに向かってきた。息子は叫(さけ)び声を上げた。
――朝になると、家族はリビングで目を覚(さ)ました。何でここで眠(ねむ)ってしまったのか…。誰(だれ)も、何も覚(おぼ)えていなかった。息子は身体をほぐしながら言った。
「何か、すごく嫌(いや)な夢(ゆめ)を見た気がするんだけど…。こんなとこで寝(ね)てたからかなぁ?」
父親は、「朝ごはんにしよう」と言ってキッチンへ向かった。今までにない行動(こうどう)だった。
<つぶやき>もし電気代が増(ふ)えてたら、家の中に侵略者(しんりゃくしゃ)が入り込(こ)んでいるかもしれません。
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