みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1202「クローゼット」

2022-02-14 17:42:15 | ブログ短編

 彼は引っ越(こ)しを機(き)に、断捨離(だんしゃり)をすることにした。クローゼットの中のものを出しながら、「よくこんなにつめ込んだなぁ」と彼は呟(つぶや)いた。
 奥(おく)の方から紙袋(かみぶくろ)が出てきた。中を見てみると、クマの縫(ぬ)いぐるみが入っている。なぜこんなものが…。彼にはまったく記憶(きおく)がない。袋に入っていたので、新品(しんぴん)のように綺麗(きれい)なままだ。彼は考えた。こんなの飾(かざ)れないしなぁ。捨(す)ててしまうか…。彼はごみ袋に入れようとして、ふと手を止めた。
「いや、待てよ。ネットで売(う)れないかなぁ。きっと欲(ほ)しがる人がいるかもしれない」
 彼はまた考えた。これって、ゲームセンターの景品(けいひん)だったのかなぁ。それとも誰(だれ)かにもらったものだったか? 彼は、別れた彼女のことが頭に浮(う)かんだ。
「そういえば…。あいつ、こういうの好きだったよなぁ。まさか、あいつが置(お)いて行ったのか…。いや、そんなことは……」でも、それ以外(いがい)に思いつかなかった。
「何でこんなとこに入ってたんだろう。俺(おれ)が入れたのか…。う~ん、分からん」
 彼は彼女のことを思い出していた。楽(たの)しかったこともいっぱいあったはずなのに、思い出すのは口喧嘩(くちげんか)している場面(ばめん)ばかりだ。彼は呟いた。
「やっぱり、返(かえ)したほうがいいかなぁ…。でも、今さら連絡(れんらく)するのは…」
 彼はしばらく考えたが、引っ越しの段(だん)ボールの中へそれを詰(つ)め込んだ。
<つぶやき>クローゼットの中には、ものだけじゃなく思い出も詰まっているのかもね。
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