私はひょんなことから探偵(たんてい)を名乗(なの)る男と知り合いになった。彼とはなぜか気が合って、たびたび会うように…。私は探偵という職業(しょくぎょう)に興味(きょうみ)があった。でも彼は仕事(しごと)の話はほとんどしなかったので、私はちょっと不満(ふまん)だった。そこで私はあの事件(じけん)のことを訊(き)いてみた。
「ねえ、いま話題(わだい)になっている、あのQ邸(てい)殺人事件について、どう思いますか?」
探偵は微(かす)かに笑(え)みを浮(う)かべて、「ああ、あれねぇ…。あれは迷宮入(めいきゅうい)りになるでしょう」
「えっ、どうしてですか? 私は、あの屋敷(やしき)にいた人間が怪(あや)しいと思いますが…」
「それは、どうでしょう。僕(ぼく)には、何とも言えませんが…」
探偵は歯切(はぎ)れの悪(わる)い返事(へんじ)しかしなかった。そこで私は、自分の推理(すいり)を披露(ひろう)した。探偵は、私が話し終わると、コーヒーを一口飲んで言った。
「なるほど…、なかなかの推理ですね。でも、僕は違(ちが)うところに注目(ちゅうもく)しています」
「それは、どこですか? 私に教えてくださいよ」
「僕は新聞記事(しんぶんきじ)を読んだだけなんで、これが正しいと断定(だんてい)はできませんが…。あの屋敷には、他(ほか)にもう一人いたと思います。この事件の重要人物(じゅうようじんぶつ)です。そして、この事件に関係(かんけい)している人たちは、その人物のことを隠(かく)したがっている」
「どうしてそんなことが分かるんですか? もしそれが本当(ほんとう)なら、警察(けいさつ)に知らせないと」
「今となっては無理(むり)ですよ。それを証明(しょうめい)する証拠(しょうこ)は、もう無(な)くなっているでしょう」
<つぶやき>彼は名探偵なのでしょうか? この事件は、今だに解決(かいけつ)してないみたいです。
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