月島(つきしま)しずくは、これから何が起こるのか知っているようだった。入口(いりぐち)の鍵(かぎ)が外(はず)れる音がすると、ゆっくりと扉(とびら)が開いた。中に入ってきたのは銃(じゅう)を構(かま)えた男――。
しずくは男に微笑(ほほえ)みかけて、「ごめんなさい。私じゃダメかしら?」
男は不敵(ふてき)な笑(え)みを浮かべて、「月島しずくか…。まさかこんなところで会えるとはな。かまわないさ。ちょっと俺(おれ)と付き合ってくれるか?」
「それはどうかなぁ。あなたが悪(わる)いことはしないって約束(やくそく)してくれたら、考えてもいいわ」
「ふん…。ガキのくせに生意気(なまいき)だな。じゃあ、力づくで連(つ)れて行くだけだ」
男は銃をしずくに向けた。だが、男は気が変わったのか銃をベッドの上に放(ほう)り投(な)げると、ナイフを取り出してにやりと笑(わら)って、
「俺は、こっちの方が好きなんだよ。さぁ、その可愛(かわい)い顔に傷(きず)をつけたくなかったら、おとなしくしてろよ。さもないと――」
「さもないと…? あなたにはムリよ。私には勝(か)てないわ」
男は、しずくに襲(おそ)いかかった。しずくは男の攻撃(こうげき)をかわしながら、男と組(く)み合った。その時、しずくは嗅(か)いだことのある匂(にお)いに気がついた。男を突(つ)き放すと、
「あなたなのね。つくねを手に入れて、どうするつもりだったの?」
男は、女の姿(すがた)に変わっていた。あの、つくねに化(ば)けていた女だ。
<つぶやき>こんなとこにも現れるなんて、神出鬼没(しんしゅつきぼつ)ですね。手強(てごわ)い相手(あいて)になりそうな…。
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朝、友達(ともだち)から遊(あそ)びに来ないかと誘(さそ)われた。今日は休(やす)みだし、とりたてて他(ほか)にすることもなかったので出かけることにした。電話(でんわ)を切ってふと考えた。そういえば、あいつの家ってどこだったかなぁ? 私はどうしたものかと頭を掻(か)いた。
いつまでも考えていたって仕方(しかた)がない。私は、とりあえず出かけることにした。そして、歩きながら考えてみた。あいつの家に行ったことってあったかなぁ? いくら思い出そうとしても、思い当(あ)たらない。これは、どういうことなんだ?
私は、いつの間(ま)にか電車(でんしゃ)に乗っていた。これはいつもの習慣(しゅうかん)だ。仕事(しごと)に行くときいつも利用(りよう)しているからだろう。さて、どこで降(お)りればいいんだ?
いつの間にか、私はうとうとと眠(ねむ)ってしまった。目が覚(さ)めたとき、どこかの駅(えき)に着いていた。私は思わず立ち上がり、電車を駆(か)け降りた。これも、いつものこと……。
そこは初めて降りた駅だった。改札(かいさつ)を出て、これからどうしたものかと考えた。これはもう電話をするしかない。私はスマホを…。ここで気がついた。スマホを忘(わす)れたことに…。
もう、こうなったら諦(あきら)めるしかない。せっかくこんなとこまで来たんだ。駅の近くを散策(さんさく)して帰ろうと思った。駅前の商店街(しょうてんがい)を通ってしばらく行くと住宅地(じゅうたくち)に出た。何気(なにげ)なく表札(ひょうさつ)を見ながら歩いて行くと、友達と同じ名字(みょうじ)の家を見つけた。
まさか、そんなことあるわけが…。その家の玄関(げんかん)が開くと、その友達が顔を出した。
<つぶやき>これは奇跡(きせき)なのか…。いや、単純(たんじゅん)に思い出せなかっただけなんじゃないの?
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彼はこの星(ほし)にやって来た異星人(いせいじん)。彼の任務(にんむ)は、この星のことを調査(ちょうさ)することだ。そして、この星が侵略(しんりゃく)する価値(かち)があるかどうかを報告(ほうこく)するのだ。彼は人間(にんげん)の姿(すがた)に変身(へんしん)していたので、彼が異星人だとは誰(だれ)も気づかなかった。
この星へ来て二年が過(す)ぎていた。彼はいろんな場所(ばしょ)へ行って調査を続けていた。有益(ゆうえき)な資源(しげん)もいくつか発見(はっけん)できた。そして、人間という生物(せいぶつ)のことも分かってきた。文明(ぶんめい)ははるかに劣(おと)っていて、この星を制圧(せいあつ)するのは容易(たやす)いだろう。
――彼はとある町(まち)にたどり着いた。そこは、いさかいのない平和(へいわ)そのものの町で、住民(じゅうみん)は家族(かぞく)のように暮(く)らしていた。彼はこの町にしばらく留(とど)まることにした。調査もほぼ終了(しゅうりょう)して、帰還(きかん)の時まで休暇(きゅうか)をとることにしたのだ。
彼はこの町で、ある女性と知り合った。彼はその女性の笑顔(えがお)をみて、なぜか惹(ひ)きつけられてしまった。こんなことは初めてだ。彼は戸惑(とまど)った。長い間、人間の姿になっていた影響(えいきょう)なのか…。彼は、この町から離(はな)れることにした。
最後(さいご)に彼女に会ったとき、彼は思いも寄(よ)らないことを聞かされた。それは、この町の住民のほとんどが異星人だということだ。この星の魅力(みりょく)に惹かれて、ここに住み着くことにした連中(れんちゅう)ばかりなのだそうだ。彼女は、彼に言った。
「この星は、このままにしておきましょう。彼らがどんな進化(しんか)をするか、見とどけてみませんか? その方が、私たちには有益なのかもしれませんよ」
<つぶやき>なんと、そんなことになっていたなんて…。これは責任重大(せきにんじゅうだい)じゃないですか。
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彼女はどちらかというと目立(めだ)たないタイプの女性(じょせい)だった。その彼女が、同じ会社(かいしゃ)に勤(つと)めている男性(だんせい)から告白(こくはく)されてしまった。彼女は、心(こころ)の中で思った。
「この人、大丈夫(だいじょうぶ)なのかな? こんなあたしと付き合いたいなんて…」
彼女はネガティブなところがある。彼女は同僚(どうりょう)の友達(ともだち)に相談(そうだん)した。友達は親身(しんみ)になって、男性との付き合い方などレクチャーしてくれた。実(じつ)を言うと、彼女はまだ誰(だれ)とも付き合ったことがない。男性とどう接(せっ)していいのかまったく分からないのだ。
でも…。彼女は思い切って、彼と付き合うことにした。そして、初(はじ)めてのデートの日。昨夜(ゆうべ)は一睡(いっすい)もできなかっようだ。朝(あさ)になっても、彼女は布団(ふとん)から出ようともしなかった。彼女は布団の中で考え込んでいた。
「あの人が、恋人(こいびと)になるってことは…。あんなことや、こんなこともしなくちゃ…。それに、きっとこの部屋(へや)にもやって来るわよね」彼女は自分の部屋の中を見回(みまわ)した。
彼女は布団をかぶって、「ダメだわっ。こんな部屋、見せられないじゃない」
おいおい、どんだけ散(ち)らかってるんだよ。と、思わずつぶやいてしまった。それは、少しずつ片(かた)づけていけばいいと思うのだが、彼女にはそんな余裕(よゆう)はないようだ。
「どうしようっ。こんなあたしが、誰かと付き合うなんて…。間違(まちが)いだったのよっ」
彼女のネガティブが、むくむくと心の中にわき上がってきていた。
<つぶやき>誰か、彼女に活(かつ)を入れてやって下さい。やればできる人なんだと思うから…。
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「俺(おれ)は…、ちょっと悪口(わるぐち)を言っただけじゃないか。それなのに、何でこんなことに…」
「言い方が悪かったんだよ。何であんなこと言ったんだよ」
「お前も、それを聞くのか? そんなこと分かんないよ。つい言っちゃったんだから、仕方(しかた)ないじゃないか…。俺はちゃんと謝罪(しゃざい)したのに、何で許(ゆる)してもらえないんだよ。何で関係(かんけい)ないような奴(やつ)らまで、俺に敵意(てきい)を向(む)けるんだ? 俺に、どうしろっていうんだ…」
彼は翌日(よくじつ)から会社(かいしゃ)に来なくなった。数日後、会社でこんな噂(うわさ)が広がった。
「なぁ、あいつ、自殺(じさつ)したんだってな。まったく、バカなヤツだよ」
「お前、同期(どうき)じゃなかったのか? 何でかばってやらなかったんだよ」
「そんなことしたら、俺まで睨(にら)まれるだろ。そこまでは、付き合えないよ」
「あの人がいなくなってよかったわ。余計(よけい)な仕事(しごと)しなくてもよくなったし」
話しを聞いていた別の男が言った。「なぁ、あいつが何で自殺したか分かるか?」
「俺には責任(せきにん)なんてないからな。俺は、ただみんなと同じことをしただけだし…」
「あたしも、そうよ。あんなこと言った人を許すことなんかできないわ」
「あいつが何を言ったのか…。本当(ほんとう)に、君は知っていると言えるのか?」
「それは…。でも、みんながそう言ってるじゃない。だから、あたしも…」
「君(きみ)たちのしたことは、本当に正(ただ)しいのかなぁ。――それと、あいつ…まだ生(い)きてるよ」
<つぶやき>振(ふ)りかざした正義(せいぎ)の拳(こぶし)…。でも、それが誰(だれ)かを傷(きず)つけることもあるのです。
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