「君(きみ)も知っているだろ? あの未知(みち)の感染(かんせん)ウイルスのことは…」
「ああ。何か、人間(にんげん)を操(あやつ)って、大食(おおぐ)いをさせるってヤツだろ。恐(こわ)いよなぁ」
「我々(われわれ)が調(しら)べた限(かぎ)りでは、ヤツらは脳(のう)の奥(おく)に入り込んで変態(へんたい)をしているようだ。薬(くすり)も効(き)かないし、小さすぎて外科手術(げかしゅじゅつ)で取り除(のぞ)くことも難(むずか)しい。そこで、君に行ってもらいたいんだ」
「えっ? 行くって…、どこへ?」
「患者(かんじゃ)の身体(からだ)の中にだよ。我々が開発(かいはつ)した潜水艇(せんすいてい)で――」
「ちょっと待てよ。俺(おれ)は海へは潜(もぐ)るけど、人の身体の中なんて行ったことないぞ」
「心配(しんぱい)ない。医者(いしゃ)とエンジニアを同行(どうこう)させる。君は潜水艇の操縦(そうじゅう)に長(た)けているはずだ」
「そりゃ、俺はプロだけど…。もし、中で迷子(まいご)になったらどうするんだ?」
「それは外(そと)からモニターしているし、こちらから指示(しじ)をするから迷(まよ)うことはないはずだ」
「でもなぁ…。もし、ぶつかって傷(きず)つけたら…。何が起こるか分からんからなぁ」
そこへ、二人のクルーがやって来た。美しい女性の医者(いしゃ)と、ちょっと高飛車(たかびしゃ)な女性エンジニアだ。男は二人を見て、目の色を変えた。やる気が出てきたようだ。
エンジニアが不満(ふまん)そうに言った。「大切(たいせつ)な潜水艇を、こんな人に任(まか)せるんですかぁ?」
男は即座(そくざ)に答(こた)えた。「俺に、操縦できないものなんて、ないんだよ」
<つぶやき>ますます心配になってきました。無事(ぶじ)に任務(にんむ)を終えて戻(もど)ってこられるのか…。
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