神崎(かんざき)つくねは立ち上がると、窓(まど)に手をかけた。早く助(たす)けに行かないと、しずくが――。その時、後ろから不意(ふい)に声をかけられて、つくねはギクッとして身体(からだ)をこわばらせた。
「神崎さん、授業(じゅぎょう)は始まっているわよ。すぐに教室(きょうしつ)へ戻(もど)りなさい」
その声の主(ぬし)は、柊(ひいらぎ)あずみだった。つくねは少しホッとして、今までの事情(じじょう)を説明(せつめい)した。
「それはまずいわね。もし暴走(ぼうそう)でもしたら…」
「えっ、どういうことですか?」つくねはあずみを見つめて言った。
あずみはそれには答えず、「で、今どこにいるのか分かるの?」
「いいえ。そこまでは…。あたしにもっと能力(ちから)があれば――」
「うってつけの人がいるわ。応援(おうえん)を頼(たの)みましょう」
あずみはそう言うと、携帯(けいたい)を取り出して電話をかけた。相手(あいて)はすぐに出たようで、
「――ああ、そうよ。――助かるわ、話が早くて。――ありがとう。そこなら分かるわ。じゃ…。――え? ――そ、そうじゃないわよ。私は、そんなこと…。――はい、分かったから…。もういいでしょ。――いい加減(かげん)にしてよ。急(いそ)いでるから、切(き)るわよ!」
いつもは沈着冷静(ちんちゃくれいせい)なあずみが動揺(どうよう)していた。まるで子供(こども)のようにかんしゃくを起(お)こして、手にしている携帯に向かって、「私のこと監視(かんし)するなんて…。この、おたんこなす!」
あずみは、そばにつくねがいるのに気がついて、いつもの冷静さを取り戻して言った。
「気にしないで…。――分かったわよ。しずくの居場所(いばしょ)。さあ、行きましょ」
<つぶやき>応援を頼んだ相手って、どんな人なんでしょう。ちょっと気になりますよね。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます