みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0917「家風的結婚」

2020-07-03 18:01:30 | ブログ短編

「ねぇ、あんたはそれでいいの?」友梨香(ゆりか)は心配(しんぱい)そうに言った。
「えっ? ああ…、でも、お父様(とうさま)はとっても良(い)い方だって。だから、あたしは…」
 菊江(きくえ)はそう言うと、恥(は)ずかしそうにうつ向(む)いた。友梨香は呆(あき)れて、
「あたしにはムリだわ。だって、一度も会ったことのない人なんでしょ?」
「ええ。でも、お父様は、卒業(そつぎょう)したら、その人と結婚(けっこん)しなさいって…」
「それ、絶対(ぜったい)おかしいよ。好(す)きでもない人と結婚なんて。あり得(え)ないわ」
「あら、そうかしら? でも、お父様は、それが我(わ)が家(や)のためになるんだって…」
「どう考えても変だよ。あんたは家のために結婚するの? ほんとにそれでいいの?」
「どうして…。結婚相手(あいて)はお父様が決(き)めることになってるのよ。それが家風(かふう)だから…」
「分かんない。あたしには全然(ぜんぜん)わかんない。もう、いつの時代(じだい)の話しよ」
「えっ、そんなにおかしいかなぁ? だって、お父様は――」
「あんたさぁ。自分(じぶん)のことなんだから。自分で決めなきゃダメだよ。もし、その人がめちゃくちゃ変(へん)な人だったらどうすんのよ。そんな人と――」
「でも、そんなに変な人じゃなかったわよ。写真(しゃしん)、見る?」
 菊江は鞄(かばん)から写真を出すと、「どお? とってもすてきな人だと思うんだけど…」
「ああ…」友梨香は思わずため息(いき)をついて、「ねぇ、ほんとにその人の写真? 別人(べつじん)かもしれないわ。一度、会ってみましょ。あたしも一緒(いっしょ)に行くから。ねぇ、そうしよ」
<つぶやき>これは政略(せいりゃく)結婚なのか…。でも、友梨香は、あわよくばを狙(ねら)ってるのかもよ。
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