みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0920「しずく99~散乱」

2020-07-09 18:10:42 | ブログ連載~しずく

 バスケットボールは川相初音(かわいはつね)に向かっていくつも飛んで来た。だが、初音は難無(なんな)くかわして、水木涼(みずきりょう)の手を操(あやつ)った。身体(からだ)の自由(じゆう)を奪(うば)われている涼にはどうすることもできない。涼の両手は自身(じしん)の首(くび)をつかんだ。そして、じわじわと締(し)めつけていく。
 苦(くる)しい息(いき)の中でも、涼は落ち着いていた。床(ゆか)に転(ころ)がっていたボールを宙(ちゅう)に浮(う)かせると、初音の周(まわ)りに集(あつ)めた。初音は呆(あき)れて言った。
「いい加減(かげん)にしてよ。そんなことをしても、あなたには勝(か)ち目なんてないわ」
「それはどうかな…。あなたって…、ボールを止めることはできないのね」
 ボールがいっせいに初音めがけて打ち出された。初音はその場から瞬時(しゅんじ)に移動(いどう)した。そして、涼の背後(はいご)に現れた。初音が現れた瞬間(しゅんかん)、まるで狙(ねら)い澄(す)ましたように、初音の手にボールがぶつかってきた。初音は小さな悲鳴(ひめい)をあげて、その場にうずくまった。
 やっと身体の自由を取り戻(もど)した涼は竹刀(しない)を手にすると、体勢(たいせい)を立て直(なお)そうとしていた初音めがけて突(つ)きをくらわせた。これには、初音もどうすることもできなかった。まともにくらった初音は、宙に飛(と)んだ。そして、そのまま消(き)えてしまった。
 息(いき)を整(ととの)えながら涼は呟(つぶや)いた。「逃(に)がしちゃった。でも、まあいいわ。次(つぎ)は――」
 涼は周りを見回した。体育館(たいいくかん)のあちこちに転がっているボールを見て、
「うそ…。これ、私ひとりで片(かた)づけるの? もう、初音! 戻(もど)って来なさいよ」
<つぶやき>使ったものはちゃんと片づけないといけません。これは大切(たいせつ)なことですよ。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする