みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0924「猫のつぶやき」

2020-07-17 18:07:06 | ブログ短編

 吾輩(わがはい)は猫(ねこ)である。名前(なまえ)はまだない。こんなことを言うと、あの有名(ゆうめい)な作品(さくひん)と同じになってしまうのだが、実際(じっさい)にないのだから仕方(しかた)がない。
 吾輩の飼(か)い主(ぬし)は、まったく吾輩に興味(きょうみ)はないようだ。どうしてこんな家に来てしまったのか…。話せば長くなるのだが、手短(てみじか)に言うと、好きになった女を振(ふ)り向かせるためだった。どうやらその女は同じ職場(しょくば)の人間(にんげん)で、猫好きだという情報(じょうほう)を聞きつけたようだ。まったく迷惑(めいわく)な話である。で、結局(けっきょく)のところ、猫の話題(わだい)で盛(も)り上がりはしたものの、その女を家まで連(つ)れて来ることはできなかったようだ。まったく不甲斐(ふがい)ない結末(けつまつ)だ。
 しかしながら、そんなことは吾輩には関係(かんけい)ないことだ。吾輩はこの家で確固(かっこ)たる立場(たちば)を有(ゆう)している。腹(はら)が空(す)けば飼い主の足を引っかき、トイレが汚(よご)れていれば…それなりのペナルティーを科(か)す。吾輩はこの家では女王(じょうおう)なのである。
 吾輩の飼い主を観察(かんさつ)していると、どうにも無器用(ぶきよう)というか…人付き合いが苦手(にがて)のようだ。吾輩がこの家に来てから、一度も友人(ゆうじん)が尋(たず)ねて来たことがない。このままでいいのか…。吾輩はときどき心配(しんぱい)になってしまう。でも、吾輩は猫である。人間のことをどうにかできるわけでもない。
 吾輩はもしものときのために、次(つぎ)の飼い主の物色(ぶっしょく)を始めた。吾輩は器量(きりょう)も良いし、どこへ行っても可愛(かわい)がられるはずである。それは今の飼い主で実証済(じっしょうずみ)なのだから。
<つぶやき>猫というものは、したたかな生き物なのかもしれません。見習(みなら)いたいです。
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