みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0918「はめる」

2020-07-05 18:07:04 | ブログ短編

「ねぇ、父(とお)さんは?」息子(むすこ)は家にいた母親(ははおや)に訊(き)いた。母親は狼狽(うろた)えた感じで答(こた)えた。
「そ、それがね…。お父さん、しばらく…お仕事(しごと)で帰れなくなって…」
「えっ、何でだよ。この間、頼(たの)んだヤツ、買ってくれるって言ったのに」
「そう…、そうなの? だったら母(かあ)さんが買ってあげるわ。何を頼んだの?」
「新しいパソコンだよ。今のよりずっと性能(せいのう)の良いヤツなんだ。やっぱり母さんだよなぁ。父さんなんかよりずっと良いよ。ほんと、ありがとう」
 息子は嬉(うれ)しそうに母親に抱(だ)きついた。しかし、その目は笑(わら)ってはいなかった。
 ――ここは警察(けいさつ)の取調室(とりしらべしつ)。父親が刑事(けいじ)に問(と)い詰(つ)められていた。
「お前がやったんだな。お前のパソコンから証拠(しょうこ)は出てるんだ。だまし取った金も、お前名義(めいぎ)の口座(こうざ)に振(ふ)り込まれていた。これでも白(しら)を切るのか?」
「そ、そんな…」父親は必死(ひっし)になって、「ほんとに私じゃないんだ。そもそも、私はパソコンなんて使えないし…。あのパソコンは息子が――」
「パソコンが使えないって? だったら、お前の部屋にあった何冊(なんさつ)もの専門書(せんもんしょ)はどうなんだ。お前が買ったことは分かってるんだ。代金(だいきん)も、お前のクレジットカードで支払(しはら)われている。もう言い逃(のが)れはできないぞ。きっちり吐(は)いてもらうからな」
「えっ? 知らない…、私は、そんなの買ってない。信(しん)じてくれ! 私じゃない!」
<つぶやき>父親は冤罪(えんざい)なのか? もしそうなら、一番あやしいのは息子しかいないです。
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