「なぁ、これってどうやったらできるんだよ?」
父親(ちちおや)は、風呂(ふろ)上がりの娘(むすめ)に言った。娘は髪(かみ)をタオルで拭(ふ)きながら答(こた)える。
「まだやってるの? さっき教(おし)えてあげたじゃない。これは、こうして…」
「おお、そうか…。そうだよな。何だ、やっぱりそれでいいんだ」
「そんなんで大丈夫(だいじょうぶ)なの? ちゃんと使(つか)えるの?」
「大丈夫(だいじょうぶ)だよ。こんなのは電話(でんわ)とメールが使えれば、あとは別に…」
「あ~ぁ、もったいない。もっといろんなことできるのに」
「でもな、なんでこれって説明書(せつめいしょ)とかついてないんだよ。普通(ふつう)あるだろ?」
「そんなのなくても分かるようになってるのよ。で、あとはなに?」
「ああ、わるいなぁ。あとは、これなんだけどなぁ、これは何のやつなんだ?」
「ええっ、それ? そこから教えなきゃいけないの。もう、信(しん)じられない」
「だって、分かんないだろ? こんなにいろいろあったら…。何が何だか…」
「はい、はい。もう、仕方(しかた)ないなぁ。じゃあ、授業料(じゅぎょうりょう)として――」
「おいおい、金(かね)を取るのか? ここは、家族割(かぞくわ)りってことにしてくれないかなぁ。お父さん、そんなに小遣(こづか)いもらってないんだから…。頼(たの)むよ」
そんなことを言ってるけど、お父さんは何だか嬉(うれ)しそうである。久(ひさ)しぶりに娘と――。
<つぶやき>娘と会話(かいわ)がしたいためにしているわけではありません。必要(ひつよう)に迫(せま)られて…。
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