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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0261「すれ違い」

2018-07-16 18:56:58 | ブログ短編

「ねえ、私たちそろそろ…」恵里菜(えりな)は頬(ほお)を赤らめながら言った。
 隣(となり)で一緒(いっしょ)に飲んでいた友之(ともゆき)は、「あっ、そうだね。そろそろ帰ろうか」
「いや、そういうことじゃなくて…」恵里菜はじれったそうにしながら、「私、今日は、帰りたくないなぁ。何か、そんな、気分(きぶん)っていうか…」
 恵里菜は、今日こそ彼の気持ちを確(たし)かめようと思っていた。彼と付き合い始めて一年が過(す)ぎようとしている。なのに、彼ったら何もしようとしないの。キスだってまだだし、手を握(にぎ)ろうともしてくれない。私のこと、どう思ってるの?
 恵里菜は思い切って、「あの…、あのね。私たち…、付き合ってるんだよね」
 友之は一瞬(いっしゅん)考えてから、「まあ、ある意味(いみ)、そうなるのかなぁ。君と飲んでると楽しいし。ついついこっちも誘(さそ)っちゃうんだよねぇ。あっ、あんまり誘っちゃ悪(わる)かったかな?」
「いえ、それはいいのよ。別に、私も飲むの好きだし。でもね…」
「そうか」友之は何かを合点(がてん)したように、「そうだよな。悪かった。これからはなるべく…」
「なに? なに言ってるの?」恵里菜はますます彼の気持ちが分からなくなった。
「君(きみ)も、言ってくれればいいのに。そうだよなぁ。彼氏(かれし)とデートしたいよね」
「彼氏って…。えっ…? どういうこと? 私は、あなたと付き合ってるんだよね」
 友之は恵里菜を見つめたまま動けなくなった。彼女の気持ちが、やっと通じた瞬間(しゅんかん)だ。
<つぶやき>自分の思いを伝えるのは難(むずか)しい。相手(あいて)が同じ思いとは限(かぎ)らないしね。でも…。
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