その店は人目(ひとめ)につきにくい場所(ばしょ)にあった。店構(みせがま)えは喫茶店(きっさてん)だが、<未成年者(みせいねんしゃ)と禁煙者(きんえんしゃ)はお断(ことわ)り>の張(は)り紙(がみ)が入口(いりぐち)に貼(は)ってあった。店の名前が「喫煙喫茶(きつえんきっさ)」となっているので、まあ納得(なっとく)はできる。
店内(てんない)はさぞかし煙(けむり)が充満(じゅうまん)しているのかと思ったが、まったく普通(ふつう)の喫茶店と変わるところはなかった。ただ、テーブルごとに透明(とうめい)の仕切(しき)りで囲(かこ)まれ、焼き肉店のように煙出しの設備(せつび)がそれぞれについている。
メニューを見てみると、国内はもとより、海外(かいがい)の主立(おもだ)った煙草(たばこ)の銘柄(めいがら)がずらりと並んでいた。それぞれが、1本単位(たんい)で注文(ちゅうもん)できるようだ。メニューの最後(さいご)には、コーヒーなどの飲み物が申し訳程度(ていど)に載(の)っている。
店内には静かなBGMが流れ、座り心地(ごこち)の良いソファーに座って煙草(たばこ)を楽しむ。ここはそんな愛煙家(あいえんか)のお店のようだ。常連客(じょうれんきゃく)の中にはいろんな煙草の違(ちが)いを楽しむ人もいるそうで、煙草の香(かお)りや味(あじ)、煙のたちかたで銘柄(めいがら)を当ててしまう煙草マイスターも存在(そんざい)する。
普通に煙草を買うよりは割高(わりだか)かもしれないが、この場所の雰囲気(ふんいき)、居心地(いごこち)のよさを考えれば納得(なっとく)できる値段(ねだん)なのかもしれない。分煙(ぶんえん)が叫(さけ)ばれている昨今(さっこん)、ここが愛煙家の最後の砦(とりで)になることは間違(まちが)いないだろう。まだまだ愛煙家には厳(きび)しい時代(じだい)が続くようだ。
<つぶやき>煙草は、マナーを守って楽しみましょう。吸い過ぎには注意(ちゅうい)してください。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。