その研究所(けんきゅうじょ)は、森の中に隠(かく)れるように建(た)っていた。動物(どうぶつ)たちは典子(のりこ)をここまで連れて来ると、何のためらいもなく建物(たてもの)の中へ入って行った。
典子は、少し足がすくんだ。何となく薄気味悪(うすきみわる)く、いやな感じがしたからだ。あの犬が、典子の足に身体(からだ)をこすりつけて、「さあ、行こう。ここなら、あいつらも来ないさ」
建物の中にはいくつもの扉(とびら)があった。開いている扉から中を覗(のぞ)くと、わけの分からない機械(きかい)が並(なら)んでいた。一番奥(おく)の部屋へ動物たちは入って行く。その部屋の中は広く、大きな機械が回りをぐるりと囲(かこ)んでいて、色とりどりのランプが点滅(てんめつ)を繰(く)り返していた。
典子は不思議(ふしぎ)に思った。ここには電気(でんき)がきている。何でここだけ…。呆気(あっけ)にとられている典子に構(かま)わず、動物たちは機械の前のそれぞれの定位置(ていいち)についた。
「さあ、あんたの席(せき)はそこだよ」
小さな犬は、部屋の中央(ちゅうおう)に置かれた椅子(いす)へ目線(めせん)をやる。
「あの椅子はとても座り心地(ごこち)がいいんだ。あんたのためにあるような椅子さ」
典子は促(うなが)されるまま、その椅子に座った。確(たし)かに座り心地はいい感じだ。ふと、彼女は気づいた。この椅子にはいろんなコードがつながれていることに。その時だ。四匹の猿(さる)が飛び出して来て、典子の手足(てあし)に取りつき、留(と)め具(ぐ)で動けなくしてしまった。
典子は突然(とつぜん)のことに驚(おどろ)き、動揺(どうよう)して叫(さけ)んだ。「何するの! 外(はず)しなさいよ。外して――」
<つぶやき>この世界では、何が起こるか分からないです。誰(だれ)が敵(てき)で、誰が味方(みかた)なのか。
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