みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0264「もうひとつの世界2」

2018-07-19 19:16:57 | ブログ短編

 あれから三カ月が過(す)ぎようとしていた。家族(かぞく)の行方(ゆくえ)も分からず、典子(のりこ)は寂(さび)しさに耐(た)えながら暮(く)らしていた。町のあちこちへ行ってみたが、人の姿(すがた)を見つけることはできなかった。
 電気や水道も使えない不便(ふべん)な生活(せいかつ)。それにもやっと慣(な)れてきた。日の出とともに起(お)き、暗くなれば眠(ねむ)りにつく。水は川から汲(く)んでくる。生活排水(はいすい)が出ないせいか、すごく澄(す)んだきれいな水になっている。食べ物は、スーパーからもらってくる。お肉(にく)や魚(さかな)、野菜(やさい)なんかはダメでも、缶詰(かんづめ)とか乾物(かんぶつ)、お菓子(かし)は食べ放題(ほうだい)だ。彼女一人なので、しばらくは大丈夫(だいじょうぶ)だろう。でも、健康(けんこう)のためにと、野菜を育てることにした。近くの畑(はたけ)を借(か)りて野菜の種(たね)を蒔(ま)いた。園芸(えんげい)初心者(しょしんしゃ)の彼女だが、そこは本屋で手引(てび)き書(しょ)を手に入れた。道具(どうぐ)はホームセンターへ行けばなんでも置いてある。
 生きていくメドもつき、これからのことを考える余裕(よゆう)もできた。事件(じけん)が起きたのは、そんな時だ。夜中(よなか)に、家の周(まわ)りで何かが動き回る気配(けはい)を感じた。ガタガタと物音(ものおと)がしたのだ。
 典子は眠れないまま朝を迎(むか)えた。恐(おそ)る恐る外へ出ると、家の周りにはこれといって異常(いじょう)はなかった。だが、畑へ行ってみて彼女は驚(おどろ)いた。収穫(しゅうかく)間近(まぢか)の野菜が荒(あら)らされ、無残(むざん)な状態(じょうたい)になっていたのだ。彼女は駆(か)け寄り調(しら)べてみたが、食べられそうな野菜はほとんどなかった。ふと周りを見ると、人の手ほどの足跡(あしあと)がいくつも残(のこ)されていた。
<つぶやき>あなたはこんな状況(じょうきょう)でも、生きていけますか? 生きる自信(じしん)はありますか?
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