徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:今野敏著、横浜みなとみらい署暴対係シリーズ『スクエア』(徳間文庫)

2022年04月01日 | 書評ー小説:作者カ行

『逆風の街』『禁断』『臥龍』『防波堤』に続いて横浜みなとみらい署暴対係シリーズ第5弾となる『スクエア』ですが、なんと今野敏氏の著作200冊目でもあるそうです。記念すべき一冊に相応しいと言えるかどうかは分かりませんが、本シリーズの安定の面白さであることは請け合いです。

横浜みなとみらい署暴対係係長「ハマの用心棒」こと 諸橋とその補佐である城島は熱心に仕事をするあまり組織の枠組みから外れてしまうことも往々にしてあるため、警察の綱紀を正したいと自ら進んで県警本部監察官となったキャリアの笹川に目をつけられて、ことあるごとにそのやり方に対して文句を言われてきましたが、この巻ではその笹川が朝っぱらから横浜みなとみらい署にやって来て、神奈川県警本部長のお呼びだから一緒に来いと諸橋・城島を連れ出しに来ます。そんなお偉いさんの呼び出しは、普通に考えていいことであるはずがないので何か処分でも下るのかと思っていたら、新任の佐藤本部長は割とくだけた人で、自分の在任中に成果を上げたいからマルB関係では諸橋たちを頼りにしているから好きにやってくれと言う。
そして、早速横浜・山手の廃屋で起こった殺人事件で、被害者がマルBと繫がりがあるようだから捜査本部に本部長特命で入るように指示されます。
被害者は中華街で一財産を築いた中国人で、三年前から山手の自邸に籠っているという話でした。ところが、その屋敷を調べていると、さらに白骨死体が見つかり、 そちらの方が本物の資産家の中国人で、先日発見された死体はその中国人に成りすまして不動産売買の詐欺を働いていたらしいことが明らかになり。。。
という感じに事件が入り組んでおり、マル暴と不動産詐欺が絡んだ殺人事件であるため、捜査本部は捜査一課と捜査二課に暴対係を加えて捜査することになりますが、それぞれやり方が違うので衝突もあります。
また、今回は笹川監査官が諸橋・城島の補佐(監視?)としてくっついて回るので、ペアではなくトリオで結果的にいい働きをすることになります。

解説によるとこの作品は『清明 隠蔽捜査8』とリンクしているそうです。隠蔽捜査は7巻の『棲月』までしか読んでないので、これは8巻も読まねばと思った次第です。😅 


安積班シリーズ
 
隠蔽捜査シリーズ

警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ

ST 警視庁科学特捜班シリーズ

「同期」シリーズ

横浜みなとみらい署 暴対係シリーズ

鬼龍光一シリーズ

奏者水滸伝

書評:奥山真司監修、『サクッとわかる ビジネス教養  地政学』(新星出版社)

2022年04月01日 | 書評ー歴史・政治・経済・社会・宗教


ロシアによる大々的なウクライナ侵攻の影響で、にわかに地政学が脚光を浴びているようで、関連書籍が注目を集めています。
このため、何冊か私の目にも止まり、そのうちの一冊『サクッとわかる ビジネス教養  地政学』をサクッと読んでみました。

私の地政学的知識は非常に断片的で、ヨーロッパに偏っていたのですが、本書によって多少その偏りが是正されたと思います。

まず、そもそもの話として地政学とは何か、という問題から始まり、宗教・文化等に関わらず、地理的な条件から国の振る舞いを見るために、世界勢力をランドパワー(内陸国家)とシーパワー(海洋国家)に分割し、外に出ようとするランドパワーとそれを抑え込もうとするシーパワーの対立と捉え、これを踏まえて世界各地の物流(主に海路)の要所をめぐる紛争の歴史的経緯を見て行きます。
基本的に地図上で状況を分かりやすくビジュアル化するのが地政学の本領なので、世界史でよく出てくる色分けされた地図も使われるのですが、各国がマンガ的に擬人化されているので、さらにマンガ的に理解しやすくなっています。
これならば確かに多忙なビジネスマンでも「サクッとわかる」と断言できます。
大まかな国際関係上の紛争問題の原因と経緯もサクッと把握でき、感情論や理想論抜きに各勢力・国家の持つ地政学的事情や動機から現状を理解し、今後の動きもある程度までは予想できるので、非常に面白いです。

なぜ北方領土は返還されることがないのか、なぜ沖縄に米軍基地が集中しているのか、なぜちっぽけな尖閣諸島が重要なのか、なぜロシアがクリミア半島を併合し、ウクライナを抑えようとするのか等々

もちろん本書は地政学の「さわり」くらいの表面的な入門書に過ぎませんが、そういうものと無縁な生活を送っている大抵の一般人にとっては、まずそのようなものの見方があるということを学ぶのが肝要かと思います。

目次
はじめに
Chapter 1 地政学のルールを理解せよ! 基本的な6つの概念
Chapter 2 関係国とのリアルな情勢を知る 日本の地政学
Chapter 3 世界を動かす大国の戦略が見える アメリカ・ロシア・中国の地政学
Chapter 4 さまざまな思惑が複雑に絡み合う アジア・中東・ヨーロッパの地政学
おわりに