『ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集』は、ユダヤ教のウルトラオーソドックスの宗派に改宗した著者が、世界最古にして最大の議論集「タルムード」にある数々の説話とそれらの根底にある知恵を紹介しています。
【目次】
はじめに――タルムードに満載されているサバイバルの知恵
第一章 お金を引き寄せるユダヤ哲学
「この世には人を傷つけるものが三つある。悩み、諍い、空の財布。三つのうちからの財布が最も人を傷つける」
- 魔法のザクロ~「ノーペイン・ノーゲイン」ー犠牲なくして成功なし
- 七匹の太った牛と七匹の痩せた牛~豊かさの次には必ず対貧困が襲ってくるーしかし貧困の次に豊かさが来るとは限らない
- お金を恵むなら全員に~借りたものを惨めに扱うなかれー尊厳を傷つけない貸し方をせよ
- 土地は神が与えたもうもの~土地は誰のもの?ー土地の所有は50年でご破算に
- ナポレオンとニシンの話~小さな儲けにとどめよーそれを繰り返せ
- 金の冠をかぶった雀~財産を見せびらかすと身を滅ぼすー人目には普通の雀と映るのが安全
- 正直な仕立て屋~偽装商法は幸せを遠ざけるー正直な生き方にお金は宿る
- ソロモン王のウィズダム~懸命で賢明な生き方(ウィズダム)こそお金を引き寄せる
- ウィズダムを売る老婆~ウィズダムにはお金を払うー対価(犠牲)なしで賢明さは身につかない
- 悪魔と助産婦~人のためにお金を使えば、長く幸せになれる
「今日のあなたは、自分の穀物倉庫を見て穀物の量を数えようとした。その瞬間にあなたは神から見放される」
第二章 タルムードの知恵をビジネスに活かす
「なぜユダヤ人の目は中心が黒くてその周りは白いのか?」
「世界は暗い面から見た方が、物事がよく見えるからだ」
- 神との交渉~しつこい交渉と少しの成果の積み重ねーユダヤの漸進主義を仕事に活かせ
- デボラの闘い~権力者にも臆するなー日頃から議論の勉強を積め
- 手と足と目と口、一番偉いのは誰?~口こそ最大の武器であるー日本人はプレゼン力を磨け
- モーゼの反論~疑問の精神こそ道を拓くー「No」、そして「because」を言う訓練を
- キツネと葡萄畑~何でも自分でやろうとすると危険がいっぱいー「サブコントラクト」と「ブラックボックス」
- 用心しすぎたアラブの商人~過剰な要人は良い結果を生まないー「心配」ではなく「適性判断」をせよ
- 難破船の三人の乗客~適正なリスク計算ー冷静に計算できる人間が生き残る
- 明日に種を蒔け~企画・立案ができる人材養成をー売れる商品にはダイバーシティが必要
- 二人の乞食~人とお金を動かす「仕組み」を作るープラットホーム作りは人の心理を読んで動け
- ユダヤ人の黒い瞳~好調な時こそ、苦境への準備をせよー時に全部捨てる「レハレハ」の勇気を
- あるラバイの最悪で最良の災難~最悪の事態はそれよりももっと悪いことから救ってくれることかもしれない
- 道に迷ったお姫様~多くの失敗から学ぶー悪い時の経験が成功に導く
「最も良い教師とは、最も多くの失敗談を語れる教師である」
第三章 すべてを捨てる覚悟が道を拓く
「From Dust to Dust
人はDust(塵)から生まれてきた。生まれてきてから得たものに執着するな。いずれは人はDust(塵)に戻っていくのだから」
- 青年アダムスの疑問~神の視点で物事を考えよー人間の及びもつかない見方で見よ
- 悪いのは誰?~情報は疑って見よー思考停止が判断を誤らせる
- ノアの方舟の真実の話~善と悪は、別々に存在しない。いつも一緒にいる。
- 追い詰められたユダヤ人の奇策~命を奪えるのは神のみー命をあきらめない
- 兵士とパスポート~決してあきらめないー起死回生の一打を必死で考え実行せよ
- 小魚と水~目に見えないものこそ大切なものー日本人はものに囚われている
- グルメは死罪だ~貧者のように食べよーグルメに走る者は神を忘れる者
- パラダイスを見つけた男~幸せは単調な今の中にあるー「あなたのいる場所」を大切に
- ヘブライの王の助言~幸福と幸福感は別のものー幸せの価値を見極める
- 母鳥と三羽のヒナ~教育とは「教育することを教育する」ことだーユダヤ式教育の真髄
- 一〇個のクッキーの与え方~子どもに苦労を教えるー人生は良い時ばかりではないという教育
- 鶏の卵の運び方~子どもに教えるリスク分散ー答えは子ども自身に見つけさせる
- 愚かな農夫~子どもの個性を大切にするー横並びの教育の重大な問題点
- メロディーを買った青年~「形のないもの」に目を向けるー知的価値は物的価値に優る
- 村人の三つの願い~今も生きる助け合いの精神ー持続してこその相互扶助
「どんなに裕福な金持ちであっても、助け合いの心を持たない人間は、豪華な料理に塩がないのと同じである」
あとがきにかえて
この「タルムード」を介してユダヤ人がいかに考える習慣や質問するまたは議論することを身につけ、適正なリスクを取り、考えられるリスクに対応するための対策を講じるか等々が説かれています。
その中で、ユダヤ人の教えがいかに優れており、現代日本人がいかに考えなし、備えなしで損をし、自らの未来を危うくしているか警鐘を鳴らしているのですが、この辺りは少々度が過ぎているように思えます。というのは「ユダヤ人」というくくりと「日本人」というくくりを作って比較対照している時点で一面的な一般化・単純化をして、一方を礼賛し、他方を貶めているからです。
「だから日本・日本人はダメなのだ」的な論調に目をつぶれば、紹介されている説話は非常に興味深く、教訓・示唆に富んでおり、それらに含まれる知恵は確かにビジネスに有効活用できるものです。
目次を見るだけで教えのエッセンスがすでに分かりますが、1つ1つの説話も読み物として面白いので、お勧めです。