海外のニュースより

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「金融危機によって、10兆5000億ドルが失われた」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2009年08月29日 | 国際経済
経済学者のジョセフ・スティーグリッツが、2008年8月に、金融危機はまだしばらく続くだろう、そして損失は1兆ドル以上に達するだろうと警告したとき、このノーベル経済学賞受賞者は多くの方面から何を言うことやらという反応しか得られなかった。多数の政治家、銀行家、経済人は、それまでに、いくつかの銀行と不動産部門を襲った金融危機は、間もなく、過ぎるだろうと確信していた。「金融市場での諸条件は、次第にまた正常化する」と欧州中央銀行総裁のジャン・クロード・トリシエは、一年前に述べた。
それから何が起こったかは、よく知られている。9月15日に、米国の投資銀行リーマン・ブラザースが破産した。その破産は、金融システムを地獄に引きずり込んだ。世界は、ショックを蒙り、金融機関は相互の不信から、金を貸さなくなった。銀行が次々に困難に陥り、政府の介入と中央銀行の介入にだけが、金融システムを崩壊から救った。
金融危機の次に、グローバルな経済危機が起こった。それは1929年の大恐慌に匹敵するもだった。国々は次々に経済成長の下落を経験した。そういうわけで、ドイツのGDPののびは、今年はマイナス6%に達する。
 スティーグリッツ教授の予測が正しかったら良かったのにと思われるかも知れない。なぜならば、危機は、1兆ドルではなくて、遙かに大きな損害をもたらした。それは、「コメルツ・バンク」が『ヴェルト・オンライン』のために仕上げた計算によれば、損失額は、2009年末までに10兆5000億ドルに達するだろう。2007年第三4半期以来、銀行や他の金融機関の倒産総額は、1兆6000億ドルに及ぶ。計算は、ブルームバーグの情報に基づいている。米国と英国の住居不動産の価値喪失額は、2009年末までに、4兆6500億ドルに達する。最後に2008年と2009年の世界経済の落ち込みは、「コメルツバンク」の計算では、4兆2000億ドルに達する。この銀行は、危機がなければ、世界経済は、それ以前の年の平均値を保ったであろうと仮定している。実際、2008年の成長率は、低く、2009年には、60年前から初めて、縮小した。「コメルツバンク」の計算では、全体で、10兆4,730億ドルが失われたことになる。そのうちドイツが貢献した金額は、2,370億ドルである。そのうち1,040億ドルは、ドイツの銀行の帳消し額であり、2008年と2009年の低い経済成長によって、国内総生産は、1,330億ユーロだけ減少した。「われわれがGDPで測っている収入減は、驚くほど大きい」と「コメルツバンク」の主任経済アナリストであるクレーマーは言う。「収入減はまだ長いことわれわれにつきまとうだろう。
それ故、喪失額は将来更に増大するだろう。なぜならば、将来の押さえられた世界経済成長は、計算の中にまだ入れられていないからである。銀行はその財務報告においてまだ旗竿の終わりまでは到達していない。国際通貨基金は、不足額は、2010年の終わりまでに、40億ドルにまで達するだろうと恐れている。このシナリオが的中すると、銀行はこれまでにその不良債権を半分しか償却していない。
にもかかわらず、希望のきっかけが存在するとクレーマーは言う。銀行は既に1兆3000億ドルの資本金を受け入れ、その資本金の不足の80%を補った。米国の不動産市場も安定化しているように見える。住宅価格はもはや下落しない。景気は下降を止めた。「これに成功したということは、すごい結果であって、決して自明ではない」とクレーマー言う。

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