海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「ジョージ・ブッシュと彼の仲間は、阿呆で気が狂っている」と題するインタービュー。

2006年08月24日 | イスラム問題
経済史家のダグラス・ノースは、中東紛争の解決手段として金を提案している。アメリカの実際の中東政策に対してこのノーベル賞受賞者は、重大な非難をした。このアメリカ人が彼の意見でもって社会哲学への境界を乗り越えたのは、これが初めてではない。ノースは、ヨーロッパとアメリカにおける長期的な経済発展についての研究で有名になった。この研究でも既に彼は形式的な規則と非形式的な規則の役割を強調している。非形式的な規則に数えられるのは、法規則と並んで、倫理的規範と習俗やしきたりである。
--ノースさん、経済学者としてあなたはどうしたら中東紛争を処理できるかお考えはありますか?
ノース:勿論あります。イスラエル人に50億ドル(5,800億円)やりましょう。パレスチナ人が彼らの経済を発展させ、イスラエル経済と結びつくように、彼らは25億ドルをパレスチナ人にやるとします。イスラエルとパレスチナとの経済的統合が、この地域の平和を確保するために必要です。これについては問題はないでしょう。このような解決が両者に及ぼす長所は、巨大なものです。それではなぜそうしないのですか?
--でもそんな金額はどこから出るのですか?
ノース:米国はこれほど馬鹿げたことのためにこれほど多額のお金を出しています。だったら、50億ドルぐらいは調達できるでしょう。
--それでうまく行きますか?
ノース:本質的な問題があります。交渉をする人たちには国民を集団的に善い振る舞いへと義務づけることは残念ながら恐らく可能ではないでしょう。特に未来のために義務づけることは可能ではないでしょう。この認識は重要です。
--ということは、私たちはもっと深く掘り下げなければなりません。では、兵士を誘拐し、航空機を空中で爆破するように人間をし向けるこの原理主義はどこから来るのでしょうか?
ノース:原理主義はどの宗教の中にもあります。そして宗教は至るところに存在します。
信仰体系を使って、合理的でない物事を説明しようとしなかった人間社会はありません。あなたがどれほど馬鹿げた物事を信じているかは、私にはどうでもいいのです。だが、あなたが信じていることを信じるように私を強いるとすると、そのとき問題が生じます。不寛容に基づく干渉は、歴史の過程で、あらゆる宗教にから出てきました。イスラム教からだけでなく、キリスト教からも出てきました。
--人間を「正しい信仰」へと強制することは、何の役に立つのですか?
ノース:それは社会の内的な団結と関わりがあります。社会はある共通の分母を必要としているのです。それを作り出す一つの道は、人々に共通の信念体系を与えることにあります。それはインフォーマルな制度です。その都度の信念体系がどのように見えるかは、その都度の文化や社会の経験と関係があります。共通の信念体系への衝動が、そういうものとして形式化されると初めて、それは原理主義へと堕落します。
--不寛容な信念体系が貫徹された場合、車輪はその場合でも逆転できますか?法律のような形式的制度は、政治的決定によって変えることができます。ある社会の信念体系のようなインフォーマルな制度はこれに対してコントロールすることができません。
ノース:勿論何かをすることはできます。何よりも先ずどうしてどういうことになったかを理解することが大事です。この点では、ブッシュ大統領と彼の仲間は、非常に阿呆で馬鹿げています。意見の違う人たちを全部殺すことはできないです。彼らを理解しようとすする場合、彼らのすることを是認することはできません。だが、ともかくも彼らとコミュニケーションすることはできます。
--経済的にうまく行かない社会の人々は宗教的原理主義になりがちなのでしょうか?彼らには他に結びつきがないから、彼らは何かそれに代わるものが必要なのでしょうか?
ノース:良い質問です。でも、それは確かではない。われわれは人間の決断の基礎やメカニズムについては非常に僅かなことしか分かりません。特になぜ、よりによって西欧で良い教育を受けて、金を儲けている人間が成熟した年齢でイスラム教に改宗し、テロリストになるのかを説明することはできません。
--にもかかわらず、イスラム社会は、その宗教のせいで、経済的に劣っています。それには何が欠けているのでしょうか?
ノース:彼らの信念体系に基づいて彼らには西欧で形成された本質的な制度が欠けているのです。西欧では、繁栄への努力が自己貫徹するように、教会も配慮しました。われわれが知っているよう形での企業が存在しません。つまり基本的に無限の寿命をもった企業が存在しません。イスラム社会の企業はすべて小さくて、その所有者と共に死ぬのです。イスラム社会が自己を解放し、個人の寿命を超える経済形態を展開するとき、つまり非人格的な匿名の交換過程を許す経済形態を展開するとき、イスラム社会は初めて前進することができます。複雑な社会は、匿名の交換過程を許す制度を必要とするのです。ついでに言うなら、中国にもそれが欠けています。
--でも中国は経済的には遥かにうまく行っています。
ノース:確かにそうです。中国は気が違ったみたいに差を詰めています。だが、いつか、彼らは根本的なディレンマと対決しなければならないでしょう。彼らがこれまで着手した改革は、すべて人格的交換の原理に、重要な人物との接触に基づいています。それは非常に大きな経済には適合しません。彼らはそれから決別して、すべの人に普遍的で請求可能な平等な権利を保証する制度を定着させなければなりません。さもないと、その過程はいつか転覆します。そのとき、体制は自分の権力的地位を確保しようとする利潤追求者のために窒息するでしょう。民主主義的プロセスを導入しなければ、うまく行かないでしょう。政治的には中国は依然として共産主義的独裁制なのです。
[訳者の感想]8月20日付けの『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に載ったインタービューです。このダグラス・ノースというノーベル賞を受賞した経済史家を私は知らなかったのですが、彼の考え方はとても面白いと思ったので、このインタービューを訳して見ました。
コメント (1)
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