白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(420)ロッパの新婚旅行

2022-12-17 18:03:38 | 映画

ロッパの新婚旅行

You Tubeで懐かしい映画を観た 戦前(昭和15年)の映画だ 当時人気者だった古川ロッパの主演映画だ

スタッフには脚本・監督に山本嘉次郎 製作主任はなんと若き日の黒澤明だ

あらすじ

ビール会社社長のガラマサどん(古川ロッパ)(*)は朝風呂で義太夫を唸るのが趣味である 毎日西洋歌を歌っている一人息子一郎(ロッパ二役)に嫁を持たそうと思い立ち、今はレコード屋をやっているかっての使用人夫婦(川田義雄、清川虹子)に相談する 夫婦は由緒ある家の娘でレコード歌手の映子に白羽の矢を立てるが当の一郎にはおでん屋で働くお千代(三益愛子)という恋人がいた

(*)ガラマサどんとはロッパが得意とするキャラクターで映画の前年有楽座の舞台でやっていた 当時のユーモア小説家佐々木邦の代表作

昭和15年がどういう年かというとまず前年古川ロッパに長男清が生まれた 後の東宝プロデューサーで数々の東宝ミュージカルをプロデュースした それから新興芸能による吉本タレント引抜き事件がおこり吉本からアキレタボーイズが引き抜かれ残った川田義雄がミルクブラザーズを結成して再起を図ろうとしていた 清川虹子は東宝の大株主の大沢商会専務で恋人大沢清治との結婚を控えて益々きれいになっていた時代である この映画と同じような御曹司との恋の最中であった清川はこの映画をどう思っていたのだろう 三益愛子は愛人川口松太郎との間に私生児、浩を産んだばかりであった 「新婚生活」は晴れて結婚出来る戦後1952年まで辛抱しなければならない

川田義雄のキャラに合わない役どころだなと思っていたら この役は元々柳家金語楼の予定だったが製作のミスで押さえてなかったので急遽の代役だった

古川ロッパというのは膨大な日記を残しているのでこの映画の撮影状況が手に取るように分かる それによると昭和14 年11月15日 山本嘉次郎が自ら「本読み」をする 「念のいったいいシナリオだ」 11月27日 クランクイン 砧村セットでガラマサどん出社シーンを撮る 同28日 社長室シーン(有楽座千秋楽)同29日 ロケ予定が風強くセットでガラマサどん、朝風呂シーンを撮る 同30日 一郎の部屋 12月1日 スタジオ撮影 同2日 スタジオ撮影  同3日 ロケ リヤカー引いて引越しのシーン 同4日 応接室 二役シーンをガラマサどん部分 同5日 渡辺はま子の家のシーン 同6日 曇につきセット 同7日 齒か腫れる ジャズチンドン屋演奏シーンのみ 同8日 齒の腫れ引かず ロケ愛染かつらパロディ、同9日 ロケ ジャズチンドン屋の行進シーン 同10日 聖路加病院近く ジャズチンドン屋シーン 同11日 トラック荷台で歌うラストシーン 同12日 撮影終了 川田義雄のシーン 昭和15年1月 封切り

ガラマサどんと一郎が会話する合成シーンはお見事

〽どこまで続く泥濘ぞ の「討匪行」のメロディでロッパが歌う替歌に乗せて描く駆け落ち貧乏世帯と対比的に描かれるガラマサどんや歌手渡辺はま子の昭和初期の裕福な生活ぶりが面白い

ロッパのガラマサどんの老人キャラは「家光と彦左」の大久保彦左衛門で完成をむかえる 


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