白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(332)「おもろい女」復活

2018-08-05 17:48:20 | 思い出
  「おもろい女」復活

 昨年2月自らのガンを公表して中日劇場、新歌舞伎座、シアタークリエの「おもろい女」公演を休演した

 4月に公演を予定しておりました「おもろい女」のミス・ワカナ役の藤山直美さんが 医師により初期の乳がんと診断され 加療に入られることになりました
誠に残念ですが これを受けて関係者協議の結果 この度の「おもろい女」は全日程公演中止とさせていただくことと致しました

中日劇場と新歌舞伎座公演は中止 東宝は両劇場に払い戻し キャスト・スタッフには半額補償することになり シアタークリエは高畑淳子との共演で「ええから加減」を上演予定だったが出演者はそのままに代替公演高畑淳子主演「土佐堀川」を上演した
(なおそれ以前シアタークリエでは2015年6月に直美版「おもろい女」を上演している›

シアタークリエのチラシをみると病気の治療に専念していた藤山直美が復活するという

4月1日 東宝は乳がんの治療を続けている藤山直美さんの体力が回復したため 10月から上演する主演舞台「おもろい女」で復帰すると発表した
チラシを見るとほぼ同じメンバーが再集結した
クリエが終わって12月の頭まで地方公演も決定した
関西では兵庫県立芸術文化センターで12日間の公演、丁度ワカナが死んだ西宮球場のごく近くだ、これって新歌舞伎公演はなくなった?
中日公演は劇場がなくなった 新しい御園あたりでやったらどうだろう
 
シアタークリエのチラシによるとこの10月中止になった時と全く同じ配役で公演する
休演が決まった時出演者は東宝からギャラの半額を貰ったという 
それでも3か月拘束だったので半額と言っても一か月半のギャラがはいったと思われる
その全く同じメンバーで公演される 



1938年 吉本が朝日新聞と提携して国策に便乗した「わらわし隊」を中国南部に派遣した中にワカナ一郎コンビがいた 
上海、蘇州、鎮江、南京、杭州と回った一行の帰還報告公演で この慰問公演に材を得た「飯塚部隊長」なる漫才を披露して最優秀賞を獲得して新進漫才コンビとしての地位を確かなものとする 
ところが翌年二人は吉本を「裏切り」新興キネマ演芸部に移籍する

二人でやった漫才「飯塚部隊長」を生で聞いたことのある三木のり平は芸術座の舞台を見て 
森光子、雁之助コンビの漫才のうまさに舌をまいたという
ついでに書くとラスト西宮球場のベンチ裏でヒロポンを打つ芝居にも
「うまかったねえ」「森みっちゃんもやっていたからねえ 昔取った杵柄だよ」と言ったとかいわなかったとか・・・ 

文字が読めないワカナに一郎が紙に書いた台本を読んで聞かせると的確にダメ出ししたという 
男尊女卑の風潮が強い戦争中に 男が女にやっつけられる 
この男女パターンはその後 ミヤコ蝶々南都雄二 京唄子鳳啓助に受け継がれていく 
とくに字が読めないことは蝶々さんも同じだ

1978年9月の芸術座 僕はこの芝居をみて二人のコンビの素晴らしさに感激して当時いた梅田コマの制作Nさんに梅コマで再演を進言したが色々な都合で果たせなかった

前にも書いたが 
この「おもろい女」は僕は新コマでの喜劇の堺正章 研ナオココンビで「マチャアキ・ナオコのおもろい恋の物語」として見ている 
中国での慰問公演でのドタバタであった 小野田勇作は出来不出来があると思う(松浦竹夫演出)

いやそれ以前にNHKのドラマで森光子がやったのを見ている 一郎は藤山寛美
井上孝雄の秋田実が印象的だった これも小野田勇作
1965年9月13日 PM20・00~PM21・29 NHKBK



僕はこのドラマを田舎の実家で見た「秋田実のような漫才作家になってもいいなあ」と密かに思った 
一郎の寛美や満州の孤児役の直美は出ていたようだが全く印象がない

芦屋雁之助は自分も漫才をやっていた(相方は小雁)ので漫才シーンは鉄板だった
ワカナのお付き兼弟子でもあった森光子とのコンビでの漫才は朝飯前であった
そういえば何かの芝居で蝶々さんとも見事な漫才をやったのを見たことがある

漫才の力量はワカナが8割方持っていた
だがワカナはことごとく一郎を立てた
「ワカナ姐さんは自分よりご主人が大切でした 一郎さんのことになると少女のように目を輝かせてノロケてばかりでした」(ミスワカサ)

一郎の演奏でタップを踊って
ワカナ うまいですねえ 天才ですわ
一郎  いいえ それほどでもございます
ワカナ このドアホ うちのダンスのことやないか

ともあれ藤山直美がこの芝居で復活する

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