天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

昨日フジテレビで放映された『鬼平犯科帳SP~高萩の捨五郎』は嘗役と一人盗賊を混同・入替し、原作を改悪

2010-06-19 15:30:42 | 日記
今日の日記続編は、昨日フジテレビで放映した『鬼平犯科帳SP~高萩の捨五郎~』のことです。以下に18日読売新聞朝刊テレビ版の「試写室:筆者片山一弘」を引用抜粋します。
『年に一度の「鬼平」2時間スペシャル。シリーズ初出演の津川雅彦が、鬼平(中村吉右衛門=写真右)との知恵比べを繰り広げる。腕利きの「嘗(な)め役(豪商の屋敷の間取りを調べ、絵図面を盗賊に売る仕事)」だった高萩の捨五郎(塩見三省=同左)は、鬼平に命を救われたことから密偵となる。ある日、捨五郎の前に、かつて仕えた妙義の団右衛門(津川)が現れ、盗みの計画を打ち明ける。鬼平の鼻を明かそうとたくらむ女好きの盗賊を津川が気持ちよさそうに演じる。自分なりの信義を貫く捨五郎の実直さも胸を打つ。ただ、鬼平配下の面々が説明なく次々登場するので初めての視聴者には分かりにくい。連続ドラマ終了から9年たつだけに、登場人物の紹介も欲しかった。』
このコラムの筆者片山一弘さんは、ただ試写室で言われ鑑賞したテレビ映画を、単に見て感想を述べているだけです。少なくとも、そのテレビ映画の原作本『鬼平犯科帳:池波正太郎著・文春文庫版 19・妙義の團右衛門 20・高萩の捨五郎』を事前に読むべきです。筆者は、対象となるテレビ映画を評論する者として、最低限の努力はするべきでした。
池波さんの原作本を読めば、テレビ版で設定されている高萩の捨五郎は、妙義の團右衛門の嘗役を務めておらず、別人(馬蕗の利平治)の老人が登場します。原作本の高萩の捨五郎は、嘗役ではなく一人ばたらきの盗賊で、相模の彦十と二度ばかり同じ盗めを行っています。逆に原作本では、この嘗役・馬蕗の利平治が「何しろ、血を見ることが大嫌いな男で、三カ条の掟を守る盗めでなくては承知をいたしません。」と、高萩の捨五郎の人物像を平蔵に語っています。
同じ悪人でも、嘗役と一人ばたらきの盗賊では、その人物の力量や才覚がまったく違います。嘗役は、豪商の屋敷の間取りを調べ、絵図面を盗賊に売るのは、その商家が盗みの目標として相応しいと最終段階で判断してからです。それに至るまでの長い期間は、諸国をよく見てまわり、その商家の商売の仕方や人物の評価を適切に判断する時間に費やされています。だから、嘗役は経験を積んだ年配者でなくては勤まりません。一方の一人ばたらきの盗賊は、誰でもなることが可能ですが、一人とも言えども頭目としての抜群の力量が必要です。
今回の「年に一度の鬼平2時間スペシャル」では、以前フジテレビで放映されたシリーズで改悪され放映された番組を安直に焼きなおしたから、このような脚本になってしまいました。
前半部分は『盗賊二筋道(90年12月5日放映)』での高萩の捨五郎(菅原謙次)を、後半部分は『妙義の團右衛門(92年2月12日放映)』での妙義の團右衛門(財津一郎)と高萩の捨五郎(菅原謙次)を合体させただけです。鬼平ファンの私としては、たいへん残念な今回の脚本です。
だから、来年の鬼平2時間スペシャル版は、原作や以前のシリーズ版に拘らず、まったく斬新な新作の脚本で勝負してほしいです。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 書聖王羲之は『蘭亭序』で「... | トップ | 劇場演技者女性『何よその指... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事