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天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

『瞳の奥の秘密』女性上司だったソレダビジャミルは最後に告白したリカルドダリンに大変なことになるわよ!

2010-10-23 18:19:46 | 日記
今日の日記は、昨日「シネセゾン渋谷」で鑑賞した映画『瞳の奥の秘密』(スペイン=アルゼンチン2009年製作:ファン・ホセ・カンパネラ監督 リカルド・ダリン ソレダ・ビジャミル ギレルモ・フランチェラ パブロ・ラゴ ハビエル・ゴディーノ出演)のことです。
添付した写真は、右手前が主演のアルゼンチン裁判所書記官ベンハミン(リカルド・ダリン)と左奥彼の部下・パブロ(ギレルモ・フランチェラ)です。この映画は、推理サスペンスあり、男女の永遠愛もありのとても欲張った内容の濃い名作映画です。
2000年アルゼンチンで裁判所書記官を定年退職したベンハミンは、25年前に起きたある悲惨な事件を題材に小説を書こうとします。それは新婚の若い女性が自宅で暴行を受けて殺害された事件です。ベンハミンは、部下パブロの鋭い推理からサッカー場で真犯人を見つけ出し、上司の検事補イレーネ(ソレダ・ビジャミル)の体を張った取調べで自白を引き出し逮捕・起訴した、とても忘れられない事件です。そして、映画は、この過去の事件で登場した人物を振り返りながら、深く傷を残し変貌した彼らの現在の姿を、見事に描写しています。
だから、この映画は、1970年代アルゼンチンの国情を知らないと、深く理解できません。当時のアルゼンチンは軍部・首脳と政党・政治家による政権抗争が繰り広げられており、1973年の選挙では政党側が勝利し、亡命先からフアン・ペロンが帰国して三度目の大統領に就任しました。しかし、ペロンは翌年に病死し、副大統領だった妻のイサベル・ペロン(私注:元ダンサーでパナマのナイトクラブで踊っていた時、亡命したペロンに見初められ愛人となる。エバ・ペロンの再来と国民から期待される)が世界初の女性大統領に就任しました。映画では、当時のニュースを巧みに使い、映画の犯人・ゴメス(ハビエル・ゴディーノ)を彼女のバックに登場させています。しかし、1976年に軍部首脳がクーデターを起こし、軍部支配体制が再び復活しました。
当時のアルゼンチン裁判所も、まったく中立の立場ではおられず、政権奪取側に支配され翻弄されてしまいます。このアルゼンチンの悲劇をよく理解しないと、何故裁判にかけられた犯人が、何もなく釈放され政権者の庇護を受けたのか?まったく納得できないと思います。
最後に、新妻を殺された銀行員モラレス(パブロ・ラゴ)の妻を思う深い愛情に、心うたれたベンハミンは、彼自身の一世一代の決心をします。25年に再会した妻子ある女性上司・イレーネから、「A」を打てないオリベッティ社製タイプライターを小説執筆用にプレゼントされた退職した男性は手書きで、ある言葉に、「A」を付け加えた行動です。最後の男性の告白に、女性は男性に微笑みながら『大変なことになるわよ!』と暗黙の同意を伝えます。とてもいい名シーンです。悲劇性の深いストリーが重厚に展開する本編で、最後には観た者全てが救われる思いを抱く見事な映画の幕切れです。
この映画を鑑賞して、間違いなく今年のキネマ旬報ベストテンに入選する優れた作品だと、私は思いました。

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