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北大講座② 商店街の衰退を考察する

2018-07-09 22:40:52 | 大学公開講座

 1980年代(昭和から平成に変わる頃)半ばから日本における商店街は明確に衰退の一途を辿っている。何が商店街の衰退をもたらしたのか?はたして商店街の復活はあるのか?専門家のお話を聞いた。

                

 7月5日(木)夜、北大の全学企画公開講座「去る時代、来たる時代を考える」の第2開講座があった。

 この回は、「日本流通史にとっての『平成』 ~商店街に注目して~」と題して、北大経済学研究院の満薗勇准教授が講師を務めた。

 

 満薗氏は、間もなくその時代を閉じようとしている「平成」という時代を、経済の面からみると、バブル景気の過熱からまもなく崩壊へと転じ、その後の長い不況に追われた時代だったとした。

 それは同時に、日本の各地において商店街の衰退が明確になった時期でもあったという。

 このことは、私たちの皮膚感覚でも商店街の衰退を目の当たりにしていた。

 

 その要因について満薗氏はたくさんの資料や表を提示して説明されたが、全ての再現はとても難しい。その概要だけを記すことにする。

 高度経済成長期における消費者の購買行動は一般小売店での消費が全体の約6割だったという。(1971年統計)それは、生鮮品に対する小売店の努力、個人商店ならではこだわり・地域密着サービスが消費者から歓迎されていたようだ。

 さらには、担い手としての商人家族の存在があるという。満薗氏は「商店主婦」という言葉を紹介してくれた。その意味するところは、商店の主婦が主導して地域社会と交際し、きめ細やかなサービスを提供することで、消費者をとらえ、ひいては商店街の強い絆も生んでいたという。

 

 ところが、高度成長は終焉を迎え、1974年には大店法によって規制緩和が進んだことから、大手スーパーなどが中小都市へどんどんと進出するようになった。

 ここに一つの統計がある。1988年と2014年の小売業従業者数の変化である。

 従業者総数は685万人から581万人と減少はしているけれども大きく減ったわけではない。ただし、個人事業所従業者の割合は42.5%から15.2%と大きく減少している。対して、法人事業所従業員の割合は57.5%から78.6%と大きく増加し、個人事業所(個人商店)が大きく減少していることを裏付けている。

 問題は、法人事業所従業員の内訳である。満薗氏は2016年のイトーヨーカ堂の従業員の内訳を提示してくれた。それによると、正社員・正職員は26.8%に対して、パート・アルバイトが46.4%となっている。

 

 満薗氏はまた次のデータも提示した。それは①1982年→②1992年→③2007年の18~54歳人口の就業形態の構成変化である。それは次のとおりである。

 正社員     ①46% → ②49% → ③46%

 非正社員    ① 4% → ② 5% → ③12%

 自営業その他    ①14% → ②11% → ③ 7%

 この数字から、満薗氏は「正社員の数は減っていないが、自営業の方々の部分が非正社員へと移っているとした。

 このデータが商業だけに絞ったデータなのかは判然としないが、個人経営の店の多くが廃業し、その部分がパートやアルバイトに移行したという満薗氏の分析はある種説得力をもって聞こえてきた。

                

               ※ ウェブ上から満薗氏の写真を拝借しました。

 紹介した理由だけではなく、多くの要素が絡み合う中で、個人商店が次々と姿を消し、結果として商店街がシャッター街となり、商店街が消滅していったということである。

 さて、その商店街の再生は有り得るのか?

 満薗氏は個人商店の職住一致の経営合理性、柔軟な労働力配分(家族・時間)、顧客との絆、ワークライフバランスの視点、仕事・家事・余暇などのやりくり、通勤からの解放、地域コミュニティの形成、住民同士が経済関係によって結ばれることによって商店街の再生は可能ではないか?と話されたが、はてしてどうなのだろうか?

 確かに全国的には、さまざまな取り組みが功を奏して新たな商店街ができてきたことを報告する事例がメディアなど報告される場合もある。

 また、地域住民からの「商店街はなくなってほしくない」という声と、その思いを行動に移したときに、あるいは商店街の再生が有り得るのかもしれない…。



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