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道総研が目ざすゼロカーボンとは?

2024-03-04 19:02:02 | 講演・講義・フォーラム等
 さすがに研究機関である。北海道立総合研究機構が目ざす “ゼロカーボン技術” とは、風力発電や太陽光発電の研究ではないという。道総研が研究するのは木質バイオマス発電であり、地下水熱利用、あるいは温泉熱利用の技術開発であるという。その実状を聴いた。

     

 3月1日(金)午後、道民活動センタービルのかでるホールにおいて北海道立総合研究開発機構が主催するオープンフォーラム「地域に応じたゼロカーボン技術を北海道のすみずみに」に参加した。
 フォーラムは、まず北大工学研究院の石井一英教授が「ゼロカーボン北海道に貢献できる再エネ等の地域資源の活用」と題して基調講演をされた。
 続いて、道総研が道内の町村と共同研究をし、成果を上げた三つの町村における研究成果の発表が行われた。
 石井教授の講演は、その大要として「2050年までにゼロカーボンを目指す日本としては、待ったなしの状況にあり、再エネに関する技術開発はどのようなことにも積極的に取り組むべし」といった内容だったと受け止めた。

  
  ※ 津別町の木質バイオマス製造工場です。

 そして各町村における研究成果の発表だが、まず津別町における「脱炭素のまちづくり」と題して、木材の街津別町が産出する木材を活用して「発電用木質バイオマスボイラー」を稼働させ、そこで発生する廃熱の活用法についての技術開発についての発表があった。津別町では発生した廃熱を役場庁舎、そしてその近くに存在する公共施設(老人施設)に融通する取り組みの事例が発表された。将来的にはさらに熱エネルギーの融通範囲を地域に広げていく方途を探りたいとのことだった。

 
    ※ 当別町の地下水熱交換システムの概念図です。

 続いて二つ目は、当別町における「地域特性に応じたエネルギー地産地消モデルの構築」と題して、やはり当別町の豊富な森林資源を活用した「バイオマス発電」と「地下水熱」を利用する取り組みについての発表があった。特に当別町の事例では、某地域に有効な帯水層が見つかったことから、その地下水熱を採熱する方式として「ヒートクラスター方式」を採用し、歩道の融雪システムとして採用した事例が発表された。

    
    ※ 足寄町の温泉熱を利用して生産するイチゴです。

 三例目は足寄町における「温泉熱と温泉付随ガスのハイブリッド利用モデルの提案」と題して、二つのエネルギーを融合させてイチゴ栽培ハウスを運営する事例が発表された。足寄町新町地区では以前から温泉熱を利用したハウス栽培でイチゴ生産をしていたが生産効率が良くなかったという。そこで、温泉と共に湧出している天然ガスを併用することにより、より効率的なイチゴ栽培を目指す取り組みが紹介された。
 技術的なことについてはほとんど理解できなかった私だが、目ざすゴールはまだ先のようである。しかし、このように地域資源を有効活用し、ゼロカーボンを目ざす取り組みが展開されているようだ。道は険しいとも思えるが、こうした地道な取り組みがやがていつか結実するときあることを信じたい。
 それにしてもリード文で触れたことであるが、風力発電や太陽光発電はもはや研究機関にとっては研究対象ではない、ということなのかもしれない。それら両者は研究が進み、すでに事業化されているということなのだろう。
 先の「道新フォーラム」で北電の齋藤社長は「道内電力の必要量の45%は再エネ電力によって賄われている」と言明された。既存の再エネ発電をさらに増大させるとともに、研究中の新再エネ技術が実用化されることによってゼロカーボンへの道が近づいてくることを期待させてくれるフォーラムだった。