田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

日本内科学会市民公開講座

2024-03-22 16:18:25 | 講演・講義・フォーラム等
 テーマが「科学の進展と未来の医療 2048年の医療はこうなる?」という興味あるテーマだった。2048年というちょっと半端な年度であるが、そこに今回の講座のねらいがあったように思えた講座だった。
     

 一昨日(3月20日)午後、(一社)日本内科学会が主催する「日本内科学会講演会〈市民公開講座〉」かでるホールで開催されたので参加した。
 公開講座のプログラムは次のような構成になっていた。
 ◇講演1「疾患リスクの理解と予防医学の実践~パーソナルヘルスの増進が拓く健康長寿社会~」 
     講師:益崎裕章琉球大学内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座教授
 ◇講演2「人工知能(AI)と共に歩む未来の医療」
     講師;工藤興亮北海道大学画像診断学教室教授
 ◇パネルディスカッション「科学の進歩はこれからの医療をどうかえるか?」
    司会:松本裕子 医療キャスター
       渥美達也 北海道大学病院 病院長
    登壇:益崎裕章 琉球大学内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 教授
       工藤興亮 北海道大学画像診断学教室 教授
       中村昭伸 北海道大学ダイアベティスマネジメントセンター長

    
    ※ 講演会全体、そしてパネルディスカッションを取り仕切った渥美北大病院長(左)と松本キャスター(右)です。

 まず今回のテーマで「2048年」というのがちょっと奇異にも映るが、その意味するところは、本年は2024年であるが21世紀(2000年)に入り24年が経過したが、その24年間に私たちが想像した以上にコンピュータは進化し、2000年時には想像もしなかったような世界が実現したが、はたしてこれから同じスパンの24年後にはどれだけコンピュータ(AI)の世界が進歩し、それが医療の世界にどのような影響を及ぼすかについて考えてみたいというのが本講演会の趣旨だったのだ。
 ただ、その趣旨やプログラムの内容からいって、これだけのボリュームを僅か1時間40分という短時間で終了するという企画がいかにも惜しかったように思った。主催者側にもいろいろと事情があったものと推察するが、例えば沖縄からわざわざいらっしゃり、とても興味深いお話を提供いただいた益崎教授の講演がわずか30分間だったことなど、いかにも惜しい気がした。(もっとも益崎氏は他の用務も兼ねての来札だったのかもしれないが)ということもあり、二人の講演はたくさんのパワーポイントでの資料を用意され、駆け足での講演となってしまった感があり、とてもメモし切れなかったのが残念だった。
そこで本稿では、講演やパネルディスカッションで発せられた研究者たちの言葉の中から印象的だった言葉をアトランダムに取り上げてみることにした。

    
 まず、益崎教授が「現在17歳の子が100歳まで生き残る確率は50%と推測されている」と発言され、科学の進歩により「人生100年時代」が到来していると話された。
 それを可能にするのは「未病」とされる病気予備軍をいち早く発見し、対策を打つことが科学の進歩によってますます拡大することで長寿が可能になってきたということだ。
 例えば糖尿病や認知症はその症状が顕在化する15~20年前にすでに発症しているそうだ。したがって発症する前から手を打つ必要があるという。「ぶどう糖負荷試験」を行うことによって糖尿病などは重症化する前に見つけることが可能な時代となったと益崎氏は話された。
 また益崎氏は「動物性脂肪」の危険性も指摘された。「動物性脂肪」をヒトはとても好み、麻薬を凌駕するほどの依存性があると指摘した。「動物性脂肪」が摂取過多になると活動量・運動時間・移動頻度が著しく劣化すると益崎氏は指摘した。
 益崎氏のお話で気になったのが「夜間尿は病気予備軍である」と指摘したことだ。夜間尿もまたさまざまな病気の原因を内包しているとの指摘だった。
 そうした様々な病気、あるいは病気予備軍も、AI、IoT、IoB技術が進歩することで「健康長寿スマート社会」が到来すると結んだ。

    
 続く、工藤教授のお話はAIの使い手、ならびに研究者としてAI技術の現在地点を説明するもので、私にとっては難解であり責任もってレポすることが不可能なのでパスさせていただくが、AIの技術の進展によってさまざまな診断の「見える化」が進んでいるという。そのことが病気の早期発見、早期治療に寄与している点が大きいと話された。

    
    ※ パネルディスカッションの登壇した三氏です。

 パネルディスカッションにおいては、現代、そして未来の医療について登壇者たちはさまざまな観点からお話されたが、問題はますます進展するITと人間との関係についてだった。その中で「シンギュラリティ―」という言葉が使われた。「シンギュラリティ―」とは「自律的な人口知能が自己フィードバックによる改良をくり返すことによって、人間を上回る知性が誕生するのでは」という仮説だそうだ。そうした時代を迎えようとしている今、
登壇した三者は、「AIを上手に活用する」、「AIと上手に付き合う」、「少ない医療従事者をアシストする存在」とそれぞれが「AIはあくまで道具であり、扱うのは人間である」と異口同音に語っておられた。
 2000年から現在の2024年までのIT技術の発展は、2000年当時の予想を大きく覆す発展ぶりだったが、今後24年間も我々が現在予想している世界以上の発展が見られるかもしれないという。そうした中で、医療の世界も大きく姿を変えていると思われるが、そうしたことを大いに活用し「人生100年時代」を多くの人と共に迎えたいものである、と私は思ってみたのだが……。