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発酵仮面?小泉武夫氏が語る

2017-04-09 20:53:44 | 講演・講義・フォーラム等
 自らを「発酵仮面です」と冗談を発しながら、朗らかな発酵学の権威 小泉武夫博士は、日本食の素晴らしさ、発酵食品の効用を語った。長寿県だった沖縄県がなぜ凋落してしまったのか?小泉氏の論旨は明快だった。 

                    

 今日(4月9日)午後、(財)食と健康財団と毎日新聞の共催による「食と文化フォーラム」がグランドホテルで開催され、小泉武夫氏が「日本の伝統食から学ぶ」と題して講演すると知って参加することにした。
 小泉人気なのだろうか? 老若男女というより、見渡すかぎりおじいちゃん・おばあちゃんたちが会場をいっぱいに埋めていた。その数900余名とか…。

 小泉氏は登壇するといきなり「自分は今年74歳になるが、この肌を見て、この髪を見て」と自らの若さを強調した。この言はけっして嫌味には聞こえず、氏の正しい食生活の裏付けなのだろう、と聞いている者を納得させる元気さだった。

 さて、冒頭の沖縄県の平均寿命が急落したのは、戦後アメリカ軍が駐留したことによる急激なアメリカ的食生活への変化だった。
 沖縄は昔から中国の影響下にあって“医食同源”を旨としていたことにより長寿県として名が知られていた。それがアメリカナイズされたことによる肉食への偏重が消化器関係の疾患の増加を招いたということだ。

 その傾向は沖縄だけにとどまらず、我が国全体にも及んでいるとした。この50年間で日本人の食の変化を見ると、脂分摂取で4.2倍、肉類摂取で3.7倍にも及び、そのことが多くの疾患を招き、我が国の医療費が暴騰していると小泉氏は指摘した。
 小泉氏が問題視するのは、日本人の肉類の摂取の仕方である。肉のみを食して繊維質の野菜を摂らないことだという。野菜を摂ることで、肉食で発生する悪性菌の酸化を防ぐことができるという。

               

 続いて、小泉氏の話は“和食”礼賛に移った。
 和食の主菜の材料は次の七種であるという。それは、◇根菜、◇菜っ葉、◇青果、◇山菜・茸、◇豆(大豆)、◇海藻、◇穀物(米・麦)の七種で、副菜として肉・魚・卵があるという。主菜の材料がいずれも植物由来であることが特徴である。
 日本人は古来、肉を分解する遺伝子(DNA)を持ち合わせていなかったのだから、肉食には無理があるとした。そして肉の代わりに、畑の肉ともいわれる大豆を大いに摂取すべしと説いた。事実、栄養分析の結果、大豆には牛肉に匹敵するたんぱく質が16~17%含まれるとした。(牛肉に含まれるたんぱく質も17~18%だそうだ)

 小泉氏の専門である“発酵食品”の効用を語るには時間(90分間)が短すぎたようで、最後に少し触れただけだった。氏によると「和食の原点は発酵食品にある」という。その代表格が“味噌”だという。
 味噌を生成するのに必要な“麹菌”は日本独特のもので、日本醸造学会では「国菌」と称しているそうだ。麹菌は分解力が非常に強く、免疫力を高めるには欠かせない食品ということを強調され、講演を閉じた。

                    

 小泉氏の講演を聴くのは確か初めだったと思うが、TVや著書から氏の人がらなども含めて良く知っているつもりだったが、印象を覆されることはなかったし、お話の内容も特別に新しい知識を得るというものではなかった。ただ、食の権威から日本食の素晴らしさを強調され、私自身が再認識する機会となったことは有益だった。

 講演はパワーポイントを使ったものではなく、実物投影機を使用して、氏のメモや切り抜きを投影しながら進めるものだった。ところが手持ちの資料が多すぎて、そこから必要な資料を探し出すのに時間が取られるというちょっと落ち着かない講演だった。
 小泉氏ほど講演の機会が多い方は、パワーポイントで整理されたものを用意して講演に望まれるのがベストと思われるのだが、氏の中に何かこだわりのようなものがあるのだろうか??