昨夜(2月8日)、道新試写会「太平洋の奇跡 ~フォックスと呼ばれた男~」を観た。太平洋戦争末期、サイパン島においてアメリカ軍から“フォックス”と呼ばれ畏れられていた大場 栄大尉を描いた映画である。
※ 映画のパンフレットから
真実の物語であるという。
1944年夏、サイパンの日本軍はアメリカ軍の圧倒的な戦力の前に玉砕してしまう。
しかし、物語はここから始まる。
わずかに残った兵力で民間人を助けながら、512日もの間、圧倒的戦力を誇るアメリカ軍を相手に、敵を翻弄し知略を尽くして戦い続けた日本兵士のリーダー大場 栄大尉の物語である。
極限の中で、長きにわたり残存兵力をまとめて戦い続けることができたのは、リーダー大場の類稀なる統率力と人間性の賜物だろう。
映画は主演の竹野内 豊がけっして過剰にならず、むしろ抑え気味の演技が画面をグッと引き締め上質の映画に仕上がっているといえるだろう。
しかし、私の中に若干の不満が残ったのも事実である。
それはサイパンと同じような状況を描いた「硫黄島からの手紙」(クリント・イーストウッド監督、渡辺謙主演)と対比しながら観たためだろう。
「硫黄島からの手紙」は渡辺謙演ずる栗林中将の人間性を深く掘り下げた演出が深く印象に刻まれていたのだが、対して今回の映画ではそのあたりはどうだったろうか?
特に感じられたのが、アメリカ軍から「フォックス(狐のように賢い男)」と称され畏れられた大場大尉がどれだけの知略を尽くし、アメリカ軍を翻弄したのか、そこの描き方に若干の不満が残った。512日もの間わずかな兵力で戦い続けたのだ。もっともっとエピソードがあったはずだ。そのところを深く掘り下げてからはじめて「フォックス」という言葉を登場させてほしかったと素人の私は思うのだ。
※ 同じく映画のパンフの裏側です。
別なところで感心したことがあった。
会場の後ろのほうから声がしたな、と思わず振り返ろうとしたがそれはスクリーン上の声だった。また、あたかも頭上を飛ぶかのようにB29の爆音が私の耳に届いた。
素晴らしい音響効果である。
映画「太平洋の奇跡」…、上質の映画である。
観る者それぞれによって感想はさまざまだろうが、一見に値する映画であることは間違いない。
ロードショーは2月11日から各所で公開される。