雲はどこへ行こうと旅をしているのか。
ある時はポツンと独りで。
ある時は仲間と連れだって。
またある時は空を占領しながら。
雲は何を探して旅をしているのか。
ある時は孤高の頂きか。
ある時は幾つも連なる湖沼か。
ある時は悲しみに満ちた町か。
雲は旅をして
何が愉しいというのだ。
それでも雲は旅をする。
旅することでしか
旅することの愉しみを見つけることができないかのように。
人が歩むことでしか
歩むことの意味を見つけることができないように。
雲は旅をして
何が愉しいというのだ。
それでも雲は旅をする。
グラジオラス〈アヤメ科〉
copyright Maoko Nakakura