詩の現場

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涙壺を見つけるまで

2015-04-29 | interest
雨のように
涙も 天からそそがれた一滴の
連続だとしたら
静かに 花びらを
涙受けにして
その滴を
いただくことにしようか

涙壺というものが
流行った時代があった
誰しもが
家の棚に
しまいこんでいた
涙が出そうになると
家族が順番に
壺を持ち去り
外へ出た
集めた滴は
壺を美しく磨いた

暮らしに困ったら
光を夜空に乱射する
その壺を売るように
言い伝えられていた

だが
誰も売りはしなかった
涙壺は
時代が変わると
消えていった
新月の夜に
軒下に埋められて
土に帰っていった

そこには
林檎が育ち
葡萄が実り
私たちの涙も
乾いていった

今、涙壺を
探している
骨董屋にも
器屋にも
注文が多いという

涙壺を見つけるまで
はらりと落ちた花びらに
悲しみを知る詩人を真似て…
涙を掬ってみる



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