ちょこっと本音

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野田版 桜の森の満開の下

2017年08月15日 | 観劇徒然草



毎年、この時期に行われる納涼歌舞伎を楽しみにしている。
いつもの二部制と違い、三部制で暑い夏の日に、気楽に歌舞伎を楽しもうというもの。
演しものも、納涼とうたっているので、それにふさわしいものがかかる。
私は第三部の「野田版 桜の森の満開の下」を観てきた。
これも納涼らしく「鬼」がでてくる。
坂口安吾の「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」を下敷きにした野田版なので期待大。

幕があくとプッチーニのオペラより「わたしのおとうさん」を尺八と三味線が奏でる。
時は天智天皇の時代。
壬申の乱を背景に、耳男(勘九郎)、マナコ(猿弥)、オオアマ(染五郎)、夜長姫(七之助)が、人間の業と鬼の欲望を舞台に描いていく。
科白はまるでシェークスピア劇を彷彿させるような会話劇。

天智天皇が崩御すると、それぞれの思いが明らかになっていく。
人間になりたかった鬼や、耳男と夜長姫の想いは通じ、オオアマは天下をとる。

桜の花の満開の下、歌舞伎ではない歌舞伎。
歌舞伎は昔から荒唐無稽の話が多い。
そして観客はそれを受け入れて楽しむ。
これもまた荒唐無稽なお話。
それを楽しむ夏の夜。
ひとときの夢の世界だった。

そして気がつくとスタンディング・オベイション。
拍手はいつまでも鳴りやまない。

野田版歌舞伎はひとつの歌舞伎の世界を確立している。
かつて野田版鼠小僧を観た時の感動を思い出す。
あの時は十八代目中村勘三郎丈。
そして今、その息子たちがまた新しい野田版歌舞伎を魅せてくれた。
約束事をきっちり入れた古典もいいが、新しい歌舞伎もまた面白い。
自由な歌舞伎の世界、夏の夜の一つの夢物語のようだった。

コメント
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