fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

お知らせ・防備録。
記事の無断転用はお断りいたします

Information

『みちのく山のゆなな』(国土社)『ファミリーマップ』、エンタメシリーズ『家守神』1~4巻、『おはようの声』幼年童話『ヘビくんブランコくん』『オンチの葉っぱららららら♪』、短編集『友だちの木』・歴史物語『アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士』他、好評発売中です。原稿・講演など各種ご依頼は、左側のメッセージからお願いいたします。    

一年間、お世話になりました。

2018年12月30日 | あいさつ
  2018年もあと一日と数時間です。
  お正月準備の買い物をすましたところで、家を留守にしなくてはならない用事ができてしまいました。(予定通りにはいかないものです)

 明日ブログを書く時間がないかもしれないので、三十日ではありますが、一年のしめくくりとしたいと思います。カメラも置いて出ているので、写真もない・・・。でもさびしいので、古い写真から探していたら、この写真を見つけました。

   東日本大震災で6万本の松が流れ、一本だけ残った、陸前高田の一本松です。その後これも枯れてしまい、今はレプリカが立っています。この写真は枯れる前のものです。年末にあげる写真としてふさわしいように思えました。

 皆様、fromイーハトーヴにお越しくださいまして、ありがとうございました。今年の総括は年が明けてから書きたいと思います。
 来年もよい年にすべく、きのうもきょうも過ごしております。
 
 どうぞよいお年をお迎えください。

 

『うみべの文庫 絵本がつなぐ物語』堀米薫(文研出版)

2018年12月26日 | 本の紹介
         

 宮城県角田市在住堀米薫さんの新刊です。(つい最近別のノンフィクションを出されたばかりなのに、すごいです)
 
 長谷川ゆきさんは「家庭文庫」開設を夢見ていたが、東日本大震災で約八百冊の絵本を失ってしまう。
その後、多くの人の助けや支援をえて「うみべの文庫」を開いたゆきさんは、託された思いを胸に、絵本と人、人と人の心をつなぎ、芽吹かせてきた。
ゆきさんを突き動かした絵本の力、言葉の力とは……  (文研出版サイトより)

 冒頭で、堀米さんがこの文庫を訪れたときに目にした賢治の『注文の多い料理店』の序が書かれています。

  わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
 またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗らしやや、宝石いりのきものに、かはつてゐるのをたびたび見ました。
 わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。
 これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹にじや月あかりからもらつてきたのです。
 ほんたうに、かしはばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかつたり、十一月の山の風のなかに、ふるへながら立つたりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんたうにもう、どうしてもこんなことがあるやうでしかたないといふことを、わたくしはそのとほり書いたまでです。
 ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
 けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。

  大正十二年十二月二十日
宮沢賢治


 書く側、読む立場、どちらにとってもこの言葉は水のように心にしみこんできます。この序を読んでから物語を読むと、そして原稿用紙に向かうと心構えが違ってきます。そして堀米さんの書かれたこのノンフィクションも。
 震災という大きな事件が、長谷川さんにふりかかりますが、この本で最も伝わってくるのは、本への愛。子供達に目に見えない栄養を与えたいという純粋な気持ちです。

 私も子供に本を読むことをしたくて、本当は読み聞かせの会などに入って活動をしたいのですが、今の時点で、何かを定期的にすることは無理。でも全国でこのような活動をしてくださっている方がいます。その方達に感謝。 

『おはなしの森』4 「おはなしの森」の会・編

2018年12月26日 | 本の紹介


 関西の児童文学作家さん達20数名が、神戸新聞に連載したものをまとめた本。もうシリーズ4冊目とは、すごいです。

 友人の森くま堂さんと、うたかいずみさんが書かれていらっしゃいます。

『たもれの王子』森くま堂 カエルの王子は「○○してたもれ」が口ぐせ。ある日、大臣が歯を痛めてみんなにちやほやされているのが、うらやましくて、「わたしにも、はってたもれ~」と……。
 森くま堂さんのセンスは抜群。軽快に話が進みます。
 超難関の絵本テキスト大賞の受賞者であり、その受賞作が本になるのが楽しみでしかたありません。

『くるりん くるる』うたかいずみ  おばけのトトは、空をとぶのが大好き。でもちゅうがえりがうまくできません。そこで夜の遊園地で練習を……。
 うたかさんは、童謡の作詞もされている方。子どもの気持ちに寄り添って、楽しい話になっています。うん、みんなそれぞれ違っていいんだよね。

グレイヘアの友人(雑誌「ハルメク」2019・1月号)

2018年12月23日 | 本の紹介
 「ハルメク」という雑誌は、年間予約の通信販売で購入できるものです。
 もう1月号なのですね。
 
 この号の特集は「ステキな人は髪と手に秘密あり!」。その中で、秋田の友人池田まき子さんが、グレイヘアの特集でモデルとして登場。特集タイトルは、「グレイヘアで自由になる」です。 まさに、まき子さん、30年暮らしたオーストラリアから秋田へもどり、はつらつと活躍されてらっしゃいます。(児童向けノンフィクション作家)
   

 ベリーショート、グレイヘア、笑顔。とてもステキです。赤いスカーフがよく似合っていて!! 

 グレイヘアは、今年流行語大賞にノミネートもされましたね。染めないことを選択するのは、かなりの勇気だと思います。私はまだ……。山姥のようになってしまいそうで……。

 でもこの雑誌を見て、手入れはしなくちゃなと思いましたよ。(そこかい)手の手入れの特集記事を読んで、マッサージを始めました。シワシワなかわいそうな手なのですが、顔と同様、人前に出て見苦しくない程度にはしなくては。(というレベル)
 
 50代以上くらいの女性を対象とした雑誌です。

 ところで私が白髪を染めずにきれいにしてらっしゃる方を意識したのは、随分前になりますが、
落合恵子さんでした。パーマはおかけになっていて、モダンでかっこよくて。全体的にナチュラルでステキでした。このところ拝見しませんが、昨今のグレイヘアブームに取り上げられないのがちょっと不思議。
 私の母は真っ白。他にもそういう方は何人もいます。こういう人達のことは、なんて呼ぶんだろう。ホワイトヘア? スノウヘア?  なんてことも考えました。

佐保田乃布句集『もう恋し』(文學の森)

2018年12月21日 | 本の紹介
         

 「童子」の佐保田乃布さんが、第2句集をご上梓されました。

  乃布さんがお召しになっている着物のように品があり、なんてステキな本でしょう。
 全ての句が、長い俳人としての研鑽の上に詠まれたことが感じられる充実した一冊でした。 

 春はあけぼの羽衣の間に目覚め
 巌一つ突き出て瀧の分かれけり
 時雨忌の末席すでに埋まりけり
 仙人掌に子のふたつ増え納税期
 花人に礁の波のうら返り  (*礁 ……いくり)
 盆支度味見の舌に疲れけり
 スカートの裾に花野のしめりかな
   乃布

 恋を連想させる句が多いけれど、浮き立った感じではなく落ち着いている。こんなふうに句を読むことがいつかできるようになりたいです。
 吟行をご一緒したときに出された句、「童子」でたしかに読んだ句、(読んだのでしょうが)初めて会ったような気がする句。楽しませていただきました。

 第2句集、いつか作りたいなと、最近は考えることがあります。10年後くらいにでも(笑)。

柚子ジャム

2018年12月21日 | 日記
  柚子をたくさんいただいたので、作りました。



  レシピ

  柚子 5個
  砂糖 適当 (ホントに適当)

  1 柚子は2つに切って絞る。
  2 中の皮の部分は取り除く。
  3 皮の表面のプチプチをすりこぎでつぶす。(これをすると苦みが抑えられるのだそう)
  4 皮を切る(白いワタの部分をつけたまま)
  5 きざんだ皮を3度煮こぼす。
  6 絞った汁と砂糖を加えて煮る。このとき種もいっしょに煮ることで、とろみがでる。
    (種は、お茶のパックにひとつぶんくらい)あまり煮すぎるとさめたとき、堅くなるそうです。

  7 煮沸消毒した瓶に、熱いうちに入れる。(これは長期保存する場合。私は瓶に熱湯をかけるだけです)

  もっと細かく刻んだほうが見た目いいでしょうが、おいしいのでOK。砂糖は煮ている途中で味見をして、足しました。それでも、市販のジャムほど甘くない。私が今回使ったのは、500グラム弱くらいかな。

実は普段あまりパンは食べないのですが、フランスパン(ソフトタイプが好き)につけて、おいしい~。ジャムは絶対手作りがおいしいですね。売っているのはたぶん長期保存ができるよう、すっごく砂糖を入れていると思います。

  これ、お湯で溶けば、いわゆる柚子茶なのかな。やってみよう。
  
  種はふだん捨てるものですが、大事というのが、何か嬉しかったです。カリンの蜂蜜づけを作るときも、種からよいエキスが出るとのことでした。種は全ての始まりですからね。大事。

年賀状や名刺のこと、そしてブログのこと

2018年12月19日 | 日記
 年賀状の季節。
 年頭のご挨拶は大事なので、がんばって印刷します。
 宛名印刷も、去年からやってるけど、やり方覚えてるかな。不安。

 先日は名刺も印刷しました。名刺には著作を載せているので、『どこどこ山はどこにある』を追加。
 昨年くらいからだったか、名刺に住所を載せないようにしています。
 児童文学の会でお会いするのは編集者さんや書き手さんという身元のしっかりした方なのでかまわないのですが、たまーに、実はどういう方かわからない方にご挨拶をされて名刺交換をする場合があります。そんなことが数回あったので、今の時代住所を出すのは控えたほうがいいかなと判断したのです。(年賀状には書きます)
 出版社の方や公的機関の方は、個人の住所は公開しません。作家は個人事業者なので、自宅が仕事場なわけですが、生活の場でもあるし、家族もいることですしね。
 もちろん、仕事をする上でやりとりが始まった場合は、住所をお知らせさせていただいております。
 
 そして実は、住所をお教えしなくてよかったぁという事が実際にありました。メールでのやりとりですんだのでほっとしています。
 昔の本には、カバーに作家の住所が書かれてましたね。平和な時代だったのだとは思うのですが。

ネットに書くことも慎重にしなくてはと思った件もありました。でも当たり障りのないことばかり書いてては、つまらないだろーなーとも思って。
 私程度の作家でもそうなのですから、売れっ子の作家さん達はどうなのでしょうね。ネットへの書き込みを一切されていない方もいらっしゃいます。でも私はSNSは今の時代、世の中とつながる一つの糸のように感じています。その糸が場合によっては、世界中につながるわけで、すごい(←私の場合はひそやかですが)

 そんな感じのブログですが、これからもお知らせや感じたことなど、書いていきたいと思います。ご訪問くださる皆様、ありがとうございます。

 以前のように毎日のアップはしていませんが、twitterのほうはほぼ、何かつぶやいています。あちらは自分のガス抜きも含めて、フォローしたりされたりの関係の方とのやりとりを楽しんだり。
 
 何か気になったことがありましたら、左にあるメッセージから連絡してくださいませ。

  モスクの天井。東京ジャーミィ(トルコ文化センター)ですが、見学可。写真可で、とてもよかったです。礼拝も見ていいと言われたのですが、不謹慎な気がして、階下のおみやげなど買えるところに移動しました。

 

 

2018年下半期おもしろかった本

2018年12月17日 | 本の紹介
 だんだん大人の小説を読む機会が少なくなってきています。最近も二冊途中でパス。児童文学に比べて読むのに時間がかかるので、まるごと読む価値があるかどうか疑問になるとやめます。
 ということで。

・「送り火」高橋弘希 芥川賞受賞作。雑誌で読みました。かなりショックでした。作者、ただものじゃない。ということで。
・『指の骨』高橋弘希(新潮社) も。戦争に行った方がこれを読んだらどう思われるのか。でも考えてみれば、第二次世界大戦はまだ体験した方がご存命だけれど、日露戦争とか、この前までテレビでやってた幕末のあれこれとかなんて、どれも記録を読んだ上で書かれ、作られ、体験していない私達にわかりやすく示してくれているものなのですよね。東日本大震災を現地にも行かずに描いたものが問題になりましたが、『指の骨』だって、そうなのです。でも、文学としての質が違う。作者、ただものじゃないです。(くどい)

・『おまじない』 西加奈子(筑摩書房) 短編集のうち、今覚えているのは1編だけ。情けない。でも、よかった。

・『ある夏の日の朝』小手鞠るい (偕成社) このリストに児童文学は入れないことにしているのですが、これは入れたい。

・『いい感じの石ころを拾いに』 宮田珠己(河出書房) 石の魅力にはまった一年でした。この本を読むと、石を拾いにいきたくなります。エッセイ。

・『次女ちゃん』こやまこいこ(扶桑社) まんがエッセイというのでしょうか。『宇宙兄弟』の作者の奥様(という言われ方がいいのかどうなのか? ですが)が描かれた家族の日常。この小さな一コマ一コマが愛おしくて、きっと私の日常だって、気持ちの持ちようでこんなキラキラしたことがあるのだろうなと思えます。そう、上の石ころと同じ。きちんと見ていないと見逃してしまうのです。

    先日訪れた代々木上原にあるイスラム教のモスク。東京ジャーミィ。

甘酒は夏の季語・・・というのが一般的

2018年12月16日 | 日記
 先日、忘年会の席で、甘酒の話題になりました。
 私、甘酒は作り方の違いで、夏の季語か冬の季語に分かれると言ったのですが、その違いをちゃんと説明できず・・・。曖昧な知識なんですね。それで、きちんと整理。

 甘酒の作り方は2通り。

 1 餅米の粥に麹を加え、とろ火で6、7時間あたためておく。一夜酒とも言われ、暑気払いになるので、夏の季語。アルコール分はなく、子どもでも飲める。(餅米とは書かれていない場合もあり。)

 2 酒粕に砂糖を加えたもの。 アルコール分がある。 粕汁が冬の季語であることから、こちらの作り方で作ったものは、冬の季語。

 栄養価はそれぞれちがうので、こちらのサイトをご参考に

 でも、一句の中で「甘酒」とあったとしても、作り方までは17音では書けません。夏の季語としている歳時記が主流のようです。ただ、句の全体が冬感があれば、別になりますね。
体があたたまるので、冬に飲みたいし、年越しの神社なので売ってますしね。

 多くの歳時記では、1 つまり夏の季語となっています。辻桃子の「いちばんわかりやすい俳句歳時記」では、2 粕汁の副題に入っていて、冬です。

   

若い俳人達(「むじな」と「てくり」)

2018年12月16日 | 日記
          
  
 先日「童子」の仲間、松本てふこさんから、「むじな」という俳句誌と「てくり」という文芸情報誌(という言い方でいいかな?)をいただきました。文フリで買ってきましたというお手紙つき。
 この「文フリ」もtwitterではよく流れてくる言葉ですが、私にとって未知の場。文学フリーマーケットの略なのでしょう。他によく耳にするのは、「コミケ」ですね。これは何の略だろう。どちらも、同人誌や個人で作っているものをブース代を払って、売る。そして交流する場なのかなと思っています。

 さて。

 「むじな」は、東北の若い俳人達が集まって立ち上げたものです。まずネーミングに拍手! いいですね。東北人らしさが漂っています(笑)。
 2017年が創刊、年に一度のペースで、今年2号が出ました。このペースもいい。この方達は、他にも地元の結社に入って句会をされているようなので。

 創刊号では、座談会「今、東北で俳句を詠むということ」が掲載され、若き俳人のトップランナーでもある神野紗希さんがスカイプで参加もされています。東北の俳句の特徴として好きな俳人の句を揚げ、震災俳句についてもかなり言及しています。
 この辺、とてもとても興味深かったです。特に震災については、私も俳句、そして児童文学の中での描き方に、非常に思う部分もあり、今も自分の中でもんもんとしているところなので。
 紗希さんのコメントは、さすがだなと感じ入りました。
 関西に「奎」という若手の雑誌があるとのことです。皆さん、頑張ってらっしゃる。

 2018年の号も、充実していました。正直言って、俳句自体はそんなにぎょっとするものはなく、まだ荒削りだったり大人しすぎたりですが、
 うにかわえりも さんが岩手の小学校で子ども達に俳句を教えるレポートが私的にはとてもよかったし、及川真梨子さんの総論「みちのくにいる」で、俳句甲子園において「高校生らしさ」ということについて書かれている文章もよかった。「高校生らしくていい」と思ったら、「今の気持ちがよく読めている」(ここは、「詠めて」にしてほしかったけど)と置き換えてほしい。というのも、なるほど! でした。

 他の評論も、私の頭ではきっちり理解できないほど(笑)、高度で、よく勉強されているなと感じ入りました。
 実は東京に引っ越してきて、「童子」に入った漣波瑠斗さんもこの「むじな」のメンバー。句を載せています。

 青林檎退屈を飼ひ慣らせない   岩瀬花恵
 辞令書をさくらつぽいきもちでもらう  うたがわえりも
 曖昧を溶かしに水母水槽へ   工藤凱門
 雪催本を一冊売りにゆく    佐々木萌
 不知火に匙のババロア揺れてをり 漣波瑠斗
 なめくぢの心を残しつつ進む  佐藤友望
 囀にくづさるる煙草の煙    佐藤里香
 寒月や人は足から死んでゆく  高橋 綾
 夕暮れの遠いところに生ビール 千倉由穂
 炎天に骨と銅貨を拾ひけり   天満森夫

「てくり」は、盛岡在住の工藤玲音さんが高校生と対談したり、芥川賞を受賞した盛岡の小説家沼田真佑さんと木村紅美さんの対談があったり、さわや書店(ユニークな本の売り方で全国的に有名な盛岡の書店)の皆さんの座談会があったり、多様で質の高い文芸情報誌でした。これは、たまたまこの号が文学を特集したってことなのか? ちょっとよくわかっていません。

 ただ、このように地方の頑張ってる文芸誌を読んで、寂しかったのは、秋田の人達がいないことでした。いないのかな、秋田の若い俳人。そんなことないですよね。あ、青森も入っていないか。
 ぜひ、参加していただきたい。
 
 ということも含めて、「むじな」の皆さん、全力で応援しておりますので! 

 追記 「てくり」は、調べたら、やはり盛岡の情報誌で、今号が文学の特集ということで、文芸情報誌ということではないようでした。

『むこう岸』安田夏菜(講談社)

2018年12月11日 | 日記


 帯に、「ひこ・田中氏がイッキ読み!」とある。
 私もでした!!

 父は医者。必死に勉強して有名私立中学に入ったものの、優秀なクラスメートについていけず、中三で公立中学に入りなおした和真。父が死に母は鬱病になり働けず、生活保護を受けている樹希。幼い妹の面倒をみてもいる。
 この二人の視点でそれぞれが交互に描かれ絡んでいく。
 
 章タイトルは 挫折、苛立ち、忍耐、哀れみ、羨望、逃避、共鳴、落胆、探求、希望、喪失、不安、脱出、旅立ち・・・。

 樹希が妹に夕飯を食べさせてから行くのが、「居場所」という名前のカフェの二階。小学校時代に野球のコーチだった人がやっている店。そこには彼女を慕うアベルというハーフの子もきている。小学校レベルの算数ができないアベルに、和真は勉強を教えることになる。樹希に脅されて嫌々だ。
 
 と、あらすじはここまでにしないと。なぜなら、私は読み始めてからすぐに(この二人の行き所のなさを、ラストまでどう展開させるのだろう)という気持ちを抱いてたからだ。この二人のぎりぎり感に安易なラストは許されない。

 安田さんは、落語を題材にした物『あしたも、さんかく 毎日が落語日和』、お笑い芸人を題材にした『なんでやね~ん』(どちらも講談社)などがある。ご本人も落語をやってらっしゃる楽しい方だ。その方がまさかこのような現代社会に目を向けた意欲作を書かれるとは。

 書かずにはいられなかったのだろうという気迫が伝わってくる本だ。
 重いテーマなのに、読後感がいい。ここ、書き手として大いに見習いたいところだ。
 
 この物語の子達に「つまらない大人」と思われないようにしなくてはと思わせてもくれた。

 

「DAWN」第26号(第24回児童文学ファンタジー大賞発表号)

2018年12月09日 | 日記
  児童文学ファンタジー大賞は、今年も大賞なしでした。
  佳作は、二度目のご受賞。本田昌子さん。おめでとうございます。出版されて本になるのが楽しみです。(きっと出版されることでしょう)
  奨励賞は、森川聖子さん。 おめでとうございます。こちらも、出版されるといいな。読みたいです。

  毎年送っていただいているこの冊子は、選考委員の先生達の評が載っています。これがもう、厳しくて、かつ優れたファンタジー論として読めます。

  記録のため、心に響いた部分を抜粋させていただきます。

  登場する大人たちは、みな地に着いた暮らしを送っていることを伺わせ、作品に暖かさと落ち着きを与えています。(松本なおこ →「つきのはなさく」)
  主人公の唯子は常に受け身で、深く悩んだり不思議さにおののいたりする様子は伝わって来ず、主人公としての役割を果たしていません。(松本なおこ →「はるか」)

  高村薫は鼎談「平成という時代」(毎日新聞2018・9・1)で、「文学の世界でも以前はこんな表現をしたら編集者に即はねられたという文章が平気でまかり通って、文学賞の候補作として出てくるようになりました」と述べている。(中略)
  雑な日本語表現に満ちた候補作を読まされるとイライラが募る。文学表現が持ってしかるべき「プラスアルファ」が失われたと高村は嘆く。日本語に立ち向かう書き手の姿勢の問題かと思う。大げさに聞こえるかもしれないが、私の文章は切れば血が出るという感覚が必要なのだ。(中澤千摩夫)

 知を楽しみ、知にたゆたうことをこの物語は教えてくれる。 (中澤千摩夫 →「つきのはなさく」)

 大雑把に述べれば、古代の日本における自然信仰では、八百万の神々は天地を自由に彷徨していた。時々、神々の顕現を願った人々が、磐座や大木を信仰し、そこに神々が時々訪れる、という感覚。歴史が進み、中国や朝鮮半島の影響を受け、また時の大王(天皇の称号は天武朝から)や豪族の権力誇示と自らを守護(怨霊鎮護)するために大規模な「神社」が建てられてきた。これは神々が神社に閉じ込められたことを意味する。神々の機嫌をとるために「神楽」が始まったことは事実。自由を奪われた神々の世界と現代の子どもたちの世界には共通項がある。そのようなファンタジーを読んでみたかった。 (工藤左千夫)

   

 こういう厳しい選評にさらされた一つの作品が、『しゅるしゅるぱん』(福音館書店)でした。

 そして、私の原点でもあります。毎年この時期、「DAWN」を読んで、気持ちを引き締めています。でも、あまりとらわれると、カチカチになって自由に書けなくなってしまいそう。
 行きつもどりつ、頑張りたいと思います。

 
 

第4回児童ペン賞 企画賞 ~『なみきビブリオバトル・ストーリー 本と4人の深呼吸』(さ・え・ら書房)

2018年12月08日 | 日記
        

 昨夜は、中野サンプラザにて贈呈式が行われました。

 クリスマスも近くて華やか。
 
  

 大賞   『たぬきのたまご』・内田麟太郎・銀の鈴社・2017-10
童話賞   『ブルちゃんは二十五ばんめの友だち』・最上一平・新日本出版社・2017-9
詩集賞   『漢字(かんじ)はうたう』・杉本深由起・あかね書房・2018-5
絵本賞   『クマと少年』・あべ弘士・ブロンズ新社・2018-5
企画賞   『なみきビブリオバトル・ストーリー』・ さ・え・ら書房・2017-6
       赤羽(あかはね)じゅんこ・松本聰美(さとみ)・おおぎやなぎ ちか・森川成美(しげみ)
少年小説賞 『四重奏(カルテット)デイズ』・横田明子・岩崎書店・2017-11  
少年小説賞 『こんとんじいちゃんの裏庭』・村上しいこ・小学館・2017-7 

 おめでとうございました!!
そして、ありがとうございました!!

 あべ弘士さんは、旭川からいらっしゃいました。スピーチでは、自分も来週からは冬眠するとユーモアを持って話されて。受賞作はなんと40年の構想の後形になったものだとか! 
 臨席にあたりまだ読んでなかった作品は読んででかけたのですが、『クマと少年』はアイヌの山を目の当たりにしたところにおすまいのあべさんならではのすばらしい作品でした。

 もちろん、他の作品、どれもさすが! 
 自分もなかなか形にならずにいる作品を抱えていますが、じっくり取り組みたい、あきらめずに向き合おうと思いました。

  

 たくさんの方にお祝いしていただいて、嬉しかったです。
 
 児童ペン賞新人賞の皆さんの受賞作が載った冊子もいただきました。これから読ませていただきます。おめでとうございました。

   

 『めざせ、和牛日本一!』堀米薫(くもん出版)

2018年12月04日 | 日記


 5年に一度、全国から選びぬかれた500頭もの和牛と農家が集まり、競いあう「全国和牛コンテスト」があります。

 宮城県仙台市で開催された第11回大会では、農業高校から柴田農林高等学校が、メス牛「ゆうひ」を連れて挑みました。(初めて農業高校生部門が設けられた)
 柴田農林高等学校の平間君の挑戦を、堀米さんは、牛農家として、そして作家として見守り、応援し、この本になりました。
 和牛は、食肉になる牛。(乳牛はホルスタイン)黒毛です。
 
 ベタな言い方ですが、私達が口にする肉がどこから来ているのか。食育ということになると思います。スーパーで薄切りにされた肉、ブロック肉、骨つき肉。どれも生きていた牛たちです。
 いずれ殺されて肉になる。その牛を、農家や高校生達は、ていねいにブラッシングをし、心をこめて育てています。だからこそ、私達はありがたく「いただく」のです。コンテストまでして、その姿の美しさ、強さを競い合います。

 堀米さんは、コンテストのシーンなどまさに、平間君の気持ちになって書いています。きっとずっと見守っていらしたのでしょう。

 牛たちの姿はもちろんですが、農業高校というところで学ぶ高校生達の姿もまた、私達は普段目にすることはできません。
 この本には出てきませんが、今年活躍した、秋田の金足農業もいい。神奈川の相原農業校には、吟行で行ったことがあります。(リニアモーターカーがすぐ近くを通る予定)高校生が丁寧に説明してくれました。賢治がかつて教えた花巻農業もありますね。
 いいなあ、彼ら。地に足のついた学びをしています。それを伝えてくれる本は、嬉しい。

 まだまだ牛は尽きることがない。きっとまた牛の本を出されることでしょう。

二つの映画 「ボヘミアン・ラプソディ」と「華氏119」

2018年12月03日 | 日記
          

 私の周辺、ざわついています。
 70年代から80年代の伝説のバンド、クイーン。私が聴いていたのは、70年代。高校生の時でした。ものすごいファンというわけではないけれど、当時ベイシティローラーズというアイドル的なロックバンドも人気で、でも私はクイーンのほうが好きでした。

 映画「ボヘミアン・ラプソディ」は、最初、今さらまたクイーン? と思っていました。でもネットで、ちらほら、そしてぐいぐいと「よかった」という声を読み、行ってみました。
 もう、最高! 現代の若い人が演じているとわかっていても、本物のような気持ちで見ていました。そして終わったら、売り場へ直行でCD購入。ずーーーーーーーーっと聴いています。
 
 音楽の力はすごい。あの出っ歯もかっこよく見えます。栄光と孤独の表裏一体が、悲しい。
 
 児童文学作家の加藤純子さんもブログに書かれていて、BSでやっていたクイーンの番組をUチューブで見て、よかったというので、早速私も。こちらは、本物の映像。ゲイであること、エイズで死んだこと、全てがまさに伝説。でもこうして、気軽に家で彼の声を聴くことができる幸せ。

 それから、「華氏119」。これはマイケルムーア監督のドキュメンタリー。政治にうとい私も、孫の世代が平和であることを願う気持ち。それ政治家にだまされないようにしなくては、という気持ちに繋がっています。
 この映画も(観ておかなきゃ)という予感で行ってきました。

 なにしろクイーンの映画を観たあとなので、出てくるトランプ大統領やヒラリーが、(あれ? そっくりさん?)なんて、思ってしまって・・・。いえいえ、本物の映像でした。 トランプ大統領のあれこれは予想がついていたけれど、トランプ政権を作ったのは、オバマ前大統領でもある・・・という流れには、ドキっとしました。彼の偽善的なパフォーマンスには、あんぐり。
 何を信じたらいいのでしょう。
 今の日本では? 

 そして、またクイーンを聴いています。