fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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『みちのく山のゆなな』(国土社)『ファミリーマップ』、エンタメシリーズ『家守神』1~4巻、『おはようの声』幼年童話『ヘビくんブランコくん』『オンチの葉っぱららららら♪』、短編集『友だちの木』・歴史物語『アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士』他、好評発売中です。原稿・講演など各種ご依頼は、左側のメッセージからお願いいたします。    

『大林くんへの手紙』(せいのあつこ)PHP研究所

2017年03月30日 | 本の紹介
          高学年から

 『ガラスの壁の向こう側』(国土社)でデビューされた、せいのあつこさんの2作目が出ました。
 こちらも「季節風」の投稿作品として掲載された作品です。いくつかのシーンが、当初に読んだときと変わらない新鮮さでせまってきます。ずっと主人公の心理描写が続くのではなく、ふっと違う要素が入り込んでくる。それが、世界を確実なものにしてくれるのです。感想文を書いているときの鉛筆の「浪人まわし」や、教室で聞こえる紙の音や、教室から見える青い空や。

 自分はみんなと違うと感じるとき。正しいことをしている友人、主張している友人に、その場で異論を唱えることはできなくても、何か違うと感じるとき。そういう気持ちが本当によく書かれています。
 言葉で主張されると、それが正論になり、黙らざるを得なくなることがあります。
 でも、そうじゃないんじゃあない? あたしが間違ってるの? 
 社会の中で生きていくって、その正論に従うことなの? 
 
 文香が、休み時間のたびに、不登校になっている大林君の席に座ることは、「正論」を言う側からしたら、「意味のないこと」かもしれません。でも、そうじゃない! それによって大林君が学校へ来るという結末ではないけれど、大林君の心は来ました! この結末、安易に陥らず、でも希望が見えるという、かなりのものです。(稚拙ないい方、ご勘弁)
 
 子どもが読んだとき、その子のいる状況によって、きっと感じ方が違うかもしれません。
 これは、大人にも読んでもらいたい作品です。この本を読んで、ざわりとした感覚を覚えるかどうか? それは、「正論」側にいる人間かどうかで違うかもしれません。うーん、たぶんほとんどの人が文香ちゃんに共感するんじゃないかなあ。生の教室と、本の中の教室の違いかなあ。
 文学を書くっていうことが、どういうことか。せいのさんの作品は、それを考えさせてくれます。
 
 今私は、この作品に救われています。
 せいのさん、『大林くんへの手紙』を書いてくださって、ありがとうございました。
 文香ちゃん、大林くんへの手紙を迷ってくれて、ありがとう!! 自分を通し抜いた文香ちゃんに、おばさんは励まされました。

 思いついたまま、頭に浮かんだことを羅列しました。でも、こんなふうに、1+1=2 じゃなく、人間の心の底のもやもやとしたものを言葉で表してくれているんです。
 実は、次回の「季節風」で、この作品の書評を担当します。もっと読み込んで、ちゃんと整理して書きますねー。

 
 

書道展と彫塑展

2017年03月24日 | 日記
 恩師である書家の加藤了楓氏の書を観るため、秋田市駅前のアトリオンに行きました。秋田市の書家のみなさんの作品がずらりと並んでいます。どの方もこの道では有名な方のようで、力作ばかり。流派もいろいろなようでした。
 加藤先生の書は、文字を読むのではなく、文字の形を追求されたもの。いつもながらの迫力です。ホントに素晴らしいと思います。
 私は習性で、やはり横にあるプレートを見て、なんていう文字なのかしら? と確かめ、また書を見て「なるほど」と確認。
  
「風」は、筆5本を一度に持ち、書かれたそうです。


 「雲従龍」・・・雲、龍に従う。いいなあ。その前には、風従虎 とか、いくつかある言葉の中のひとつだとか。
 気の利いたコメントなど言えずに、「いいなあ」と観てきましたが、眼福というか、目からエネルギーが体を流れるようでした。こういうのは、実物を観ないと感じることのできない感覚。

 そして、もう一つのほうは。
 同じフロアの反対側の部屋の入り口に木彫が見えたので、ふら~っと行ってみたのです。「パヤメグものたち」小林研太彫塑展でした。秋田県若手アーティスト育成支援事業として行われているものの、8回目。パヤメグというのは、秋田弁で、うろちょろする、とか落ち着かないとか、そんな感じ。作者は、よく「ぱやめぐな」と言われ、逆にこれが自分なのでは? と思い打ち出したということでした。
 こちらは、写真を撮らずに出たのですが、木彫あり、石があり、石膏があり。まさにぱやめいていました。でも、私はその中に、「自然」という一貫したものを感じました。「石」と「木」に魅入られている。それは、実は私がそうだから、感じたのかもしれません。(『しゅるしゅるぱん』は一畳岩と桜の木がベースあにる)

 この会場では、この企画を担当している方に声をかけていただいて、驚いたのですが。大学の後輩君でした。いやはや、何十年も経っているわけで・・・。おおーっという出会いでした。
 秋田の人たちとずっと疎遠だったけれど、少しずつまた繋がるかな。それも嬉しいなと思います。みなさん、いい仕事をしている。偉いです!  
 私もがんばろ。

 秋田市書道会展は、27日(月)まで。
 「パヤメグものたち」小林研太彫塑展h、26日(日)まで。土曜日はギャラリートークもあります。

ビブリオバトル

2017年03月16日 | 日記
 ビブリオとは、本のこと。
 本のバトル? 
 この数年急激な勢いで広まっている、この知的書評合戦。自分のお薦めの本を持ち寄って、時間を決めて(だいたい5分)紹介をする。その後、質問タイムを持って、最後に発表本の中で、自分が一番読みたいと思った本に投票(挙手など、やりかたはいろいろ)し、チャンプ本を決める、というゲームです。

 昨年から数回、あちこちでやってみたり、観戦者として参加したりしていました。
 詳しくは、公式HPをごらんください。
 京都大学の情報学研究科で考案され、今では学生の全国大会もあります。
 
 ゲームなのだから、ルールがあり、でも楽しむということが第一。
 本を通して人を知る。ゲームなのです。

 先日も、読書会の前に有志で行いました。5、6人程度なら、ファミレスでもできます。観戦者が必要な場合は、図書館のホールなど。学校でも行われています。

 先日の参加は、5人。
 それぞれ、もってきた本は、
・『横笛の魅力』 福原百之助  出版芸術社
・『かんたんおいしい防災レシピ びちくでごはん』 粕谷亮美 子どもの未来社
・『夜行』森見登志彦 小学館
・『虐殺器官』 伊藤計劃  早川書房
・『あの日から 東日本大震災鎮魂岩手県出身作家短編集 』道又力編 高橋克彦ほか 岩手日報社

 多岐にわたっているでしょう? ほんと、どれもおもしろそうで、読みたいと思いました。
 でも、一冊を選ばなくてはなりません。
 私が選んだのは、『夜行』。
 そして、私が持っていったのは、『あの日から』でした。

 
 そして、『あの日から』が、チャンプ本になりましたー! といっても、ほかの4冊がそれぞれ1票、『あの日から』が2票という僅差。
 私、これまで何度かやっていたけれど、チャンプ本をとれなかったので、やっぱり嬉しい! だれも、手をあげてくれなかったら・・・、と身構えちゃいますよ。それが、人間。手をあげてもらわなくっても、2番目に読みたかった本だったかもしれない。おもしろくなかったわけじゃあない、発表がへたってわけじゃない、んですけどね。
 
 ビブリオバトル、おもしろいですよ。
 やってみませんか?

蜷の道

2017年03月05日 | 俳句
  辛夷

「蜷」「川蜷(にな)」は、ホタルの幼虫が好んで食べることが知られています。
 俳句をやっていて、この「蜷の道」という季語をよく目にしていて、頭ではわかっていたのですが、実際に見たことがなありませんでした。
 
 で、先日、初「蜷の道」に遭遇。

  よおく見ると、線があります。

 つまり、川底の泥をニナという貝が、動いてできた跡なわけで。
 こんなことに感動できると、俳句やっててよかったなと。(笑)

 場所は、国立の谷保天満宮の裏。この神社の裏は、農道、用水、田んぼ、畑が広がっているのです。男の子たちも、網を持ってきていましたよ。
 谷保天は、時節柄日中は混んでいるでしょうが、先日は、早い時間に出かけたので、がらがらでした。
 
 作った俳句は、この次の句会に出すから、内緒。

 悉く(ことごとく)これ一日の蜷の道   高野 素十 

  谷保天には、鶏がたくさんいます。この日は、啓蟄。関係あるかどうか? 土を掘り起こしているのが何匹もいました。

俳句って、楽しい

2017年03月01日 | 日記
 
   

人気児童文学作家の梨屋アリエさんが、ブログで俳句を始めたこと、句会形式の講座に通われたことを数回に分けて書いてらっしゃいました。
 これが、とてもおもしろくって!
 そして、俳句を始めた方が感じるだろうなということをとても、うまく表現されていて! 
 
 ご連絡をさせていただき、了解を得て、その文面を、先日私が幹事をしている句会でみなさんに読んでいただきました。(梨屋アリエさんで検索すれば、ブログは見つかると思います。無断でリンクを貼るのは失礼なので)
 そして、先月から入った方、終わったあとに、「あれ、すごくよくわかりました。ホントに『季語って〈季語になる〉もんなんですね」とか、言われ、いろいろ話題にもなり。

 梨屋アリエさん、ありがとうございました!!

 季語とは、俳句とは、っていうのは簡単に答えを出せることではなく、句会を重ねて身にしみこんでいくようなものかなと思っているのですが、時々立ち止まって、考えることも必要。
 そのためには、出ている句会がその人に合っているかどうかというのも大事だと思います。いろいろですからね。その見極めは、その句会に出た俳句の中に「いいな」「こういう句を作りたい」と思った句が出ているかどうか。かな。
 俳句を始めた当初、「童子」の句会はとても活気があって、「こういう句、作りたい!」というのがたくさんありました。

 ケンタッキーおぢさんと春惜しみけり  辻 桃子
 キャンプファイヤー杉山くんは火の向かう   しの緋路  
 野遊や赤子の口に箸入れて  安部元気 
 

 などなどなどなど。私も、

 2m×3m耕せり   北柳あぶみ  

 なんて、作って。
 20年以上たって、句の傾向は変わってはきているけど、「童子」のモットーである「俳句って、楽しい」を忘れずやっていきたいなと、改めて思ったことでした。仕事でやるわけでもない。楽しまなくっちゃ。楽しみながら、日本語のよさを表現の楽しさを感じる。(難しさもだけど、それも楽しめるかどうかが大事)

 楽しいって、どういうことなのかなとかも考えちゃったりしますけど。
 楽しいだけのことなんてないだろうなとも思ったり。
 いろいろですけどねっ。