fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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新刊のお知らせ『オオカミのお札』(くもん出版)

2017年08月31日 | 自作紹介
 9月5日、新刊が発売されました。
 
  『オオカミのお札(一)カヨが聞いた声 ―江戸時代』

  『オオカミのお札(二) 正次が見た影 ―戦時下』

  『オオカミのお札(三) 美咲が感じた光 ―現代』

 くもん出版から、各1000円+税です。

 三冊同時発売ですが、一冊一冊は、薄く読みやすい作りになっています。
 また、江戸時代、戦時下、現代と時代が変わりますが、現代から読む、戦時下から読む、でもわかるように書いています。小学校高学年以上向けですね。

 表紙と中にもふんだんに入っている挿し絵は、京都のお寺さんのご住職でもあり、たくさんの絵本や挿絵を描かれていらっしゃる、中川学さんです。もう感激もの。

 ネットの本屋さんで、予約が始まっていました。もちろん、書店で予約もできます。

 また、おいおい、それぞれの巻について詳しくお伝えしたいなと考えております。
 
 皆様、どうぞよろしくおお願いいたします。

第20回俳句甲子園in松山ー2日目決勝

2017年08月20日 | 日記
 さて、決勝は、コミュニティセンターです。
 満員御礼。さすが俳句都市松山です。お昼横で食べていた親子、子供は3年生でしたが、同会館で行われる俳句教室参加とのこと。幼稚園年少から俳句を作るんだそうです。(みんなが)
 
 まずは、敗者復活戦。勝ち抜いたのは、会津高校でした! この会津の女の子、予選のときからよく泣いていました。カタカナだけで作った句。
 ヘチマサヘタベルモノセンチュウニッキ
 兼題の糸瓜は、子規の分身のような季語。子規の代表句に、「糸瓜さえ佛になるぞおくるるな」という句をふまえている。そして現在も大変な状況であることを示唆している句という審査員の評。なるほど、と感心しました。

 そして、2つのブロックでのリーグ戦。
 私が観たのは、開成、松山西、水沢の対戦。いやはや・・・。
 結果はご存じのように、開成が決勝戦に進むわけですが、点数に開きはありませんでした。ディベートでも、開成が負けている場面もあり。水沢、松山西、大健闘でした。助詞ひとつについてのやりとりも。

 今回は、子規漱石生誕150周年記念大会ということで、兼題は「子規忌」。この兼題で作られた句の数々、そしてそれに対してのディベートを聞いていて、彼らがいかに子規についても勉強しているかがわかりました。子規忌の句を作るには、子規の生涯は当然、子規の句もしっかり頭に入れていなくてはいけません。松山という地にいて、子規にまつわる句を読んで、やりとりを聞いていると、ああ、ここで子規は生まれ育ったんだなあと思えました。

 そして、決勝は開成と、愛知代表の幸田。黒いTシャツの共学校でした。

 

 兼題に「心」が出たとき、甘い感じの句がたくさん出ちゃうかななんて、思ったけれど、全くの杞憂にすぎませんでした。爆心地、決心、心太・・・、心という文字の入った言葉をしっかりと入れて、地に足のついた句を作っていました。
 開成の句は安定感があります。障子貼るという季語を使っていて、高校生らしいという評をつっぱねるような句。句会をしている部屋の障子を実際に張り替えているのだそうです。頭で作るのではなく、必ず実践しているのがわかりました。

 最優秀句は、開成の

 旅いつも雲に抜かれて大花野

 日本の伝統的テーマ、旅をとりこんで、品格風格のある句。作者が意図している以上のことを呼びこむ力がある。西行、芭蕉の面影をも読み込んだ時間的奥行きがある。俳句甲子園の青春性と普遍性のある句。 と、高柳克弘先生絶賛でした。

 月天心倉庫はあかあかと飢ゑて  は、夏井いつき先生が、個人賞を受賞。立派なものです。

 高野陸郎先生が、「開成は、言葉余りて心足らず、幸田は、心余りて言葉足らず」と表したことにも、感心しました。言葉も心も必要なんですね。高柳先生は、「俳句は語彙の豊かさが必要なもの」とおっしゃったのは、開成の「夕星の熱ほのかなる花野かな」という「ほのかなる」がおしい、ここに他にどんな言葉をおいたらいいかという選択肢がほしいということとして。
 上の評は厳しいようですが、開成という王者に対してのエール。実は心も充実しているんです。他の高校生もですが、一人一人の今後を追ってみたいくらい、将来が楽しみです。
 過去の優勝チームにいて、最優秀句をとられ、その後若手の俳人のトップランナーとして活躍されている神野紗季さんが、(この字で合ってるかな)今回は審査員席におられ、落ち着いた的確な評を述べてらっしゃいました。ひとつのことに打ち込んでいく強さということも。

 俳句の未来は明るい。
 ということで、具体的な句をあまりあげませんでしたが、俳句甲子園観戦記、いったん終了です。上の句の作者や、他の個人賞など、俳句甲子園公式HPでぜひ、ご確認ください。

 あふれそうな俳句熱のままに書いた拙いこの文章を、読んでくださった方、ありがとうございました。
 
 

第20回俳句甲子園in松山・・・1日目

2017年08月20日 | 日記
 また日常がもどるので、区切りとして書いておきます。
 28017年8月19日、20日と松山で第20回俳句甲子園が行われました。
  
 全国から勝ち抜いた40校による激戦。

 初日は大街道という広く長いアーケード街に10ブロックの会場を設置し、同時進行でリーグ戦が行われました。応援しているチームをあっちに行ったりこっちに行ったりしながら、観戦。観戦した試合はすべて句も審査員の先生がつけた点数も記録したのですが、(同時に自分も点数をつけて観ていました)さすがにレベルが高く、僅差で勝負が決まっていきます。



 ここで好きな句をあげるには、好きな句が多すぎて・・・。
 俳句甲子園の公式HPをごらんください。

 東京代表は、開成は昨年優勝チームということでの出場で、決勝へも駒を進めましたが、海城と立教池袋は敗退しました。海城は、決勝に行くと思っていたので残念でしたが、さすが全国から来ているチームは強いです。
 秋田西、弘前も敗退。でも、がんばりました。
 秋田西の最後に出した句について、私も下5が言い過ぎだなあと思っていて、審査員の高柳先生もそう言及していましたが、最後に句を作った本人が、「実は先生にも止められた。でも、どうしてもこれで出したかった。どうせ戦うなら好きな句で・・・」と言っていて、うんうん。そうだよね。自分の句だものね! と思いました。彼女がもし俳句を続けていったら、10年後には、やっぱり言い過ぎだったと思うかもしれないけど、今の彼女には、どうしてもこう言いたかったわけですからね。それを認めた先生もえらい! と思いました。観戦中、少しばかり秋田西の先生とお話もしましたが、生徒の主体性を大事にしてらっしゃるんですね。夏休みは3年生は進路で忙しく、ディベートの練習もできていないとのことでした。それも含めて。
 
 それにしても、アーケード街は暑い。ときに横の店のシャッターがガーッと開いたり、車の音も聞こえるところです。それもまた醍醐味でした。
 ただ、私は午前中は首に冷やした保冷剤をまいていたけど、午後はもうそれもなく、暑さで少々頭がぼーっとして、ディベートを聞いていないこともありました。選手や審査員の皆様ほんとにお疲れ様です。

 個人的には岩手代表の水沢高校が決勝に進出し、よしっとなった1日目でした。
 開成と松山東(過去優勝回数1、2位)の決戦は、すごい人だかりでした。 (続く)

伊藤洋子さんの散文詞・その2

2017年08月16日 | 日記
      

 洋子さんの散文詞や素描を観ていると、なんとも言われず「恥ずかしい」気持ちになりました。有名になろうとか、何者かになろうとか、そんな気持ちを感じさせない澄んだ上澄みのようなものと対面したからです。秋田の片隅で、こうした心持ちを持った方がいることを誇らしく思います。
 素描展は、明日までです。


私は樹が好きです

お花見の頃のサクラには、
冬の間 がんばったねぇ、偉いねぇと話しかけます
サクラは愚痴をこぼさないし、
花を咲かせたからと自慢もしません
黙って立っているサクラが愛おしいです

草や木の名前を覚えるのは 楽しいことです
サクラ、エノキ、カントウタンポポ、オオイヌノフグリ・・・・・
今まで 見過ごしていたのが、ぐっと身近になり、
友だちになったようで 嬉しくなります

でも、この事には 私の場合、大きな落とし穴があるのです
植物学者ならば、名前を入り口にして、さらに
生態を深く観察するでしょうが
私は「それ」と同定した途端、安心してしまって
「見る」ことを止めてしまいます。

若い頃から、いい絵を描くためには、よく見なければいけないと
思っていました
が、私は逆に描こうとしなければ、いつもぼんやりして、
何も見ていないことに、気がつきました
だから、見たつもりになっている自分を捨てて、
わかった気になっている自分を捨てて、
よく見るために、描こうと思います

老眼はもちろん、絶え間ない耳鳴りとめまいの中でスケッチを
するようになって、ようやく こんなつまらない事に
気がつきました
気づくのが遅いなあと思います

けれども、「よく見る」とは、必ずしても
微細に明瞭に見ることではないのかもしれません

よく見ることを続けていれば、
これから先、もっと感覚が鈍った時に、
別のものが見えるんじゃないか、
かえって、余計な飾りが削ぎ落とされ、
サクラであるという名前も捨て去った先に、
何か、
「ただ そこに在ること」が見えてきたらいいなあ と、
私は 楽しみにしているのです

本当は、地中から水を飲む音が聞こえるような樹を
描きたいのですが、それができないということは、
まだまだ 見方が良くないです

樹が私か、
私が樹か、
わからないようになりたいです

伊藤洋子さんの散文詞・その1

2017年08月16日 | 日記

      
 秋田市日赤2Fのミニギャラリーで開催中の伊藤洋子素描展を観てきました。洋子さんは、大学の先輩で油絵から彫塑を経て、現在はこうして自然と向き合いながら、素描を続けていらっしゃいます。毎年いただいている年賀状は、その素描が素晴らしく、全部保存しています。
 今回、もちろん素描は素晴らしいのですが、大きな紙に自筆で書かれていた文章に心を奪われました。ご本人の承諾を得たので、ここに紹介させていただきます。(本当は、自筆の文字もまた素敵なのですが)

今年も庭は植えた花よりも雑草が
元気にはびこっています
仕方なく鎌を手に重い腰を上げます

ヨモギ、スギナ、ハルジオン・・・夢中で刈って、
オニノゲシも
剣客よろしくバッサリやった時でした

思ってもみない大量の水が顔にかかり、
一瞬何が起こったかわからず、びっくりして手を止めました
「カエリチ ヲ アビタ」と思い、
思わず顔を拭った手を見ました
「アカクナイヨネ」
切ったオニノゲシの茎から水を浴びせられて、
(変な言い方ですが)
こいつ、こんなにも生きていたのか と
慄然としました
短くなった茎は、まだ凛と、まっすぐ空を目ざして立ち、
切り口からはじわじわと水があふれています

ごめんなさい オニノゲシ
生きてるって教えてくれて ありがとう

見回せば
空も雲も草木も鳥も、
照っても、曇っても、降っても、
世界が あんまり きれいで、嬉しくて、
讃えても
讃えても
足りません

句集『猫』(新潟絵屋)田代草猫

2017年08月05日 | 本の紹介

              

 新潟在住俳人、田代草猫さんは、とにかくかっこいい女性だ。
 奥付を見ると、「童子」に入られたのは、私より遅いし、年も私より若い。でもいつからか、私にとって、草猫さんは、手を伸ばしても届かないところにおられる高貴な方という印象を抱いているのだ。最初の頃は、そうびょうという読みは同じでも、「蒼猫」だったっけ。蒼い猫は、さらに手が届かない印象。草の猫になって、少しばかり身近な存在になったのかな? でも、今もまだ目の前にいらっしゃったら緊張して何も話せなくなりそう。

 なぜ? 時折見ることができるお写真のたたずまいが、凜としていらっしゃるせいかもしれない。
 
 いや、一番は、「あー、こういう句、私が作れたら、どんなにいいだろう!」という句を作り続けていらっしゃるからかだと思う。 
 だから、この句集は私だけでなく、「童子」にとって待ち望んだものだと思う。

 小さな文庫サイズの句集が届き、(そうか、草猫さん、こうきたか)と思った。
 読む。一句、一句、一句。
 どれもいい。そりゃあ、厳選だもの。
 ずーーっと読んでいって、(ああ、この句、草猫さんのだったか)と思うのも何句もある。作者がだれというところをすっとばして、ぐさっと印象的な句だったものたち。

 恋猫のひときは魚臭きやつ
 神童とかつて呼ばれし蟇
 小麦粉に砂糖ふり入れ冬めきぬ
 もう昇ることなき冬の入日かと 

 夏ゆくやタンゴは顎くと引きて    草猫

 かっこいい。

 俳句人口がどのくらいなのか、私にはわからないが、こういう方がもっともっと世間に知られてもいいのにと思う。俳句の総合誌は、結社の主宰と若手俳人の句だけではなく、こういう実力者にも目を向けてほしいものだ。