安田夏菜さん、乗りに乗って、次々と新刊を出されています。
自分がどこの誰かわからないため成仏できない幽霊が、莉緒の部屋に現れます。引っ越したばかりの時は、きちんとあるべきものがあるべき場所に納まっていたのが、今では汚部屋。ゴキブリまで発生している部屋で、莉緒は全てにやる気をなくしていました。
そんな莉緒を、母は当然放ってはおきません。
冒頭では、よくあるパターンの親子か? と思ってしまいましたが、これがちゃんと後半収束されていく。幽霊であるレイさんの正体も含めて、全てが全部つながっている。
レイさんのことがだんだんとわかっていく過程と、莉緒の心が修復していく過程がきっちりとかみ合っている。
見事だなあと思いました。
安田さんの作品では、『ケロニャンヌ』がありますが、こっちは死んでしまったペットが「残り命」を合わせて、飼い主のもとに少しの時間とどまるという設定でした。命が絶えた後、魂はどうなるのか? ということは誰もが思うこと。死んで残った魂と生きている人間との交流を描ききった後に、主人公も読者も生きる力を得る物語です。
読むのに力がいらないということ。これは、安心して読める、身を任せられるということ。これが、プロの仕事なのだということも、感じました。
表紙のタイトルのラベンダー色が、心に染みます。
そういえば、随分前に書いた、幽霊が出てくる話があったなあと思い出しました。あれ、書き直そうかな。うん。あ、いや、その前にあっちをちゃんとしなきゃ。(どっちだ)
ところで、日野図書館のHPで、4月にやった講演会の
報告が出ています。ありがとうございました。おおぎやなぎ、何喋ったんだ? と興味のある方、ご覧ください。
今日は、大暑。