報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「廃銃令」 3

2016-11-20 22:13:21 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月2日13:00.天候:雨 東京都千代田区 警視庁]

 鷲田:「社長さんは、今頃、国家公安委員会の中か……」

 鷲田は午後からの業務を開始するべく、自分の所属する部署の1番奥にある自分の机に座っていた。
 ロボットテロ対策課とはいえ、今となってはそうそうロボットテロがあるわけではない。
 KR団が崩壊して以降、この部署は事実上の閑職となってしまった。
 今追っているのは多摩地区の工場に忍び込んでフランケンを暴走させたり、“ゆりかもめ”を暴走させた犯人である。
 フランケンを使って宝石泥棒や銀行の金庫破りなどをしていたギャング団達の中に、KR団のメンバーはいなかった。
 ボスを締め上げて吐かせたところ、ボスに近づいた男がいたという。
 それがKR団の元メンバーである可能性は高かったが、いくらボスに問うてもKR団の名前は出てこなかったし、特徴もこれといって無い地味なスーツの男だったという。
 単なる模倣犯にしては上手く行き過ぎていることから、鷲田達はKR団関係者と見て行方を追っている。
 が、未だに足取りが掴めない。

 鷲田:「ん?」

 そこへ鷲田の携帯電話が鳴った。

 鷲田:「こちら鷲田。……ん?おう、村中君か。どうした?……なにぃっ!?本庁の玄関にバスが突っ込んだだぁ!?」

 鷲田は廊下を見た。
 慌てて下に走って行く職員達の姿が見える。

 鷲田:「もしかすると、あの社長がヤケになったんで、バスをパクッて特攻したか!」

 鷲田も急いで下に降りた。

[同日13:15.天候:雨 警視庁1Fエントランス]

〔「聖師様はテロなど行っていないぞォ!警察の不当な宗教弾圧を許すな〜っ!!」〕

 1Fに辿り着いた鷲田が見たのは、エントランスの自動ドアがメチャクチャに壊れ、そこに古めかしい型式のバスが突っ込んでいた姿だった。
 そのエントラスには白い服や紫色の服を着た異様な集団の姿。
 もちろん、外からも駆け付けた警察官達によって取り押さえられようとしている。

 鷲田:「な、何だ……。新興宗教のテロだったか……」
 村中:「どうします?」
 鷲田:「フン。宗教に頼るような弱い人間になど用は無い。制服達が検挙するだろう」

 信者達は大きく騒いで、
「聖師様を直ちに釈放しろ!」
 だとか、
「宗教弾圧だ!」
 だとか、警察官が取り押さえようとすると、
「触るな!悪魔の手先が!汚らわしい!!」
 とか抵抗しているが、当然すぐ逮捕されていた。

 河童風信者:「怨嫉謗法はやめなさい!それより御書読みましょうね!」
 んっ?巡査長:「はいはい、河童さん、こんにちは!いいからこっちに来て!病欠でスキーに行っちゃダメだよ!」
 河童風信者:「怨嫉謗法すると功徳が無くなりますよ!御書にはこう書いてあります。あーーーーーーっ!!」
 チキンジョージ巡査:「最後の1名確保!70代くらいの男性信者!総髪だが頭頂部が禿げ上がっているもよう!……サンサンパークの件について、事情を聞かせてもらうからな!」

 村中:「警視、今のは……?」
 鷲田:「う、うむ……。私から、んっ?氏とチキンジョージ氏に友情出演の礼を言っておこう」

 と、その時、エントランスに突っ込んだバスが引きずり出されようとしている。
 その時まだ喚く信者達。

 信者A:「悪魔の人形!それに触るな!」
 信者B:「汚らわしい!」
 シンディ:「あいにくと、敷島社長の御命令でございますのよ」

 シンディは1人でバスを引きずり出した。

 敷島:「いいぞ、シンディ!そのまま道路まで押してけ!」
 シンディ:「分かりました!」
 鷲田:「いやいや、あんなもの公道に出されたら邪魔でしょうがない。入口脇にでも置いておいてくれ」
 敷島:「シンディ、命令変更。入口の脇でいい」
 シンディ:「了解!」
 鷲田:「公安委員会との話はどうなった?」
 敷島:「銃火器の装備については、けんもほろろに断られましたよ」
 鷲田:「私の言った通りだろう?」
 敷島:「でも、それ以外の装備については、別途相談に応じるとのことです」
 鷲田:「何だそりゃ?」

[同日15:00.天候:曇 東京都千代田区九段下・とあるカフェ]

 敷島とシンディがカフェの中に入る。
 昼間はカフェだが、夜はバー営業を行うと思われる佇まいだ。

 鷲田:「よお、ここだここだ」

 鷲田と村中が既にテーブル席に座っていて、入店してきた敷島達を見つけて手を振った。
 すぐに敷島とシンディもそこに向かう。

 鷲田:「事情聴取は終わったのか?」
 敷島:「ええ。いい加減、そろそろ警視総監賞を頂きたいものですが?」
 鷲田:「うちの親分さん(警視総監)も、ロボットが警察に代わって事件解決してしまうことを良くは思っていないんでな」
 敷島:「捜査協力しただけじゃないですか、もう……」

 敷島がむくれ顔をすると、マスターがグラスに入った水を持ってきた。

 マスター:「いらっしゃいませ。ご注文は?」
 敷島:「えー、キリマンジャロブレンドを」
 マスター:「かしこまりました」
 敷島:「シンディは?」
 シンディ:「カルピスソーダの甘酢あんかけ
 敷島:「こらぁーっ!」
 鷲田:「よろしい。では、本当に飲んでみたまえ」
 村中:「警視、ここで爆発されても困りますって!」
 敷島:「取りあえず水だけでいいです」
 マスター:「か、かしこまりました……」
 シンディ:「ラジエーターの水代わりに飲めって?」
 敷島:「ああ、そうしてくれ」
 シンディ:「科学館のカフェだと、オイルも置いてるのにねぇ……」
 敷島:「あれはネタだろ?」
 鷲田:「あー、コホン。そろそろ本題に入っていいかな?」
 敷島:「どうぞどうぞ」
 鷲田:「公安委との話はどうなったかを単刀直入に聞きたいのだが」
 敷島:「結論から言いますと、けんもほろろに断られました」
 村中:「それはさっき聞いたよ。でも、その話には続きがあるんだろう?それを聞きたいんだ」
 鷲田:「他の装備は応相談ということは、ほぼ了承であるというのと同じことだ。一体それが何なのかを聞きたい」
 敷島:「大したことは無いですよ。それまで装備している高圧電流と、エミリーが装備している火炎放射器。前者は護身用のスタンガンが流通しているわけですから、一概に規制することはできないし、後者にあっては民間用にも出回っているわけですから、やはりこれをロボットが持ってはいけないという法律は無いわけですから」
 鷲田:「上手く法の網を掻い潜ったわけだな。他には?」
 敷島:「応相談ということですので、まだそれだけです。銃がダメなら、それ以外の物を代用するしか無いわけですね。アリスは思いっ切り嫌がってますけど、お上の命令ですから」
 鷲田:「そうか。ま、私としては、ロボットは荷物運びだけしていてもらいたいものだがな」
 村中:「今のを要約すると、『テロ組織のお荷物、KR団残党狩りへの協力よろしく』だって」
 敷島:「分かりました」
 鷲田:「村中、余計なこと言うなっ!」

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