報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「財団再始動」

2014-10-01 19:40:58 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月1日10:00.宮城県仙台市泉区 アリスの研究所 エミリー、シンディ、七海]

「うーん……。姉さん、おはよう」
 シンディが奥の居住区からやってきた。
「遅いぞ。今、何時だと・思っている?」
「えっ、今日休みじゃないの?」
「違う。今日は・何の日だ?」
「体育の日じゃなかったっけ?」
「後で・ドクター・アリスに・カウンターを・直して頂け」
「冗談だって。ホント、姉さんは昔から固いわねぇ……。財団で大規模な人事異動があって、今日はその初日でしょう?前の支部長が逮捕されたもんで、だいぶゴタついたわね。で、やっと人事が固まったと」
「そういうこと・だ」
「人間は色々考えて大変ね。確かに命令だけ聞いてりゃいいロボットの方が楽だわ」
「お前……」
 エミリーは呆れた目をした。
「でもさ、アタシ達、ここにいていいわけ?」
「何が・だ?」
「テロ対策の警備に、ドクター達についてなくて大丈夫?」
「そういう・命令なのだ・から・しょうがない」
「何だか心配ねぇ……」
 と、そこへ、
「失礼シマス。ヤット茸ガ収穫デキマシタノデ、コレカラ町内会ノ集会場ニオ裾分ケニ行ッテ参リマス」
 バージョン5.0兄弟のマリオとルイージがやってきた。
「ご苦労様。あら、美味しそうなキノコね!」
 事務室にいた七海がそう言った。
 ルイージが照れた様子で、
「ナ……七海チャン……良カッタラ、一口ドウゾ❤❤
「いただきます」
「壊す気か」
「壊れる気かい!」
 七海はメイドロボットである。
 2人の行動に突っ込むマルチタイプ姉妹だった。

[同日11:00.仙台市中心部 財団仙台支部・大会議室 敷島孝夫、アリス・シキシマ、平賀太一、巡音ルカ]

 仙台支部で行われた支部長や担当役員理事の就任式が終わった。
 今度の人事に、平賀太一は複雑な顔だ。
 何故なら今度の役員達はシンディの再稼働賛成派であり、防衛省寄りだからである。
 つまり、マルチタイプを兵器として見るタイプの役員達である。
 ロボットの平和利用を強く願い、その為にもテロリズムに使用されてしまったシンディの信用回復は不可能と考える平賀太一は、シンディの再稼働に強く反対している研究者の1人である。
 そのシンディが拠点としている為か、敷島を再び財団参事に戻す為に説得に来た以外、アリスの研究所には1回も訪れていない。
 南里研究所時代は、毎日のように訪れていたのにだ。
「とにかく、敷島さんが戻って来てくれて助かりますよ。ありがとうございます」
 大会議室を出て、平賀太一は改めて敷島に礼を言った。
 最初、敷島は財団参事すら辞めるつもりでいた。
 売れ出しているボーカロイド達を更に売り込む為、ボカロ・プロデューサーに専念したいというのが理由だった。
 それを激しく慰留したのが平賀。
「失業して途方にくれかかった所を助けて下さったのですから、嫌とは言えませんね」
 大日本電機が突然のM&Aで消滅してしまい、突然の解雇となった敷島に対し、財団事務職の仕事を紹介したのが平賀である。
 それまでは財団のことは、その存在しか知らなかったくらいである。
 それが今や、参事という一般企業で言う課長みたいな職階を当てられた。
 かつては総務関係の部署で長を張っていた時もあったが、アリス研究所始動に伴い、マリオとルイージによって拉致され、テロ組織並みの拷問でアリスに強く勧誘され、そこを手伝って今に至る。
 南里研究所消滅に伴い、散り散りになったボーカロイド達を再び集め、彼女らの芸能活動で得られる収入を資金源としている。
「自分が口添えして、敷島さんを大参事とか特務参事に格上げすることも可能でしたのに……」
「特務参事なんて、そんなスパイみたいな職階やめてください。大参事どころか、また大惨事を引き起こしますよ」
「タカオ、そのジョーク、全然面白くないから!」
 アリスが冷たく言い放った。
 が、
「ぷっ!くくくく……ひはははははは……!」
 ルカの笑いのツボにはまったらしく、慌てて笑いを堪えようとするが……。
「ルカには受けました」
「ミズ・アリス、ルカの笑いの沸点、設定間違えたんじゃないか?」
 平賀はジト目でアリスを見た。
「冗談!私はボーカロイドの設定は一切いじってないわ!」
「まあ、確かに……。アリスには、ボカロには整備や修理以外、手をつけないように言ってあります。その代わり、私もマルチタイプ達には口を出さないようにしているんですが」
「その修理の時に、何かしたか?」
「何もしてないよ!」
「まあ、平賀先生。お疑いでしたら、整備記録を調査すればいいだけのことです」
「アタシは逃げも隠れもしないわよ」
「分かった。分かりました」
 夫婦の反論に、平賀は手を挙げた。

[10月1日同時刻 アリスの研究所 エミリー、シンディ、マリオ、ルイージ、初音ミク]

「アアッ!ソンナ御無体ナ!」
 orzの態勢になるマリオとルイージ。
 何故なら精魂込めて栽培したキノコを全て焼却されてしまったからだ。
 むむっ、シンディ。早くも配下イジメか。
「七海のスキャンは正常よ!全部毒キノコじゃない!」
 七海が口に入れる前にスキャンしたそのキノコは、ベニテングタケだった。
「アリス研究所名物トシテ売リ出スツモリダッタノニィ~ッ!」
「アニキ~ッ!」
「『不思議の国のアリス』か……。本当に最近のバージョン・シリーズは、テロリズムに銃や爆弾を使うとは限らなくなったのね」
 シンディは呆れた。
「この白いキノコはドクツルタケで、それがシロタマゴテングタケ、こっちの黄色っぽいのがタマゴテングタケか……。よくもまあ、これだけの毒キノコを栽培したもんだ」
「味ハトテモ素晴ラシイトのデータがアリマス!シンディ閣下!」
「だーかーらぁ!その旨味成分がイコール毒成分なのよ!ほんっとバカね!」

 少し離れたエントランス・ロビー。
 元々この研究所は最初、診療所だったらしく、それを南里が払い下げで引き取り、改築したものらしい。
 なのでエントランス部分は、まるで診療所の待合室のような感じだ。
 そこに壁に向かってアップライト・ピアノが置いてあり、よくエミリーがそこでピアノを弾いている。
 手の空いている初音ミクが、今は歌っていた。
「……いつか帰るー♪ふるさと♪」
 エミリーは主に鍵盤楽器が弾けるので、何もピアノに限らない。
 オルガンでもチェンバロでもOKである。(※“ボーカロイドマスター”オリジナル版では、トランペットを吹いているシーンがある)
「お、楽曲の調整?精が出るね」
「シンディさん。明日、ソロでミニライブがあるんです」
「シンディでいいよ。あんた達も私達と同じ、特別な部類なんだから」
「あ、はい。シンディ……は、何か楽器ができるんですか?」
「設定では木管楽器の演奏が可能ってことになってるけど、やったことないねぇ……」
 シンディは肩を竦めた。
「木琴とかですか?」
「あ、いや、それは打楽器ね。フルートとかオーボエとか、要は笛だよ」
「キールは・金管楽器だ・そうだ」
「トランペットか。……てか、それ、私達の(5号機)の方だよね?もう破壊処分されたけど。今稼働してる派生機の方じゃないでしょう?」
「ノー。今の・派生機の・キールだ」
「へえ……。ドクター十条、派生機にそこまで再現したんだ」
 そこでシンディ、あることを思いつく。
「ね?今度その派生機も入れて、ジョイントしてみない?」
「面白そうですね!」
 と、ミクはパッと顔を明るくした。
「アタシ達が演奏するから、ミクはそれで何か歌うといい」
「はい!」

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