報恩坊の怪しい偽作家!

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“アンドロイドマスター” 「デュエット・ザ・マルチタイプ」

2014-10-02 10:08:45 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月1日18:00.アリスの研究所 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ]

「はいー、到着ぅ」
「Thanks.」
 車で研究所に戻って来た敷島夫婦。
「お帰りなさい」
「おーう」
 シンディが出迎えた。
「キノコ畑が焦げ臭いんだけど、焼き畑農法でも始めたのか?」
 敷島は右手の親指で外を指さしながら言った。
「さあ……。キノコ畑は、マリオ達の絶対領域だからねぇ……」
 とぼけるシンディだった。
「それより昼間、姉さんとも話をしたんだけど……」
「何だ?」
「姉さんはピアノが弾けるでしょう?」
「ああ」
「私は笛が吹けるみたい」
「ほお」
「キールはトランペットとか……」
「ああ、それなんだけど、ヴァイオリンに変わってるぞ」
「え?」
「まあ、あのぶっ飛んだ博士の考えることは俺にも分からんが、とにかく金管楽器じゃなく、弦楽器に設定変更したそうだぞ」
「へえ……」
「で、それがどうした?」
「ジョイントしたら面白いんじゃないかなぁ……って」
「できるのか?」
「だから、その為の実験をしたいと思って」
「……だってさ、アリス」
「じー様の話じゃ、『それは危険』だって話なんだけどね」
「何で!?」
「エミリーがソロでピアノを弾くだけで、何か効果が無かった?」
「うーん……。あっ、『電気信号』?」
「そう」
「でもそれは、こういう特殊なピアノ……でもないか」
 まだ敷島がアリスと出会う前、アリスがウィリーの遺志を継ぐ者として影の存在だった頃、エミリーがその機能を使ったことがあったのを思い出した。
「シンディもソロで演奏したら、そうなるでしょうね。デュエットするだけで、それなりの効果があるんじゃない?」
「キールも?」
「キールは派生型だから、分かんないねぇ……。ドクター十条がどこまでマルチタイプの再現をしたかによるね」
「ふーむ……」
「ま、実験くらいならいいか。何がいいの?」
「フルートの方が一般的か?ちょっと探してくるよ」

[10月2日18:00.アリスの研究所 平賀太一&七海]

 この時、研究所に危機的な状況が訪れたらしい。
 それに気づいたのは平賀太一。
 今日は敷島もアリスもいるはずなのに、研究所に電話が繋がらない。
 敷島がいるので事務作業の手伝いは無く、平賀家で夫妻の幼子達のお守りをしていた七海だったが、マルチタイプからのSOS信号を受信した。
 その七海の連絡を受けた平賀が研究所と連絡が取れなくなっていたのに気づき、七海や財団支部からセキュリティ・ロボットを3機確保して現地に向かった。
 公道から研究所へ向かうアプローチ坂の手前で、RV車を止める。
「いいか?中にはマルチタイプが2機とバージョン5.0が2機いる。はっきり言って、戦闘になったら間違いなく不利だ。よって今回のミッションは、あくまで敷島さんを救助することを目的とする」
「太一様、アリス博士はどうなさるんですか?」
「後回しだ。最優先事項は、あくまで敷島さんの救助……」
「何してるの、こんな所で?」
「うわっ、出たーっ!」
 怖い顔をしているシンディに驚く面々。
「遅いじゃない!こっちは危機的状態だってのに!」
「お、お前が何かしたんだろ!?」
「ええ、したわよ!」
「こいつ、いけしゃあしゃあと……」
「太一様、落ち着いてください。シンディ、どういう状況なんですか?」
「どうもこうもないわよ。エミリー姉さんと私が楽器を演奏したら、ドクターもプロデューサーも眠りこけただけで……」
「はあ!?」
「ボカロまで強制的に電源切れたんだけど、私達じゃID知らないから入れらんないし」
「どういうことだ!?」
「だから、ちょっと見てもらいたいのよ」

 研究所に踏み込むと、
「……あれ?平賀先生、私ゃ何をしていたんでしょう???」
 ちょうど敷島が目を覚ましたところだった。
「敷島さん、ご無事ですか!?何があったんですか!?」
「いやー……。エミリーとシンディにデュエットで楽器弾かせてみたんですが、聴いているうちに眠くなっちゃって……」
「それだけ!?」
「太一様、アリス博士を発見しました!」
「ケガは無いな!?」
「はい!」
 その後、電源が切れていたボカロ達とマリオ達も再起動した。

[同日20:00.アリスの研究所 敷島、アリス、平賀太一]

「取りあえず実験としてボカロ曲の“千本桜”や“悪ノ娘”を弾かせてみまして、その後はクラシックをやらせてみました。“アニーローリー”までは良かったんですが、あの曲を聴いたら突然眠くなって……」
「何ですか、それは?」
「“アヴェ・マリア”です」
「……普通に聴いてて眠くなりそうな曲ではありますが、それが?」
「ええ。平賀先生も聴いてみます?」
「いや、いいですよ。しかし、興味深い話ではあります。ちょっと、財団に話を持ちかけてみますよ」
「よろしくお願いします」
「しかし、実験しておいて良かったですね。敷島さんのことだから、いきなりコンサートとかやり出しそうだ」
「いや、さすがの私も実験くらいはしますよ。しかし、残念ですね。いきなり眠くなる作用があるなんて、そうおいそれとコンサートはできなさそうだ」
「ええ」
「ボーカロイドだと、こんなこと無いのになぁ……」
「まあ、ボーカロイドは人に歌を聴かせるのが目的ですからね」
 と、そこへ、エミリーがやってきた。
「敷島さん・ドクター十条から・お電話です」
「十条理事が?」
 敷島はエミリーが電話を受け取った。
「はい、もしもし。お電話代わりました」
{「おーっ、敷島君。その様子じゃと、脳幹は無事のようじゃのー」}
「何の話ですか?」
{「マルチタイプが4人でカルテットをやるだけで、周辺の人間達の脳幹が停止するという波長が送信されるのじゃが、2人だと無事のようじゃな。実験ご苦労さん」}
「何で黙ってたんですか!」
(2人くらいなら脳幹が停止しない自信があったってことか……)
 シンディは右手を腰にやりながら、十条のぶっ飛び発言を聞いた。
(しっかし、自分でも自分の能力が把握できてないんだからねぇ……。そこの太一坊ちゃんの言うことは、ある意味正しいかもね)
{「今度はキールも入れて3人で実験ぢゃ」}
「私は参加しませんからね!」
「それ以前に、派生型のキールにそこまでの能力があるとは思えません」
 平賀は静かに言い返した。
 今度は平賀が電話を代わり、
「マルチタイプの危険性を把握するためにも、実験自体は必要だと思われます。先生、その機会を設けてもよろしいでしょうか?」
{「構わんよ。キールも必要なんじゃろ?その関係上、わしも付き合おう」}
「よろしくお願いします」
 十条に実験を申し出ている間、平賀はシンディを睨みつけていた。
「というわけで敷島さん……あれ?敷島さんは?!」
「さっき、『ディナーショーに出ているMEIKOとKAITOの迎えに行く』って、出て行ったわよ」
「速っ!逃げ足速っ!」
「そうね。ウィリアム博士の飼い犬だった頃も、あいつにだけは叶わなかった……」
「ユーザー殿を『あいつ』呼ばわりするなっ!」
 平賀はシンディを叱り付けたものの、
(だからこそ、財団に必要な人なんだ、敷島さんは!)
 と、思ったのだった。
  

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