報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「はやぶさ2号」

2015-07-29 15:30:29 | アンドロイドマスターシリーズ
[7月21日06:00.天候:晴 仙台市青葉区・ホテル法華クラブ仙台 敷島孝夫、シンディ、アルエット、巡音ルカ]

 冬ならまだ真っ暗という時間、ホテルのフロントでチェックアウトの手続きをしている敷島の姿があった。
 宿泊代は経費で落とすが、マルチタイプよりも、むしろ連れて来たボーカロイドのイベントの方で黒字を出したようだ。
 既に強い夏の太陽が顔を覗かせている愛宕上杉通りに出て、仙台駅を目指す。
「それじゃ、これから俺とシンディはアルエットを藤野まで送って行くから。ルカは東京駅からそのままタクシーで事務所まで戻ってくれ」
「分かりました」

[同日06:20.JR仙台駅3F→新幹線ホーム 上記メンバー]

 朝が早くて食事の取れなかった敷島、ここで駅弁を買っていく。
「紐を引っ張ると、温かくなるってのがまたいいんだ。……おっと、爆発はしないぞ」
 敷島は弁当箱から導火線のように覗かせた黄色い紐をシンディに見せた。
「昔のバージョン1.0みたいね」
 シンディはクスッと笑った。
「え?」
「旧ソ連でアタシ達の下にいたバージョン達は、今からすれば信じられないくらい頭が悪くて、アタシ達の言う事をなかなか聞かなかったものだから、燃料タンクの紐引っ張って、自爆テロさせてやってたくらいよ」
「危ねぇな!じゃ、今のバージョン4.0は喋れるだけマシか!」
「まあ、そうね」
「最新モデルの5.0なんかコントやってるぞ?」
 アリスが製作し、現在使用人ロボットとして稼働しているバージョン・シリーズの最新モデル。
 4.0がずんぐりむっくりした体型なのに対し、5.0になってからはかなりスマートな体型になった。
 その分、動きも人間の健常者並みに速い。
 燃料も4.0のLPガスから燃料電池に変わった。
 つまり、駆動部に関してはエミリーやシンディよりも優れているのである。

 新幹線ホームに上がると、先発の“やまびこ”204号が発車していったところだった。
 これから敷島達が乗る“はやぶさ”2号は、途中の駅でその“やまびこ”204号を追い抜いて行く。

〔14番線に6時36分発、“はやぶさ”2号、東京行きが10両編成で参ります。この電車は途中、大宮に止まります。まもなく14番線に、“はやぶさ”2号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

「今度のヤツは電源コンセントが付いてるからな、自由に使っていいぞ」
「充電したばっかりで、乗ってる間は使う機会が無さそうだねぃ……」
 敷島の言葉にシンディが答えた。
 下り方向から、青白いヘッドライトを光らせて“はやぶさ”2号が入線してきた。
 利府の総合車両基地から来たのだろう。
 折り返し運転ではなく、既に整備済みであるようだ。
 側面の大きなフルカラーLEDには、『はやぶさ 2 東京 For Tokyo 停車駅:大宮』と、表示されていた。

 ドアが開くと、乗客達は粛々と乗り込んだ。
 そこは全車指定席の“はやぶさ”号ならでは。
 9号車に乗り込むと、シンディが敷島達の荷物をヒョイと抱えて荷棚に乗せる。
 そこは力自慢のマルチタイプだ。
 座席に座ると、敷島は背面テーブルを出して、そこに弁当を置く。
「もう食べるの?」
 ビニール袋から弁当を出して紐を引っ張る敷島。
「ああ。腹減った」
 紐をグイッと引っ張ると、すぐに弁当箱から何かが沸点に達した音が聞こえる。
「……爆発はしないみたいね」
「当たり前だろうが」

〔「ご案内致します。この電車は6時36分発、“はやぶさ”2号、東京行きです。途中の停車駅は、大宮です。この電車は10両編成で、全ての車両が座席指定です。お手持ちの特急券の座席番号をお確かめの上、指定の席にお掛けください。9号車はグリーン車、10号車はグランクラスです。6時36分の発車です。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

[同日06:36.東北新幹線“はやぶさ”2号・9号車内 上記メンバー]

 仙台駅オリジナルの発車メロディの後、列車は定刻通りに発車した。
 進行方向右側に座っている敷島達はそのままだったが、左側に座っている乗客達は差し込んで来た強い夏の日差しに、殆どがブラインドを下ろした。

〔♪♪(発車メロディ)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東北新幹線“はやぶさ”号、東京行きです。次は、大宮に止まります。……〕

 敷島が弁当を食べ、車内放送が流れている間、アテンダントがおしぼりとウェルカムドリンクを持って来た。
 “はやぶさ”で行われているサービスで、E5系を使用した“なすの”や“やまびこ”では行われない。
 飲み物を買い忘れた敷島には、ありがたいことだ。
 因みにロイド達は水しか飲めないので、一斉にそれを頼む。
 ラジエーターに使う水代わりだろう。
 もっとも、補給する専用水が無い場合の措置であり、普段から人間用の飲み水を使用することは推奨されていない。
 すると、アルエットが席を立った。
「どうしたの?」
「ちょっと、博士に電話してきます」
 アルエットはそう言って、デッキに出た。
「何だかんだ言って、心配なんだなぁ……」
 敷島はウェルカムドリンクのお茶を飲みながら言った。
「そりゃそうよ。アタシの製作者はもういないけど、正直、オーナーより大事な人間かもね」
「なるほど……」
「それより、電気信号音楽なんだけど……」
「ん?」
「アリス博士から、『レイチェルは“Chinese Tea.”じゃない』ってよ?」
「ウソぉ?“上海紅茶館”だろう?」
「“明日ハレの日、ケの昨日”だって」
「ええっ?いや、違うと思うけどなぁ……」
「ヘタに電気信号送ったりして、暴走しないといいけど……」
「おいおい、縁起でも無いこと言うなよ……」
 因みにマルチタイプ演奏会で、最後は“未知の花、魅知の旅”で締めた。

 しばらくしてアルエットが戻って来たが、人間で言う青ざめた顔をしていた。
「博士が電話に出ないの……。ずっと留守電になってて……」
「おおかた、切り替え忘れなんじゃないの?」
 と、敷島。
「そうよ。ドクターはかなりのお歳だしね」
 その時、敷島のケータイが震えた。
 見ると、井辺からだった。
「井辺君からだ」
 敷島はスマホを片手に、シンディの足を跨いでデッキに向かった。
(井辺プロデューサーから?こんな朝早くに珍しいものね)

 敷島は井辺から不思議な話を聞かされた。
 それが何なのかは……次回へ続きます。以上!

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2 コメント

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つぶやき (作者)
2015-07-29 17:45:54
ここ最近、E5系に乗っていない。
帰省の時に乗るのも、仕事先から乗る時もE2系ばかりだ。
今度帰る時は、あえて狙ってみるか。

何度も書いているが、ホテル法華クラブは創業者が京都の法華系宗派の信徒(多分、要法寺)だったからその名がついただけであり、今現在は宗教性は無いもよう。
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つぶやき 2 (作者)
2015-07-29 19:26:35
 よっぴんさん、パラパラ茜のオバハン使って、顕正会愛唱歌の替え歌作ってるw

 茜オバハンの実名出して総攻撃に出るのは、いつになるのかな?
 恐らく『仏の心』で遠慮なさっておられるのだろうが、異流儀悩乱BBAにそんな仏心使ったところで、
「ビビリデブ」と罵られるだけだから、遠慮しなくていいと思うのだが。
返信する

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