報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「東京メトロ日比谷線」

2018-03-31 20:59:03 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月14日19:14.天候:晴 東京都中央区八丁堀 東京メトロ八丁堀駅]

〔まもなく2番線に、北千住行きが到着します〕

 平賀との夕食会を終えた敷島達は、その足で最寄りの八丁堀駅へと移動し、そこから電車で帰ることにした。

 敷島:「それにしても、エミリーが直って本当良かったよ」
 エミリー:「御心配をお掛けしました」
 アリス:「タカオ、もうそれ何度も言ってるよ」
 敷島:「いいじゃんか。南里所長の最高傑作、50億円だぞ?そう簡単に壊されてたまるかってんだ」

 因みに敷島、少しほろ酔い加減である。

〔「2番線、ご注意ください。北千住行きの到着です。黄色い点字ブロックの内側までお下がりください」〕

 エミリー:「社長、お気をつけください」
 敷島:「おっと……」

 敷島、ふらつく足取りをエミリーに支えられる。
 トンネルの向こうからやってきたのは、日比谷線最新車両の13000系。

〔足元に、ご注意ください。八丁堀、八丁堀。北千住行きです〕

 ドアが開いて電車に乗り込む。
 日曜日の夜ということもあってか、車内は空いていた。
 敷島とアリスが隣り合って座り、マルチタイプ姉妹はその前に立った。

〔2番線は、発車致します。閉まるドアに、ご注意ください。駆け込み乗車は、おやめください〕

 発車メロディが順次導入されていく中、懐かしい発車ブザーがホームに鳴り響いた。
 その後で電車は2点チャイムを3回鳴らしながらドアを閉める。
 日比谷線はツーマン運転なので、運転室から車掌の発車合図(ブザー)が鳴ったら発車だ。

〔次は茅場町、茅場町。乗り換えのご案内です。東西線は、お乗り換えください〕
〔The next station is Kayabacho.H11.Please change here for the Tozai line.〕

 アリス:「あれから黒いロボット、姿を現さないわね」
 敷島:「面倒なことになるだけだから、むしろその方がいいんだがな。それに、バージョン達よりメンド臭いとはいえ、所詮はザコ敵だ。俺が警戒しているのは、デイジーの方だ。あれは強力なんだろ?」
 アリス:「私が会った時は、フツーに強化されてたよ?一体どういうことなんだろうね」
 敷島:「うーむ……。こりゃやっぱり、もう1度アメリカに乗り込んでやる必要があるか?黒いロボットの開発をしたのはKR団かもしれないが、それを生産したのはDCIとなると……」
 アリス:「アルバートとかはケーサツに捕まったはずだけどね?」
 敷島:「アリスの祖父さんや十条の爺さんみたいに、ものの見事に脱獄したりしてな?あ?」
 アリス:「否定はできないねぇ……」

 その時、隣の車両の貫通扉が開けられた。
 そこからやってきたのは、メイド服姿のメイドロイドと杖をついた老人だった。

 メイドロイド:「どうぞ。こちらの席が空いております」
 老人:「うむ」

 メイドロイドは主人であろう老人を優先席に案内した。
 そして一般席の方にいるエミリーやシンディに気づくと、ペコリとお辞儀する。
 例えエミリーやシンディが最上位機種でメイドロイドが下位機種とはいえ、それが任務中である場合は基本的に邪魔をしないのが不文律となっている。
 だからエミリーやシンディはメイドロイドに接近せず、ただ無言で軽く挙手しただけだった。
 このような不文律を作ったのは、実はエミリーではなく、シンディであるとされる。
 東京決戦の時、暴走殺戮マルチタイプだった前期型のシンディは、下位機種のメイドロイド七海に平賀殺害の邪魔をされ、破壊してやるほどの攻撃を加えたがそれができず、ついに断念させられたというエピソードがある。
 最上位機種が下位機種に負けた瞬間であった。
 それ以来、シンディを始めとするマルチタイプ達には、相手が下位機種であってもマスターと随行中の場合は一切の邪魔をしないという不文律ができ、それはフルモデルチェンジの8号機のアルエットにも引き継がれた。
 その為、七海は他のメイドロイド達からも特別視されることがあるという。

「あのクソ化け物のような強さを誇るマルチタイプに抵抗し、それに勝った」

 ということで。

 敷島:「そもそもシステム上に問題があったんじゃないのか?性能はマルチタイプのままで、用途はメイド専用ってさ」

 敷島もそんなメイドロイドと老人の様子に気づいて、ふとそんなことをアリスに言った。

 アリス:「今更なに言ってるの。そういう注文だったんだから、しょうがないじゃない」
 敷島:「規格はメイドロイドのままで、ある程度の戦闘力を持たせた派生型ってことでも良かったじゃないか。デイジーの場合」
 アリス:「規格を変えるってことは、物凄く大変なことなの。営業さんはそこを理解して頂けませんこと?」
 敷島:「ちっ……」

 そもそもが実験体のままで生産されたマルチタイプの方がイジりやすかったらしい。
 ライセンスについても曖昧なままであったが、さすがにこれについてはDCJで持つことになった。
 エミリーとしては敷島をマスターと認知しているが、実際の登録は平賀になっているのはその為である。
 外部役員とはいえDCJの関係者であり、ライセンスを保持する側であるからだ。
 それに対し、メイドロイドは平賀が全て手掛けた為、平賀が定めた規格(平賀規格)でライセンスが取られており、それから外れることは許されなかった。
 日本企業ではなく、外資系企業が持つことになったのは些かアレであるが、経緯上仕方が無い。

[同日19:24.天候:晴 東京都台東区東上野 東京メトロ上野駅日比谷線ホーム→JR上野駅]

〔まもなく上野、上野です。足元に、ご注意ください。電車とホーム間が、広く空いている所があります。出口は、左側です〕

 電車が『東京の北の玄関口』の地下に到着する。
 なので乗降客は多い。

 敷島:「さて、降りようか」
 アリス:「OK.今度は宇都宮線ね」
 敷島:「高崎線かもしれんぞ」

 ドアが開いて、ぞろぞろと乗客が降りて行く。
 敷島達もそれに続いた。
 で、あの老人も……。

 敷島:「日比谷線乗り場からJRまでちょっと歩くんだよなぁ……」
 アリス:「東京駅の京葉線よりはマシでしょ?八丁堀駅で京葉線じゃなく、日比谷線に乗ったのはそれが理由?」
 敷島:「ま、そんな所だ」

 その時、階段に向かおうとした敷島達の背後でどよめきが起こった。

 敷島:「何だ?」

 敷島達がそこで見たものは……。

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