[1月14日19:25.天候:地下なので不明 東京都台東区東上野 東京メトロ上野駅日比谷線ホーム]
電車を降りて、そのまま進行方向にある階段へ向かおうとした敷島達。
しかしその背後で、乗客達のどよめきが起きた。
敷島:「何だ?」
突然黒いロボットでも現れたのかと思ったが、よく見ると……。
敷島:「あれは!?」
先ほど車内でメイドロイドに先導を受けていた老人が、電車とホームの間の大きな隙間に落ちていた!
上野駅地下鉄ホームは急カーブしている昭和通りの下にある為、銀座線・日比谷線共に大きくホームが湾曲している。
その為、両線ホームとも監視の駅員が常駐しており、この事が両線のワンマン運転化並びにホームドアの設置が遅れていることに影響していると言われている(銀座線ホームは最近ようやくホームドアが設置された)。
メイドロイドはアラーム音を鳴らしたままフリーズして動けない。
敷島:「エミリー、シンディ!行け!行け!」
エミリー:「かしこまりました!」
シンディ:「了解!」
エミリーとシンディは先頭車の後ろまで行くと、エミリーは車体を大きく傾かせた。
かつてJR南浦和駅でも似たような事故が発生しており、多くの人間の乗客が力を合わせて車体を傾かせ、電車とホームに挟まれた乗客を救出したという美談が語られているが、この乗客達の代わりをエミリーが1人で行ったのである。
シンディ:「ほらっ!アンタもボサッとしてないで、そっち持って!」
メイドロイド:「は、はい」
シンディはエミリーが電車を傾かせている間、ホームの隙間に挟まれた老人を引き上げた。
老人:「ふぅーっ……!命拾いしたわい……」
と、その時だった。
鷲田:「警視庁ロボットテロ対策部の出動だ!」
村中:「……と言っても2人だけ、だけど」
バタバタと鷲田と村中がやってきた。
尚、前者が部長、後者が課長である。
この2人しかいない部署……特命係みたいなものとでも言えばいいのか。
鷲田:「キサマら!ついに人の命を!」
村中:「スクラップ処分は免れないよ!」
敷島:「ちょ、ちょっと!鷲田警視たち!」
鷲田:「さあ、来てもらおうか!もちろん、所有者のキミ達も所有者責任で当然来てもらう!」
アリス:「あら?Policeがそんな横暴なことしていいのかしら?シンディをフル爆装して、警視庁を数秒で瓦礫にさせてもよろしいのですよ?」
鷲田:「おい、聞いたか?」
村中:「さすがは世界的マッドサイエンティストの孫娘。言うことがさすが」
老人:「待て!」
駅員から応急手当を受けている老人が、強く鷲田と村中を制した。
尚、シンディは役に立たなかったメイドロイドに説教していたし、エミリーは応急手当を手伝っていた。
老人:「キミ達は何か勘違いをしておるぞ!」
鷲田:「勘違いですと?それは……。!」
村中:「まあまあ。ここは私達、警察にお任せください。あなたがホームで電車を待っていた際、あのロボット達のいずれかに突き落とされたことは簡単に……」
老人:「じゃから待てと言っておる!」
鷲田:「も、もしや、あなたは……!」
村中:「? 部長のお知り合いですか?」
鷲田:「警視庁OBで元・警視正の戸田敬一郎先輩では!?」
村中:「ええーっ!?あの『公安の鬼』と呼ばれた……あの戸田警視正!?」
戸田老人:「キミ達の捜査は殆ど手抜きじゃな」
鷲田:「は、はあ……」
戸田老人:「ワシが最初から説明してやろう。心して聞くように」
当たり前だが、戸田老人の証言のおかげで、エミリー達の疑いは晴れたのである。
戸田老人:「取りあえず落ちた時に足を挫いたので、病院まで連れて行ってくれんかの?」
鷲田:「ははっ!すぐに!」
敷島:「救急車呼んどらんの?」
[同日20:20.天候:晴 JR上野駅・低いホーム]
敷島:「帰るのが遅くなっちまったよ、全く」
アリス:「事情聴取なんかで小一時間ほど取られたもんね」
敷島:「いや、全く」
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。15番線に停車中の列車は、20時25分発、快速“ラビット”、宇都宮行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
シンディ:「社長、博士。グリーン券です」
敷島:「ありがとう」
アリス:「Thanks.」
シンディが買って来たグリーン券を手に、敷島達は頭端式のホームに停車しているE233系の5号車に乗り込んだ。
敷島:「ここは、あえて平屋!」
アリス:「なん……だと?」
〔この電車は宇都宮線、快速“ラビット”、宇都宮行きです。停車駅は赤羽、浦和、大宮、蓮田、久喜(くき)、古河(こが)、小山(おやま)と小山から先の各駅です。グリーン車は4号車と5号車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕
シンディはヒョイと荷物を荷棚に上げた。
この2階建てグリーン車では1階席と2階席には天井の高さの関係で荷棚が無いが、平屋席にはある。
その間、敷島は座席を回転させて向かい合わせにした。
そして……。
エミリー:「お待たせしました。ビールです」
エミリーがホームのコンビニで買って来た缶ビールをビニール袋の中から出した。
アリス:「まだ飲むの?」
敷島:「さっきの地下鉄でケチが付いたから、飲み直しだよ。アリスも飲むか?」
アリス:「しょうがないわねぇ……」
シンディ:(飲むんだ)
それからしばらくして、ホームに発車ベルが鳴り響く。
〔15番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕
敷島:「あーっ、アリス!おつまみのチーズ鱈、俺のだぞ!」
アリス:「いいじゃない。ケチケチしないの」
快速“ラビット”号は定刻に発車した。
低いホームからの発車の場合、高い位置に出るまでは低速度で出発する。
線形の問題もあるのだろうが、低いホームは元々長距離列車が発車するホームだったということもあり、汽車時代の名残でもあるのだろう。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は宇都宮線、快速“ラビット”、宇都宮行きです。停車駅は……〕
宇都宮線快速の名前は“ラビット”。
ウサギのように速い、という意味で名付けられたのだろうが、しかし1つ疑問がある。
この疑問に答えれる、日本人はいるだろうか。
敷島:「! そう言えば、英語でウサギを意味するRabbit(ラビット)とBunny(バニー)はどう違うんだ?」
アリス:「んなもん、ググればいいじゃない」
敷島:「目の前にネイティブがいるから聞いてるんだよ!」
敷島は呆れて言った。
アリス:「Rabbitは兎でいいのよ」
敷島:「じゃあ、Bunnyは何だ?」
アリス:「ウサギでいいのよ」
敷島:「意味が分からん!」
電車を降りて、そのまま進行方向にある階段へ向かおうとした敷島達。
しかしその背後で、乗客達のどよめきが起きた。
敷島:「何だ?」
突然黒いロボットでも現れたのかと思ったが、よく見ると……。
敷島:「あれは!?」
先ほど車内でメイドロイドに先導を受けていた老人が、電車とホームの間の大きな隙間に落ちていた!
上野駅地下鉄ホームは急カーブしている昭和通りの下にある為、銀座線・日比谷線共に大きくホームが湾曲している。
その為、両線ホームとも監視の駅員が常駐しており、この事が両線のワンマン運転化並びにホームドアの設置が遅れていることに影響していると言われている(銀座線ホームは最近ようやくホームドアが設置された)。
メイドロイドはアラーム音を鳴らしたままフリーズして動けない。
敷島:「エミリー、シンディ!行け!行け!」
エミリー:「かしこまりました!」
シンディ:「了解!」
エミリーとシンディは先頭車の後ろまで行くと、エミリーは車体を大きく傾かせた。
かつてJR南浦和駅でも似たような事故が発生しており、多くの人間の乗客が力を合わせて車体を傾かせ、電車とホームに挟まれた乗客を救出したという美談が語られているが、この乗客達の代わりをエミリーが1人で行ったのである。
シンディ:「ほらっ!アンタもボサッとしてないで、そっち持って!」
メイドロイド:「は、はい」
シンディはエミリーが電車を傾かせている間、ホームの隙間に挟まれた老人を引き上げた。
老人:「ふぅーっ……!命拾いしたわい……」
と、その時だった。
鷲田:「警視庁ロボットテロ対策部の出動だ!」
村中:「……と言っても2人だけ、だけど」
バタバタと鷲田と村中がやってきた。
尚、前者が部長、後者が課長である。
この2人しかいない部署……特命係みたいなものとでも言えばいいのか。
鷲田:「キサマら!ついに人の命を!」
村中:「スクラップ処分は免れないよ!」
敷島:「ちょ、ちょっと!鷲田警視たち!」
鷲田:「さあ、来てもらおうか!もちろん、所有者のキミ達も所有者責任で当然来てもらう!」
アリス:「あら?Policeがそんな横暴なことしていいのかしら?シンディをフル爆装して、警視庁を数秒で瓦礫にさせてもよろしいのですよ?」
鷲田:「おい、聞いたか?」
村中:「さすがは世界的マッドサイエンティストの孫娘。言うことがさすが」
老人:「待て!」
駅員から応急手当を受けている老人が、強く鷲田と村中を制した。
尚、シンディは役に立たなかったメイドロイドに説教していたし、エミリーは応急手当を手伝っていた。
老人:「キミ達は何か勘違いをしておるぞ!」
鷲田:「勘違いですと?それは……。!」
村中:「まあまあ。ここは私達、警察にお任せください。あなたがホームで電車を待っていた際、あのロボット達のいずれかに突き落とされたことは簡単に……」
老人:「じゃから待てと言っておる!」
鷲田:「も、もしや、あなたは……!」
村中:「? 部長のお知り合いですか?」
鷲田:「警視庁OBで元・警視正の戸田敬一郎先輩では!?」
村中:「ええーっ!?あの『公安の鬼』と呼ばれた……あの戸田警視正!?」
戸田老人:「キミ達の捜査は殆ど手抜きじゃな」
鷲田:「は、はあ……」
戸田老人:「ワシが最初から説明してやろう。心して聞くように」
当たり前だが、戸田老人の証言のおかげで、エミリー達の疑いは晴れたのである。
戸田老人:「取りあえず落ちた時に足を挫いたので、病院まで連れて行ってくれんかの?」
鷲田:「ははっ!すぐに!」
敷島:「救急車呼んどらんの?」
[同日20:20.天候:晴 JR上野駅・低いホーム]
敷島:「帰るのが遅くなっちまったよ、全く」
アリス:「事情聴取なんかで小一時間ほど取られたもんね」
敷島:「いや、全く」
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。15番線に停車中の列車は、20時25分発、快速“ラビット”、宇都宮行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
シンディ:「社長、博士。グリーン券です」
敷島:「ありがとう」
アリス:「Thanks.」
シンディが買って来たグリーン券を手に、敷島達は頭端式のホームに停車しているE233系の5号車に乗り込んだ。
敷島:「ここは、あえて平屋!」
アリス:「なん……だと?」
〔この電車は宇都宮線、快速“ラビット”、宇都宮行きです。停車駅は赤羽、浦和、大宮、蓮田、久喜(くき)、古河(こが)、小山(おやま)と小山から先の各駅です。グリーン車は4号車と5号車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕
シンディはヒョイと荷物を荷棚に上げた。
この2階建てグリーン車では1階席と2階席には天井の高さの関係で荷棚が無いが、平屋席にはある。
その間、敷島は座席を回転させて向かい合わせにした。
そして……。
エミリー:「お待たせしました。ビールです」
エミリーがホームのコンビニで買って来た缶ビールをビニール袋の中から出した。
アリス:「まだ飲むの?」
敷島:「さっきの地下鉄でケチが付いたから、飲み直しだよ。アリスも飲むか?」
アリス:「しょうがないわねぇ……」
シンディ:(飲むんだ)
それからしばらくして、ホームに発車ベルが鳴り響く。
〔15番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕
敷島:「あーっ、アリス!おつまみのチーズ鱈、俺のだぞ!」
アリス:「いいじゃない。ケチケチしないの」
快速“ラビット”号は定刻に発車した。
低いホームからの発車の場合、高い位置に出るまでは低速度で出発する。
線形の問題もあるのだろうが、低いホームは元々長距離列車が発車するホームだったということもあり、汽車時代の名残でもあるのだろう。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は宇都宮線、快速“ラビット”、宇都宮行きです。停車駅は……〕
宇都宮線快速の名前は“ラビット”。
ウサギのように速い、という意味で名付けられたのだろうが、しかし1つ疑問がある。
この疑問に答えれる、日本人はいるだろうか。
敷島:「! そう言えば、英語でウサギを意味するRabbit(ラビット)とBunny(バニー)はどう違うんだ?」
アリス:「んなもん、ググればいいじゃない」
敷島:「目の前にネイティブがいるから聞いてるんだよ!」
敷島は呆れて言った。
アリス:「Rabbitは兎でいいのよ」
敷島:「じゃあ、Bunnyは何だ?」
アリス:「ウサギでいいのよ」
敷島:「意味が分からん!」
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