[7月12日15:00. 神奈川県藤沢市 江ノ島海水浴場 敷島孝夫]
「だってお前、レンと一緒に泳いでたじゃないか!」
敷島は泣きじゃくるリンに問い詰めた。
「いつの間にかいなくなってたの!」
「GPSは?」
「反応・ありません」
と、エミリー。
「リン、緊急SOS信号は発信されたか?」
「それも無いよ……」
「フム。リンとレンの場合、長時間の浸水でGPS機能とSOS発信機能に不具合か……。これはまだまだ改良の余地がありそうね」
アリスは冷静に実験ノートを付けた。
「そんな暢気なことしてる場合じゃないだろ!」
「そうですよ。最悪、海に沈んだ可能性も……あっ!」
MEIKOが最悪のパターンを言ってしまった為に、
「レンが海の底に……!?」
また大泣きしそうになるリン。
「リン、ストップ!ストップ!」
慌てて止めに入るMEIKOだった。
ところが、
「どどど、どうしよう!?レンには来週から仕事がギッシリ入ってるっちゅーに!スケジュールの調整がーっ!」
頭を抱えて右往左往する敷島。
「ちょっと!それより回収費用と修理費用を考えなさいよね!ただでさえボーカロイド1機作るのに何億かかると思ってんの!!」
↑使用者と研究者で目の付け所が違うという点。
「まあまあ、皆。少し落ち着きたまえ」
そこへ十条がやってきた。
「冷静になって考えるんじゃ。……ウォッホン!えー……まず、わしは財団の責任者ではなく、皆の友人として来たわけであってじゃな……。じゃからその……責任とか、そういうのはの……。ハハハハ……」
「俺達が……」(敷島)
「しっかりしないと……」(アリス)
「もうこの博士、ダメかも……」(MEIKO)
「あの……何かあったんですか?」
そこへルカとミクがやってきた。
敷島が説明する。
「実はレンが行方不明になっちゃって……。ヘタすりゃ海の底に沈んでるかもしれないんだ」
「ええっ!?」
ミクは驚いた顔をしたが、ルカは冷静にこう言った。
「あれ?でもさっき、レンなら陸に上がったはずですけど……」
「えっ!?」
「それは本当か!?」
「はい。私が海に入って体の表面温度を冷やしてる時、レンが陸の方に向かって泳いでました」
「レンはちゃんと陸に上がったかね?」
十条がルカに聞いた。
「いえ、そこまでは……」
「ふむ……。陸に向かって泳いでいる最中、強力な離岸流に巻き込まれて沖まで流されたか……」
「あの、ドクター十条」
エミリーが口を開いた。
「私の目(カメラ)に・鏡音レンが・陸に上がった・様子が・記録されて・います」
「なにっ!?」
アリスは急いで、手持ちのタブレットをエミリーに接続した。
すると映し出されたのは、エミリーがちょっかいを出してきたMEIKOとケンカして、アリスに止められるところ。
微かにレンが海から上がって砂浜を歩いているのが映っていた。
「じゃあ、レンは陸の上に!?」(敷島)
「どこ行ったのかしら?」(アリス)
「皆のメモリーを確認してみよう!」(敷島)
但し、真っ先にレンを行方不明と断定したリンは除く。
するとルカと遊ぶミク、MEIKOと取っ組み合いのケンカをしたエミリーに付いた砂を落としてあげているキール。
この2人の目に撮影されたレンが、海の家に向かって歩いて行く所が僅かに映っていた。
「ごめんなさい。これくらいなら、レンが不審な行動を取っているとは思わなくて……」
「申し訳ありません。私もエミリーに気を取られてしまって……」
2人のボーカロイドと執事ロボットは敷島達に謝った。
「まあ、しょうがない。ちょっと行ってみよう」
[同日15:30.同海水浴場・海の家“めろん” 敷島孝夫]
「……その男の子なら、そこの自販機の前にいたでゲソ」
海の家の店員が目撃していた。
「ジュースを買おうとして、2人の女に声を掛けられていたでゲソ。多分、逆ナンじゃなイカ」
「しまった!レンのそれをすっかり忘れていた!」
美少年ボーカロイドとして、大人のイケメンボーカロイドとはまた違う人気がレンにはあったのだった。
しかしアリスが、
「でも、それが何だって言うの?ただのファンなら、少しサービス(握手とか撮影とか)してあげれば済む話じゃない?」
「わっかんないよー。レンは軽いし小さいし持ち運びしやすいから、もしかしたら『お持ち帰り』されてたりしてー。なんて……」
MEIKOの言葉に、
「それ、人間なら誘拐言いまっせ?」
と、敷島。
「れ……レンが……レンが……ゆ、ゆ、誘拐……!?」
「うあぁあぁ!リン、待って!泣かないで!」
ミクが慌ててリンを抱きしめた。
「しかしそうなると、警察に届ける必要が出て来るのではないかね?」
十条が右手を顎にやりながら言った。
「とはいうものの、レンが盗まれたという確証はまだ無いから、現時点では『遺失物捜索願』とかになるんではないかね?」
と続けた。
「そ、そうですね。確か、移動交番があったはず。ちょっと一っ走り行ってきます」
「あー、初音ミクも一緒についてってあげなさい。他の者は、ここに残るように」
「分かりました」
「では行ってきます」
敷島とミクが移動交番に向かった後で、
「『ロボットを1機紛失しました』で、警察は信用してくれるかしら?」
アリスは心配そうな顔をした。
「どうじゃかのぅ……。じゃから初音ミクを連れて行かせたのじゃが……。実物を見せれば、いくら何でも信用せざるを得んじゃろうて。MEIKOは余計なこと言いそうじゃし、リンはまた泣かれると困るしの」
と、その時だった。
〔ピンポンパンポーン♪「こちらは江ノ島海水浴場、迷子センターです。宮城県仙台市からお越しの敷島孝夫様、鏡音レン君と仰るお子様を……」「お子様じゃないって言ってんじゃん!!」〕
[同日16:00.同海水浴場・迷子センター 敷島孝夫]
「迷子じゃないのに迷子扱いされた!『お父さんかお母さんはどこ?』って聞かれた!何だこれ!」
今度はレンが泣く番だったという。
「お手数おかけしました」
敷島はスタッフに頭を下げた。
「こちらこそ、てっきり迷子かと……」
スタッフ達も、ばつが悪そうにしていた。
「いやー、大ごとにならなくて良かったよー、迷子クン」
MEIKOが悪戯っぽく言った。
「迷子じゃないって言ってんじゃん!」
「とんだ実験結果が待ってたわ……」
「まあ、何はともあれ、じゃ。財団の査問機関の介入はもちろんのこと、警察沙汰にもならなくて済んだことじゃし、一夏の思い出ということにしてみてはどうかの?」
と、その時、浜辺の上の道路に、けたたましいサイレンを鳴らした救急車や消防車が止まった。
救急隊員はもちろんのこと、消防車からはレスキュー隊員が飛び降りてきた。
「何だ何だ?」
「どうやら、誰か溺れたかしたみたいね」
「ふむ。それなら、わしらの出る幕ではないの」
「じゃあ、レンも無事だったし、着替えして片づけしたら宿に向かうぞ」
「はーい!」
「……ねえ、プロデューサー。何か忘れてない?」
MEIKOが不審そうな顔をした。
「は?何が?」
「むぅ?何かロボットが1機足りんような気がするが……」
「ちょっと!今度は誰よ!?」
アリスがいい加減にしろとばかり声を荒げた。
[同日ほぼ同時間帯 同海水浴場 KAITO]
「レスキュー隊、通りまーす!道を空けてくださーい!」
満潮時刻になった浜辺。
KAITOが砂に埋まっていた場所は既に海に沈み、電源の切れた彼は土左衛門状態だったという……。
「だってお前、レンと一緒に泳いでたじゃないか!」
敷島は泣きじゃくるリンに問い詰めた。
「いつの間にかいなくなってたの!」
「GPSは?」
「反応・ありません」
と、エミリー。
「リン、緊急SOS信号は発信されたか?」
「それも無いよ……」
「フム。リンとレンの場合、長時間の浸水でGPS機能とSOS発信機能に不具合か……。これはまだまだ改良の余地がありそうね」
アリスは冷静に実験ノートを付けた。
「そんな暢気なことしてる場合じゃないだろ!」
「そうですよ。最悪、海に沈んだ可能性も……あっ!」
MEIKOが最悪のパターンを言ってしまった為に、
「レンが海の底に……!?」
また大泣きしそうになるリン。
「リン、ストップ!ストップ!」
慌てて止めに入るMEIKOだった。
ところが、
「どどど、どうしよう!?レンには来週から仕事がギッシリ入ってるっちゅーに!スケジュールの調整がーっ!」
頭を抱えて右往左往する敷島。
「ちょっと!それより回収費用と修理費用を考えなさいよね!ただでさえボーカロイド1機作るのに何億かかると思ってんの!!」
↑使用者と研究者で目の付け所が違うという点。
「まあまあ、皆。少し落ち着きたまえ」
そこへ十条がやってきた。
「冷静になって考えるんじゃ。……ウォッホン!えー……まず、わしは財団の責任者ではなく、皆の友人として来たわけであってじゃな……。じゃからその……責任とか、そういうのはの……。ハハハハ……」
「俺達が……」(敷島)
「しっかりしないと……」(アリス)
「もうこの博士、ダメかも……」(MEIKO)
「あの……何かあったんですか?」
そこへルカとミクがやってきた。
敷島が説明する。
「実はレンが行方不明になっちゃって……。ヘタすりゃ海の底に沈んでるかもしれないんだ」
「ええっ!?」
ミクは驚いた顔をしたが、ルカは冷静にこう言った。
「あれ?でもさっき、レンなら陸に上がったはずですけど……」
「えっ!?」
「それは本当か!?」
「はい。私が海に入って体の表面温度を冷やしてる時、レンが陸の方に向かって泳いでました」
「レンはちゃんと陸に上がったかね?」
十条がルカに聞いた。
「いえ、そこまでは……」
「ふむ……。陸に向かって泳いでいる最中、強力な離岸流に巻き込まれて沖まで流されたか……」
「あの、ドクター十条」
エミリーが口を開いた。
「私の目(カメラ)に・鏡音レンが・陸に上がった・様子が・記録されて・います」
「なにっ!?」
アリスは急いで、手持ちのタブレットをエミリーに接続した。
すると映し出されたのは、エミリーがちょっかいを出してきたMEIKOとケンカして、アリスに止められるところ。
微かにレンが海から上がって砂浜を歩いているのが映っていた。
「じゃあ、レンは陸の上に!?」(敷島)
「どこ行ったのかしら?」(アリス)
「皆のメモリーを確認してみよう!」(敷島)
但し、真っ先にレンを行方不明と断定したリンは除く。
するとルカと遊ぶミク、MEIKOと取っ組み合いのケンカをしたエミリーに付いた砂を落としてあげているキール。
この2人の目に撮影されたレンが、海の家に向かって歩いて行く所が僅かに映っていた。
「ごめんなさい。これくらいなら、レンが不審な行動を取っているとは思わなくて……」
「申し訳ありません。私もエミリーに気を取られてしまって……」
2人のボーカロイドと執事ロボットは敷島達に謝った。
「まあ、しょうがない。ちょっと行ってみよう」
[同日15:30.同海水浴場・海の家“めろん” 敷島孝夫]
「……その男の子なら、そこの自販機の前にいたでゲソ」
海の家の店員が目撃していた。
「ジュースを買おうとして、2人の女に声を掛けられていたでゲソ。多分、逆ナンじゃなイカ」
「しまった!レンのそれをすっかり忘れていた!」
美少年ボーカロイドとして、大人のイケメンボーカロイドとはまた違う人気がレンにはあったのだった。
しかしアリスが、
「でも、それが何だって言うの?ただのファンなら、少しサービス(握手とか撮影とか)してあげれば済む話じゃない?」
「わっかんないよー。レンは軽いし小さいし持ち運びしやすいから、もしかしたら『お持ち帰り』されてたりしてー。なんて……」
MEIKOの言葉に、
「それ、人間なら誘拐言いまっせ?」
と、敷島。
「れ……レンが……レンが……ゆ、ゆ、誘拐……!?」
「うあぁあぁ!リン、待って!泣かないで!」
ミクが慌ててリンを抱きしめた。
「しかしそうなると、警察に届ける必要が出て来るのではないかね?」
十条が右手を顎にやりながら言った。
「とはいうものの、レンが盗まれたという確証はまだ無いから、現時点では『遺失物捜索願』とかになるんではないかね?」
と続けた。
「そ、そうですね。確か、移動交番があったはず。ちょっと一っ走り行ってきます」
「あー、初音ミクも一緒についてってあげなさい。他の者は、ここに残るように」
「分かりました」
「では行ってきます」
敷島とミクが移動交番に向かった後で、
「『ロボットを1機紛失しました』で、警察は信用してくれるかしら?」
アリスは心配そうな顔をした。
「どうじゃかのぅ……。じゃから初音ミクを連れて行かせたのじゃが……。実物を見せれば、いくら何でも信用せざるを得んじゃろうて。MEIKOは余計なこと言いそうじゃし、リンはまた泣かれると困るしの」
と、その時だった。
〔ピンポンパンポーン♪「こちらは江ノ島海水浴場、迷子センターです。宮城県仙台市からお越しの敷島孝夫様、鏡音レン君と仰るお子様を……」「お子様じゃないって言ってんじゃん!!」〕
[同日16:00.同海水浴場・迷子センター 敷島孝夫]
「迷子じゃないのに迷子扱いされた!『お父さんかお母さんはどこ?』って聞かれた!何だこれ!」
今度はレンが泣く番だったという。
「お手数おかけしました」
敷島はスタッフに頭を下げた。
「こちらこそ、てっきり迷子かと……」
スタッフ達も、ばつが悪そうにしていた。
「いやー、大ごとにならなくて良かったよー、迷子クン」
MEIKOが悪戯っぽく言った。
「迷子じゃないって言ってんじゃん!」
「とんだ実験結果が待ってたわ……」
「まあ、何はともあれ、じゃ。財団の査問機関の介入はもちろんのこと、警察沙汰にもならなくて済んだことじゃし、一夏の思い出ということにしてみてはどうかの?」
と、その時、浜辺の上の道路に、けたたましいサイレンを鳴らした救急車や消防車が止まった。
救急隊員はもちろんのこと、消防車からはレスキュー隊員が飛び降りてきた。
「何だ何だ?」
「どうやら、誰か溺れたかしたみたいね」
「ふむ。それなら、わしらの出る幕ではないの」
「じゃあ、レンも無事だったし、着替えして片づけしたら宿に向かうぞ」
「はーい!」
「……ねえ、プロデューサー。何か忘れてない?」
MEIKOが不審そうな顔をした。
「は?何が?」
「むぅ?何かロボットが1機足りんような気がするが……」
「ちょっと!今度は誰よ!?」
アリスがいい加減にしろとばかり声を荒げた。
[同日ほぼ同時間帯 同海水浴場 KAITO]
「レスキュー隊、通りまーす!道を空けてくださーい!」
満潮時刻になった浜辺。
KAITOが砂に埋まっていた場所は既に海に沈み、電源の切れた彼は土左衛門状態だったという……。
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