[9月12日13:15.天候:晴 東京都台東区 学校法人東京中央学園上野高校]
沼沢:「よお、稲生か。また来てくれたのか。今日はどうした?」
稲生はまず担任だった沼沢と会うことにした。
稲生:「沼沢先生、お久しぶりです」
基本的に他校への転勤が無いのが、私立の良い所だ。
稲生:「実は今の新聞部長に会いたいんですよ」
沼沢:「新聞部長だって?分かった。もうそろそろ終わる頃だから、ちょっと待っててくれ」
稲生:「終わる?」
沼沢:「昨日、今日と定期テストだぞ。9月の今頃はその時期だ」
稲生:「あ……」
沼沢:「『変な人形が出るー』とか、『逆さ女が!』とか騒いでたなぁ……」
稲生:「いや、ハハハ……」
沼沢:「あの銀髪の剣客さんは元気か?」
威吹、伝説になっていた。
稲生:「ええ、おかげさまで。今ではもう妻子持ちですよ」
沼沢:「ほお。それはそれは……」
そんな感じで話し込んでいると、学校のチャイムが鳴った。
沼沢:「おっ、終わったな。じゃあ、ちょっと校内放送掛けて来る」
稲生:「どうもすいません」
それからしばらくして、稲生と現在の新聞部長が部室で合流した。
部長:「あの伝説の先輩が来られるなんて……。一体、何があったんですか?」
稲生:「あれからもう5年以上は経っているのに、まだ伝説になってるんだ」
部長:「そりゃもう!会合を開くだけで呪われるという伝説をクラッシュしてくれたOBとして有名ですよ」
稲生:「あれは僕もいっぱいいっぱいだったよ。それにあの時は他の部員や協力者の人達のおかげで、まあ何とかなったようなものだし……」
部長:「是非またお話を聞かせてください」
稲生:「そうだね。ところで今日、僕が来たのは他でも無いんだ」
部長:「何でしょう?」
稲生:「僕が卒業してから、『学校の七不思議特集』を何度かやったみたいじゃない?」
部長:「ええ」
稲生:「その時の記事や取材メモを見せてもらうことはできないか?」
部長:「構いませんよ。先輩の頼みでしたら」
稲生:「すまない」
部長:「でも先輩」
稲生:「あー、大丈夫。メモの内容はみだりに口外したりしないよ」
部長:「あ、いえ、そういうことじゃなくて……」
稲生:「ん?」
部長:「取材メモはかなり膨大ですよ。何をお探しなんですか?ある程度、的を絞ってからの方が……」
稲生:「うん。実は合宿所であった怖い話を探してるんだ」
部長:「合宿所……。あの栃木にあるヤツですか」
稲生:「そう」
部長:「それなら、先輩達が自らボクシング部であった怖い話を取材されてるじゃないですか」
稲生:「いや、それじゃない。それ以外のものを探してるんだ」
部長:「それ以外のもの……?自分の代では取材してないですねぇ……」
稲生:「そんな簡単に……」
部長:「だってそうじゃないですか。いくら学校の施設とはいえ、この上野高校以外の場所で怪談話ってほとんど無いんですよ。男子バレー部も合宿所に行って、そこに棲んでいた幽霊に嫌がらせされた話はありましたが、実際にその幽霊が嫌がらせをし始めたのはここに帰って来てからですからね」
稲生:「それは僕の代での話だよね。とにかく、取材メモを見せてくれないか」
部長:「分かりました」
部長が取材メモが保管されている棚を開けようとした時だった。
部室のドアがノックされた。
部長:「はい?」
部長が部屋のドアを開けた。
すると、そこにいたのは……。
男子生徒:「こんにちは。新聞部の部室は、ここでよろしいですか?」
部長:「そうだけど……」
男子生徒:「僕は1年5組の荒田譲治と言います。こちらに新聞部のOBの人が来てらっしゃると聞いて来ました」
稲生:「僕のことかい?」
荒田:「稲生勇太先輩ですね。僕、大河内の従弟です」
稲生:「お、大河内君の!?」
あまり似てないなと思った。
荒田:「ロックな彼と違って僕は文科系なので、あまり似てないと言われます」
稲生:「あ、いや、その……」
荒田:「僕もこの学校の怖い話は知ってるんですよ。ここに来られたということは、それをお探しになったのかと思いまして」
稲生:「まだ1年生なのに?……あー、1年生でも怖い話を知っていた人はいたか」
荒田:「ええ。僕の場合、その従兄から聞いた話なんですよ」
稲生:「僕も聞いたことがある話かな?」
荒田:「それは合宿所であった話のことですか?」
稲生:「えっ?いや、違うよ!」
荒田:「僕が聞いたのは、その合宿所であった話のことなんですよ」
部長:「それは素晴らしい。早速聞かせてもらいましょうか」
稲生:「もうお昼時だ。2人とも、まだお昼まだでしょ?お昼でも食べながらにしよう」
荒田:「先輩の奢りですね。ごちそうさまです」
部長:「ゴチです!」
稲生:「いや、まあ、そうなんだけど……」
稲生は苦笑した。
[同日14:00.天候:晴 JR上野駅前 某ファーストフード店]
稲生:「『3時の魔道師』か。名前からしてガチっぽいな」
部長:「それにしても先輩、どうして合宿所の怖い話を探してるんですか?」
稲生:「あー、えっと……それは……」
部長:「もしかして先輩方が対処した『魔界の穴』と関係あるんですか?」
稲生:「関係あると言えばある、無いと言えば無いかな」
荒田:「何ですか、それは?」
稲生:「それを確認したいんだ。だけど、何の確証も無く行けるわけないし。だからもし新聞部で既に取材してないか、まず確認に来たんだ」
荒田:「それじゃ、物凄く良いタイミングだったわけですね」
稲生:「そういうことになるね」
稲生はズズズとコーヒーを啜った。
稲生:(今やこっちが怪談話を発生される側、とはさすがに言えない……。それにしても、『3時の魔道師』か……)
部長:「『3時の魔道師』とやらは、誰が名付けたんだい?」
荒田:「あ、それは僕です。元々名前が無いので、僕が便宜上付けたんです」
稲生:「なるほど。合宿所にある特別な時計を操作すれば現れるというわけか」
荒田:「そうです。だけど、合宿所なんてなかなか利用する機会が無いじゃないですか」
稲生:「確かに。僕も新聞部の取材ということでなけりゃ、行く機会無かったな」
部長:「分かりました。それなら、自分から合宿所に行けるように手配してみます」
稲生:「うん、よろしく頼むよ」
荒田:「僕も、この話の提供者ということで同行させてはもらえませんでしょうか?」
部長:「分かった。話を付けてみる」
荒田:「よろしくお願い致します」
沼沢:「よお、稲生か。また来てくれたのか。今日はどうした?」
稲生はまず担任だった沼沢と会うことにした。
稲生:「沼沢先生、お久しぶりです」
基本的に他校への転勤が無いのが、私立の良い所だ。
稲生:「実は今の新聞部長に会いたいんですよ」
沼沢:「新聞部長だって?分かった。もうそろそろ終わる頃だから、ちょっと待っててくれ」
稲生:「終わる?」
沼沢:「昨日、今日と定期テストだぞ。9月の今頃はその時期だ」
稲生:「あ……」
沼沢:「『変な人形が出るー』とか、『逆さ女が!』とか騒いでたなぁ……」
稲生:「いや、ハハハ……」
沼沢:「あの銀髪の剣客さんは元気か?」
威吹、伝説になっていた。
稲生:「ええ、おかげさまで。今ではもう妻子持ちですよ」
沼沢:「ほお。それはそれは……」
そんな感じで話し込んでいると、学校のチャイムが鳴った。
沼沢:「おっ、終わったな。じゃあ、ちょっと校内放送掛けて来る」
稲生:「どうもすいません」
それからしばらくして、稲生と現在の新聞部長が部室で合流した。
部長:「あの伝説の先輩が来られるなんて……。一体、何があったんですか?」
稲生:「あれからもう5年以上は経っているのに、まだ伝説になってるんだ」
部長:「そりゃもう!会合を開くだけで呪われるという伝説をクラッシュしてくれたOBとして有名ですよ」
稲生:「あれは僕もいっぱいいっぱいだったよ。それにあの時は他の部員や協力者の人達のおかげで、まあ何とかなったようなものだし……」
部長:「是非またお話を聞かせてください」
稲生:「そうだね。ところで今日、僕が来たのは他でも無いんだ」
部長:「何でしょう?」
稲生:「僕が卒業してから、『学校の七不思議特集』を何度かやったみたいじゃない?」
部長:「ええ」
稲生:「その時の記事や取材メモを見せてもらうことはできないか?」
部長:「構いませんよ。先輩の頼みでしたら」
稲生:「すまない」
部長:「でも先輩」
稲生:「あー、大丈夫。メモの内容はみだりに口外したりしないよ」
部長:「あ、いえ、そういうことじゃなくて……」
稲生:「ん?」
部長:「取材メモはかなり膨大ですよ。何をお探しなんですか?ある程度、的を絞ってからの方が……」
稲生:「うん。実は合宿所であった怖い話を探してるんだ」
部長:「合宿所……。あの栃木にあるヤツですか」
稲生:「そう」
部長:「それなら、先輩達が自らボクシング部であった怖い話を取材されてるじゃないですか」
稲生:「いや、それじゃない。それ以外のものを探してるんだ」
部長:「それ以外のもの……?自分の代では取材してないですねぇ……」
稲生:「そんな簡単に……」
部長:「だってそうじゃないですか。いくら学校の施設とはいえ、この上野高校以外の場所で怪談話ってほとんど無いんですよ。男子バレー部も合宿所に行って、そこに棲んでいた幽霊に嫌がらせされた話はありましたが、実際にその幽霊が嫌がらせをし始めたのはここに帰って来てからですからね」
稲生:「それは僕の代での話だよね。とにかく、取材メモを見せてくれないか」
部長:「分かりました」
部長が取材メモが保管されている棚を開けようとした時だった。
部室のドアがノックされた。
部長:「はい?」
部長が部屋のドアを開けた。
すると、そこにいたのは……。
男子生徒:「こんにちは。新聞部の部室は、ここでよろしいですか?」
部長:「そうだけど……」
男子生徒:「僕は1年5組の荒田譲治と言います。こちらに新聞部のOBの人が来てらっしゃると聞いて来ました」
稲生:「僕のことかい?」
荒田:「稲生勇太先輩ですね。僕、大河内の従弟です」
稲生:「お、大河内君の!?」
あまり似てないなと思った。
荒田:「ロックな彼と違って僕は文科系なので、あまり似てないと言われます」
稲生:「あ、いや、その……」
荒田:「僕もこの学校の怖い話は知ってるんですよ。ここに来られたということは、それをお探しになったのかと思いまして」
稲生:「まだ1年生なのに?……あー、1年生でも怖い話を知っていた人はいたか」
荒田:「ええ。僕の場合、その従兄から聞いた話なんですよ」
稲生:「僕も聞いたことがある話かな?」
荒田:「それは合宿所であった話のことですか?」
稲生:「えっ?いや、違うよ!」
荒田:「僕が聞いたのは、その合宿所であった話のことなんですよ」
部長:「それは素晴らしい。早速聞かせてもらいましょうか」
稲生:「もうお昼時だ。2人とも、まだお昼まだでしょ?お昼でも食べながらにしよう」
荒田:「先輩の奢りですね。ごちそうさまです」
部長:「ゴチです!」
稲生:「いや、まあ、そうなんだけど……」
稲生は苦笑した。
[同日14:00.天候:晴 JR上野駅前 某ファーストフード店]
稲生:「『3時の魔道師』か。名前からしてガチっぽいな」
部長:「それにしても先輩、どうして合宿所の怖い話を探してるんですか?」
稲生:「あー、えっと……それは……」
部長:「もしかして先輩方が対処した『魔界の穴』と関係あるんですか?」
稲生:「関係あると言えばある、無いと言えば無いかな」
荒田:「何ですか、それは?」
稲生:「それを確認したいんだ。だけど、何の確証も無く行けるわけないし。だからもし新聞部で既に取材してないか、まず確認に来たんだ」
荒田:「それじゃ、物凄く良いタイミングだったわけですね」
稲生:「そういうことになるね」
稲生はズズズとコーヒーを啜った。
稲生:(今やこっちが怪談話を発生される側、とはさすがに言えない……。それにしても、『3時の魔道師』か……)
部長:「『3時の魔道師』とやらは、誰が名付けたんだい?」
荒田:「あ、それは僕です。元々名前が無いので、僕が便宜上付けたんです」
稲生:「なるほど。合宿所にある特別な時計を操作すれば現れるというわけか」
荒田:「そうです。だけど、合宿所なんてなかなか利用する機会が無いじゃないですか」
稲生:「確かに。僕も新聞部の取材ということでなけりゃ、行く機会無かったな」
部長:「分かりました。それなら、自分から合宿所に行けるように手配してみます」
稲生:「うん、よろしく頼むよ」
荒田:「僕も、この話の提供者ということで同行させてはもらえませんでしょうか?」
部長:「分かった。話を付けてみる」
荒田:「よろしくお願い致します」
しかし帰りのバスが、またヒュンダイ!
往路と車番が違うことから、別のバスなのだろう。
国産車に乗りたい!
ヒュンダイ・ユニバース
会社番号:W0208
登録番号:富士山240 あ ・2‐08