[9月19日06時30分 天候:晴 東京都台東区花川戸 東武鉄道浅草駅→東武伊勢崎線1101列車・1号車内]
折り返し車内整備が終わり、乗車が開始されると、私達は渡り板を渡って車内に入った。
東武浅草駅のホームは東京の鉄道でも名物の1つとなっており、下り方向は極端に湾曲している為、電車とホームの間の隙間が半端ない。
1番線のみ辛うじて8両編成が入線できるものの、それ以外は6両編成しか入線できない。
下り方向の先頭車と2両目辺りは渡り板が設置され、乗客はそれを渡って乗り降りする。
発車の1分前くらいに、係員によって渡り板が外されるという仕組み。
〔♪♪♪♪。東武鉄道をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、特急“リバティ会津”101号、会津田島行き、特急“リバティけごん”1号、東武日光行きです。1号車から3号車は、会津田島行き、4号車から6号車は、東武日光行きです。停車駅は、とうきょうスカイツリー、北千住、春日部、板倉東洋大前、栃木、新鹿沼、下今市です。下今市を出ますと、1号車から3号車は、新高徳、東武ワールドスクウェア、鬼怒川温泉、鬼怒川公園、新藤原の順に止まります。4号車から6号車は、終点、東武日光に止まります。全車両座席指定となっております。ご乗車には、特急券が必要です。尚、指定の座席以外にお座りのお客様には、特急券の確認をさせて頂きます。お手元の特急券の号車番号と、座席番号をお確かめください。車内はデッキ、トイレを含めまして、全て禁煙です〕
この東武500系電車に乗るのは、リサの中等部代替修学旅行の時に乗った“スノーパル”以来だ。
進行方向左側の座席が確保されており、善場係長に促され、私は窓側へと座った。
すぐ窓の外側にリサがやってくる。
〔お客様にご案内致します。浅草駅を発車しますと、すぐ左手に、東京スカイツリーが見えて参ります。東京スカイツリーは、高さ634mの自立式電波塔です。また、東京スカイツリーの足元に広がる東京スカイツリータウンには、水族館やドームシアター、ショッピングセンターなど、楽しい施設がいっぱいです。皆様のご来場を、心よりお待ちしております〕
私は網棚に荷物を置くと、デッキに向かった。
リサ「先生……絶対に、無事に帰ってきてね……!」
愛原「あ、ああ……!」
そして、一旦ホームに降りると、リサに抱きしめられた。
制服姿で抱きしめられると、何だか誤解されそうで気まずい。
愛原「そんなに霧生市は危ない所なのか?」
リサ「うん……」
バイオハザード発生中の時は、そりゃあ町全体が危険地帯だった。
郊外山中の山寺である大山寺ですら、ゾンビや化け物が徘徊していたものだ。
しかし、その事件から既に7~8年が経過している。
あの時、小学生程度の幼女だったリサも、今では高校3年生だ。
……後でリサは、こう回想している。
『危険なのは霧生市ではなく、愛原先生自身だ』と。
『あの時は、滅多な事が言えなかった』と。
係員「渡り板を外させて頂きます」
発車の1分前になり、係員が渡り板を外しに回る。
愛原「あっ、乗ります。それじゃ、リサ」
リサ「うん……」
まるで、今生の別れだな。
あんなに泣いて……。
私は渡り板を渡って、再び車内に入った。
係員が渡り板を外す。
〔まもなく3番線から、特急リバティが、発車致します〕
ホームに発車メロディが鳴り響く。
“Passenger”という曲名だ。
かつて東武池袋駅では、これの半オクターブ高く、テンポも速いエンドレスタイプの発車メロディが使用されていた。
東武浅草駅では、通常の低音タイプが流れる。
〔3番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔「3番線から、特急リバティ会津田島行きと東武日光行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください」〕
引き戸式のドアが閉まる。
東武浅草駅は構造上、ホームドアが設置されていないが、車掌からの発車合図のブザーが鳴ってから発車する事になっているので、ドアが閉まってから動き出すまで、数秒のブランクがある。
そして、大きくエアーの抜ける音がすると、インバータのモーター音を響かせて、列車がゆっくりと走り出した。
すぐに直角と誤解するほどの急カーブに入るので、制限速度は時速15km以下に設定され、それでも列車は大きく揺れ、車輪の軋む音が大きく響く。
電車がホームから出て、リサの姿が見えなくなったのを確認すると、私は再び客室に入って自分の座席に戻った。
〔♪♪♪♪。まもなく、とうきょうスカイツリーに、到着致します。お出口は、右側です。とうきょうスカイツリーを出ますと、次は北千住に止まります〕
観光案内放送の通り、駅を出ると、すぐに東京スカイツリーが見える。
隅田川を渡った先に。
善場「リサとの別れは済みましたか?」
愛原「はあ……」
私は再び窓側に座った。
隣の通路側には、善場係長が座っている。
尚、通路を挟んで進行方向右側にはパールとレイチェルが座っていた。
愛原「泣いちゃって、何か様子がおかしいんですよ。そんなに霧生市って、危険な所なんですか?」
善場「そうですねぇ……。まあ、安全な所では無いですね。インフラの回復は殆どされておらず、生き残った住民達の帰還も殆ど進んでいない状態ですから」
愛原「なるほど……」
私はテーブルの上に駅弁を置くと、取りあえず腹ごしらえすることにした。
善場「それより所長は……特に、お体に異変とかはございませんか?」
愛原「よく聞かれるんですが、別に何とも無いんですよ。強いて言うなら、食欲がいつもより増しているといったところでしょうか……」
善場「!」
レイチェル「!」
パール「先生、夕食はリサちゃんと一緒に大きなステーキを平らげておられましたものね」
愛原「いつもなら、あれだけ食べたら胃もたれしたり、胸やけしそうなものだが、平気だったな。まだ、あと1枚は食べれそうな感じだった。それだけ美味い肉だったということかな」
レイチェル「そうですか……」
善場「……確認なんですが、食欲というのは、普通の食事に対する欲求という事で宜しいでしょうか?」
愛原「? そりゃそうですよ。他に何か?」
善場「いえ、何でもありません。失礼致しました」
愛原「朝食は自分で用意しましたが、昼食とかはどうなるのでしょうか?」
善場「現地では、BSAAが野営の設備を用意していますので、食事はそこで確保できます」
愛原「なるほど。それなら安心ですね」
善場「何しろ、町全体が廃墟の場所です。安全を確保し、そこに野営地を決めることになっております」
善場の説明に、横で聞いていたレイチェルが大きく頷いた。
ヘタしたら、BSAAが設置したテントに寝泊まりすることになるわけか。
折り返し車内整備が終わり、乗車が開始されると、私達は渡り板を渡って車内に入った。
東武浅草駅のホームは東京の鉄道でも名物の1つとなっており、下り方向は極端に湾曲している為、電車とホームの間の隙間が半端ない。
1番線のみ辛うじて8両編成が入線できるものの、それ以外は6両編成しか入線できない。
下り方向の先頭車と2両目辺りは渡り板が設置され、乗客はそれを渡って乗り降りする。
発車の1分前くらいに、係員によって渡り板が外されるという仕組み。
〔♪♪♪♪。東武鉄道をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、特急“リバティ会津”101号、会津田島行き、特急“リバティけごん”1号、東武日光行きです。1号車から3号車は、会津田島行き、4号車から6号車は、東武日光行きです。停車駅は、とうきょうスカイツリー、北千住、春日部、板倉東洋大前、栃木、新鹿沼、下今市です。下今市を出ますと、1号車から3号車は、新高徳、東武ワールドスクウェア、鬼怒川温泉、鬼怒川公園、新藤原の順に止まります。4号車から6号車は、終点、東武日光に止まります。全車両座席指定となっております。ご乗車には、特急券が必要です。尚、指定の座席以外にお座りのお客様には、特急券の確認をさせて頂きます。お手元の特急券の号車番号と、座席番号をお確かめください。車内はデッキ、トイレを含めまして、全て禁煙です〕
この東武500系電車に乗るのは、リサの中等部代替修学旅行の時に乗った“スノーパル”以来だ。
進行方向左側の座席が確保されており、善場係長に促され、私は窓側へと座った。
すぐ窓の外側にリサがやってくる。
〔お客様にご案内致します。浅草駅を発車しますと、すぐ左手に、東京スカイツリーが見えて参ります。東京スカイツリーは、高さ634mの自立式電波塔です。また、東京スカイツリーの足元に広がる東京スカイツリータウンには、水族館やドームシアター、ショッピングセンターなど、楽しい施設がいっぱいです。皆様のご来場を、心よりお待ちしております〕
私は網棚に荷物を置くと、デッキに向かった。
リサ「先生……絶対に、無事に帰ってきてね……!」
愛原「あ、ああ……!」
そして、一旦ホームに降りると、リサに抱きしめられた。
制服姿で抱きしめられると、何だか誤解されそうで気まずい。
愛原「そんなに霧生市は危ない所なのか?」
リサ「うん……」
バイオハザード発生中の時は、そりゃあ町全体が危険地帯だった。
郊外山中の山寺である大山寺ですら、ゾンビや化け物が徘徊していたものだ。
しかし、その事件から既に7~8年が経過している。
あの時、小学生程度の幼女だったリサも、今では高校3年生だ。
……後でリサは、こう回想している。
『危険なのは霧生市ではなく、愛原先生自身だ』と。
『あの時は、滅多な事が言えなかった』と。
係員「渡り板を外させて頂きます」
発車の1分前になり、係員が渡り板を外しに回る。
愛原「あっ、乗ります。それじゃ、リサ」
リサ「うん……」
まるで、今生の別れだな。
あんなに泣いて……。
私は渡り板を渡って、再び車内に入った。
係員が渡り板を外す。
〔まもなく3番線から、特急リバティが、発車致します〕
ホームに発車メロディが鳴り響く。
“Passenger”という曲名だ。
かつて東武池袋駅では、これの半オクターブ高く、テンポも速いエンドレスタイプの発車メロディが使用されていた。
東武浅草駅では、通常の低音タイプが流れる。
〔3番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔「3番線から、特急リバティ会津田島行きと東武日光行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください」〕
引き戸式のドアが閉まる。
東武浅草駅は構造上、ホームドアが設置されていないが、車掌からの発車合図のブザーが鳴ってから発車する事になっているので、ドアが閉まってから動き出すまで、数秒のブランクがある。
そして、大きくエアーの抜ける音がすると、インバータのモーター音を響かせて、列車がゆっくりと走り出した。
すぐに直角と誤解するほどの急カーブに入るので、制限速度は時速15km以下に設定され、それでも列車は大きく揺れ、車輪の軋む音が大きく響く。
電車がホームから出て、リサの姿が見えなくなったのを確認すると、私は再び客室に入って自分の座席に戻った。
〔♪♪♪♪。まもなく、とうきょうスカイツリーに、到着致します。お出口は、右側です。とうきょうスカイツリーを出ますと、次は北千住に止まります〕
観光案内放送の通り、駅を出ると、すぐに東京スカイツリーが見える。
隅田川を渡った先に。
善場「リサとの別れは済みましたか?」
愛原「はあ……」
私は再び窓側に座った。
隣の通路側には、善場係長が座っている。
尚、通路を挟んで進行方向右側にはパールとレイチェルが座っていた。
愛原「泣いちゃって、何か様子がおかしいんですよ。そんなに霧生市って、危険な所なんですか?」
善場「そうですねぇ……。まあ、安全な所では無いですね。インフラの回復は殆どされておらず、生き残った住民達の帰還も殆ど進んでいない状態ですから」
愛原「なるほど……」
私はテーブルの上に駅弁を置くと、取りあえず腹ごしらえすることにした。
善場「それより所長は……特に、お体に異変とかはございませんか?」
愛原「よく聞かれるんですが、別に何とも無いんですよ。強いて言うなら、食欲がいつもより増しているといったところでしょうか……」
善場「!」
レイチェル「!」
パール「先生、夕食はリサちゃんと一緒に大きなステーキを平らげておられましたものね」
愛原「いつもなら、あれだけ食べたら胃もたれしたり、胸やけしそうなものだが、平気だったな。まだ、あと1枚は食べれそうな感じだった。それだけ美味い肉だったということかな」
レイチェル「そうですか……」
善場「……確認なんですが、食欲というのは、普通の食事に対する欲求という事で宜しいでしょうか?」
愛原「? そりゃそうですよ。他に何か?」
善場「いえ、何でもありません。失礼致しました」
愛原「朝食は自分で用意しましたが、昼食とかはどうなるのでしょうか?」
善場「現地では、BSAAが野営の設備を用意していますので、食事はそこで確保できます」
愛原「なるほど。それなら安心ですね」
善場「何しろ、町全体が廃墟の場所です。安全を確保し、そこに野営地を決めることになっております」
善場の説明に、横で聞いていたレイチェルが大きく頷いた。
ヘタしたら、BSAAが設置したテントに寝泊まりすることになるわけか。
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