報恩坊の怪しい偽作家!

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“Gynoid Multitype Sisters” 「ショーウィンドーのレイチェル」 3

2017-08-28 19:21:38 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月12日16:45.天候:雷雨 宮城県仙台市青葉区 某高級ブティック前]

 MEIKO:「エミリーとシンディに現況通信したわ。何とか取り押さえて、あの2人に突き出そう!」
 Lily:「了解です!ロックって感じですね!」
 MEIKO:「そうかな?……ま、いいや。行こう」

 既に店の周りには人だかりができていた。

 ロイ:「ちょっと待ったーっ!」

 と、そこへ人ごみの中から現れたのは、執事ロイドのロイと製作者の村上大二郎博士であった。

 MEIKO:「村上博士!」
 ロイ:「アイドルの皆さんが戦う必要はありません。ここは村上博士が一肌脱いで下さるそうです!」
 MEIKO:「マジで!?それは助かる!」
 Lily:「博士、よろしくお願いします!」
 村上:「任せたまえ。あー、そこのお嬢さんや。こんなにも大勢の人々を騒がせたその罪、ちと償ってもらおうかの」
 レイチェル:「私は……KAITO様に……」
 村上:「取りい出したるは、全ロイド緊急停止リモコンじゃ!これをポチッと押すだけで、周りのロイドに緊急停止信号が送られるという寸法ぢゃ!」
 MEIKO:「ちょっと待って、博士!それって私達も危ない……」
 Lily:「ロック過ぎるぞ、爺さん!」
 村上:「ポチッとな!」

 チュドーン!

 MEIKO:「!!!」
 Lily:「!?」

 村上が爆風で高く上がり、地面に落下した。

 村上:「ぎゃん!……ろ、ロイ!服に火が点いたぞ!早く消すんじゃ!」
 ロイ:「はいはい!」
 MEIKO:「何しに来たのよ、アンタわ!?」
 Lily:「ロック過ぎたぜ、爺さん!」

 幸いロイの消火活動と大雨により、村上の自爆による自火災は小火で済んだ。

 MEIKO:「爺さん博士と天然執事に任せてられないわ!私達で何とかしよ!」
 Lily:「は、はい!」

 が!

 MEIKO:「って、ドサグサに紛れてレイチェルが消えた!?」
 Lily:「き、きっとまだ近くにいるはずです!探しましょう!」

 Lilyが先に立って走り出した時だった。

 Lily:「痛っ!?……ごめんなさい!」

 何か柔らかいものに当たったのだが、それはシンディの胸だった。
 Lilyはそんなに身長は高くない為、高身長のシンディの胸に当たったのだった。

 シンディ:「何やってんの、アンタ?」
 Lily:「シンディさん!」
 シンディ:「社長達が遅いから、アタシが先に来たよ。で、暴走マネキンは?」
 MEIKO:「天然コンビのおかげで、取り逃がしちゃったのよ」
 シンディ:「全く。ホント、余計なことしてくれる……」
 MEIKO:「社長達が遅いというより、この騒ぎのせいで有名人のKAITOが近づけなくなっちゃったって所でしょ?」
 シンディ:「まあね。それよりMEIKO、アンタもそろそろ逃げないと」
 MEIKO:「えっ?」

 人だかりができていたのは、何もレイチェルの暴走が原因ではなかった。
 MEIKOにスマホやカメラを向ける人達が目立って増えていた。

 MEIKO:「ヤバみ、顔バレしたし」
 Lily:「早く行きましょう」

[同日18:00.天候:曇 ホテルメトロポリタン仙台]

 敷島は部屋でテレビを見ていた。
 テレビでは早速、レイチェルが暴走して脱走したことが報道されていた。

 敷島:「平賀先生も大変だな」

 平賀はDCJの外部執行役員である。
 とはいえDCJの関係者でもある以上、無関心ではいられなかった。

 シンディ:「それにしても社長、レイチェルとやらはどこに行ったのでしょう?」
 敷島:「メイドロイドなら辛うじてGPS搭載しているのに、その廉価版には搭載していないとは……」
 シンディ:「見つけ次第、ぶっ壊していいですか?」
 敷島:「待て待て。捕まえて、あのブティックに引き渡さないと。もっとも、店側としてはそんな危険なロボット、もう要らないってことにはなるだろうがな」
 シンディ:「何でKAITOにベタ惚れしたんでしょうね?」
 敷島:「バージョン5.0が率先してミクのライブでヲタ芸やるのと似たようなものだろう」

 今でもDCJ関係施設をボーカロイド(特に初音ミク)が訪れると、セキュリティロボット達が駆け寄ってサインや握手をねだりに来る。
 その度にエミリーやシンディが怒鳴りつけて追い払っているほどだ。

 敷島:「KAITOの追っかけに人間の女性ファンだけでなく、そっちの方も対策しないとな」
 シンディ:「人間の女性はともかく、ロイドでしたら私達で何とかしますよ」
 敷島:「ともかくって……」
 シンディ:「私達の立場では、人間に手荒なことはできませんわ」
 敷島:「ま、そりゃそうだが……。レイチェルの場合は単なる追っかけじゃなく、ストーカーになるかもしれないってことだ」
 シンディ:「だったら尚更、私達で鉄塊にしてやりますよ」
 敷島:「だから捕まえるだけでいいって。……ん?そういえば村上教授達は、どこに泊まるんだ?」
 シンディ:「キャンピングカーで来られてたわけですよね?どこにでも泊まれそうですね」
 敷島:「マイクロバス改造車だから、場所は選ぶことになると思うぞ。普通の駐車場には止まれないだろう」
 シンディ:「そうですね。村上博士自ら運転されて?」
 敷島:「んなワケ無いだろう。ってか、マジで誰が運転してるんだ?ロイだったりして?」
 シンディ:「私達にはまだ運転免許は交付されることは無いはずですけど」
 敷島:「それもそうだな」

 運転手がロボットになることよりも、そもそも車自体がロボット化されつつある時代だ。

 敷島:「……いや、案外あの車、ロボットだったりして」
 シンディ:「ええっ?」
 敷島:「今度あのキャンピングカー見たら、スキャンしてみろ?」
 シンディ:「わ、分かりました」
 敷島:「そういえば村上教授は、アンドロイドよりも、本当はもっと実用性のあるロボットの方の研究をしている人だった」

 執事ロイドにあっては村上曰く、「メイドロイドを男にしただけ」だそうで、執事ロイドは村上の集大成ではないらしい。

 敷島:「変形ロボットの車とか、マジで造りそうだぞ、あの人」
 シンディ:「それはそれで面白そうですね」

 シンディは近未来、ロボット化された高級車の後ろに乗り込む敷島を思い浮かべた。
 自分は秘書として助手席に座る。
 そして無人の運転席では、見えない運転手が敷島エージェンシーに向かってハンドルを切る。
 どのくらい先の未来になるか。

 シンディ:「そのロボットカーに乗れる時まで、私を使ってくださいね。私、役に立ちますから」
 敷島:「いいだろう」

 敷島は大きく頷いた。

 敷島:「せめて都道と市区町村道はロボットカーが走ってもOKという条例くらい作ってもらうよう、勝っちゃんにお願いしてみよう」

 敷島の旧友で東京都議会、若手議員連盟の勝又。
 最近、登場していない。
 尚、エミリーは現在、平賀の護衛中である。

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