報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原の見た夢」

2023-10-03 20:22:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月17日22時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 私は風呂に入った後、リビングでレポートを書いていた。

 パール「先生、お茶をどうぞ」
 愛原「ありがとう。でも、寝る前にお茶飲んだりしたら、眠れなくなるかもな」
 パール「ほうじ茶ですから、そんなにカフェインは入ってないと思います」
 愛原「おー、ほうじ茶か。それならいいや。ありがとう」
 パール「いいえ」

 ほうじ茶はその製法上、製造中にカフェインが壊れてしまう。
 その為、煎茶よりもまろやかで胃に優しい。

 パール「明日、事務所で作成されてはいかかですか?」
 愛原「いや、クライアントを待たせてしまっている。なるべく早くレポートを作成して、報告したい」

 事故物件の怪奇現象の正体について。
 こんなことも探偵の仕事に回って来るのだから凄いことだ。

 愛原「ん?リサはどうした?」

 今は高橋が風呂に入っている。
 リサを先に風呂に入れてやったのだが、上がった旨報告すると、すぐ自分の部屋に向かって行ってしまった。
 いつもなら、そこのソファに寝転がってテレビを観たり、スマホを弄ったりするのだが。
 私に尻を向けてブルマ尻を堪能させたり、或いは逆に甘えてきて、膝枕をねだったりすることがあった。

 パール「部屋に戻りましたよ。来週はテストですから、勉強しているのかもしれません」
 愛原「おー、そうか。テスト勉強か。それは感心感心……」

 リサがソファに寝っ転がらないのは少し寂しいが、理由が理由なだけに、しょうがない。

 愛原「これを飲んだら、休むことにしよう。俺も疲れたし」
 パール「はい。そうなさってください」

[期日不明 時刻不明(昼間) 天候:雨 とある高層マンション]

 どこだここは……?
 私は、とあるマンションの1室にいた。
 室内は散らかっていて、まるで、かつて私が独り暮らしをしていた頃のようである。
 だが、マンションの内装に見覚えは無い。
 間取りはオーソドックスなワンルーム。
 窓の外を見ると、空は曇っていて、雨が降っている。
 だが、濃い霧が掛かっているのか、外は全く見えない。
 んん?何だここは?
 私は部屋の外に出ようとした。

 ところが、ここで場面が変わる。
 今度は立体駐車場にいた。
 タワー式の立体駐車場ではなく、自走式の立体駐車場。
 ショッピングモールのそれほど広くは無いので、もしかしたら、マンションの駐車場なのかもしれない。
 車は殆どのマスに止まっているが、出入りしている様子は無い。
 私がその駐車場を歩いていると、管理人室が見えて来た。
 そこに誰かいるだろうかと思って、中を覗くと、確かにそこには誰かがいた。
 マンションや駐車場の管理人室にいるくらいだから、私よりずっと年上のオジさん、或いはお爺さんでもいるのだろうと思ったが違った。
 そこにいたのは、意外にも若い女性だった。
 年齢は20代前半くらいで、青みがかった髪をポニーテールにしていた。
 そして、彼女は白っぽい着物を着ていた。
 確かあれ、薄墨色とか言うんじゃなかったかな?
 私が声を掛けると、彼女はすぐに応対してくれた。

 愛原「ここはどこなんですか?あ、いや、駐車場の中だというのは知ってますが……」
 管理人「ここは三途の川の中州です」
 愛原「えっ?」
 管理人「此岸と彼岸の境目に位置しています」

 すると、私は死んだのか!?

 管理人「このマンションは臨終後、閻魔大王の裁判を受けまでの間、一時滞在する為の物です」
 愛原「そ、そうなの?」

 やはり、私は死んだようだ。

 愛原「すると、私は死んだんだな?」
 管理人「…………」
 愛原「全く記憶が無いんだ。私は、どうして死んだんだ?」
 管理人「私の立場では、お答えできません」
 愛原「な、なに!?」
 管理人「裁判が始まるまでは、このマンション内は自由に移動して構いませんので」
 愛原「裁判ということは、弁護士は付くのか?」
 管理人「もう既に閻魔帳に全ての事が書かれており、あとは閻魔大王が判断することなので、弁護士は付きません」
 愛原「ええ……」

 そして、また場面が変わる。
 今度はマンションの屋上であった。
 そこに出ると、雨が降りしきっている。
 降り方は安定しておらず、霧雨になったこともあれば、土砂降りになったこともある。
 いずれにせよ、傘が無いと厳しい強さの雨である。
 にも関わらず、私は気にすることなく、転落防止用の柵の手前ギリギリまで歩いた。
 すると、それまで霧に包まれていた景色が少しだけ晴れる。
 ぼんやりだが、向こう側の景色が見えるようになった。
 そこにも、マンションのような建物がいくつも見える。

 管理人「下を見てみてください」
 愛原「下?」

 いつの間にか私の後ろから、あの管理人が近づいてきた。
 彼女もまた傘は差していない。
 それどころか、何だか木の棒のようなものを持っている。
 私が言われた通り下を覗くと、私は驚いた。
 このマンションの立地条件、とても不思議だ。
 それは、大きな川の中州に建っていたのだ。
 よく見ると、向こう側に立っているマンションも、中洲の上に建っている。

 愛原「本当に三途の川なのか!?」
 管理人「あなたが生前暮らしていた世界では、そう呼ばれています。私はあなたのような方が彷徨わないよう、管理を任されている者です」
 愛原「そ、そうなのか……!」

 すると管理人は、手に持っていた棒を浮かせると、それに腰かけた。
 下にしていた所がやや太くなっている。
 そこで私は気づいた。
 彼女が持っているのはオール(櫂)だと。
 舟を漕ぐ為の、あのオールだと。
 しかし彼女はそれで舟を漕ぐのではなく、横に浮かせてそれに腰かけ、そのままマンションの外へと飛び去って行った。

[1月18日03時20分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階]

 愛原「はっ!?」

 私はそこで目が覚めた。
 目の前に広がるのは、暗闇。
 そして、後頭部を中心に激しい痛みを感じた。
 こ、これは一体……?
 夢だったのか?
 段々はっきりと目が暗闇に慣れてくると、確かにそこには私の部屋の風景が広がっていた。
 それにしても、頭が痛い。
 何だこれは?
 と、とにかく、頭痛薬を飲んでおこう。
 確か薬は、リビングに薬箱があり、そこにロキソニンを入れていたのを思い出した。
 私は痛む頭を抑えながら、まずはトイレに向かった。
 それから、エレベーターに向かう。
 リサを起こさないように、こっそりエレベーターに乗り込んだ。
 エレベーターの中は照明が煌々と輝いているので、思わず目が眩む。
 それで3階に下り、高橋とパールの部屋の前を通った。
 おせっせした後なのか、それとも今日は乗らないのか、特に2人の部屋からはそういった物音は聞こえてこない。
 薬箱を開けると、果たしてそこにロキソニンはあった。
 冷蔵庫にあるミネラルウォーターでロキソニンを飲むと、これで一安心したのか、また眠気が襲って来た。
 私はまたエレベーターに乗り込み、4階に戻って自分の部屋に入った。
 そしてまた寝入ったのであるが、また変な夢を見てしまった。
 今度は高橋とゾンビ無双している夢だったので、こちらは特段気にする必要は無いだろう。
 要はつまり、今夜は深い眠りに就けなかったということだ。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの帰宅」

2023-10-03 12:33:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月17日20時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 高橋「はい、到着っスー」
 愛原「ありがとう」

 高橋が運転するバネットが、事務所1階のガレージに入る。
 リサが事件に巻き込まれたことは、八王子市内にいた時に知った。
 西多摩郡の事故物件の調査を終え、高橋運転の車で八王子市内を走行中、善場主任から一報が入ったものである。
 そこで急きょ車を、リサが入っているという浜町のクリニックに向かわせた。
 そこにはリサがいて、特段何でも無かった。
 私は色々と事情を聞いて、リサが事件に巻き込まれたことをそこで知ったのだった。

 リサ「あー、疲れた……」
 愛原「取りあえずその制服、脱ぎなよ。クリーニングに出さないと」
 高橋「血痕って、なかなか取れないんスよ」
 愛原「クリーニング屋さんに、何とか頑張ってもらうさ。こんなこともあろうかと、予備がもう1着あるからな」
 リサ「それは助かった。さすがは先生」
 愛原「俺がいた警備会社じゃ、冬服は最低2着支給されてたから、その感覚だよ」

 それが普通だと思っていたのだが、小さい警備会社では1着しか支給されない所もあるようだな。
 私はその感覚だったので、特にリサの場合は1着だけじゃ絶対足りないと思っていたのだが、実際そうであったようだ。
 ただ、どうしても、警備会社のもそうだが、特注の制服は割高になってしまう為、それを現場社員1人につき、2着支給できた会社は大企業だったようだ。
 で、公立よりも割高な制服が基本の私立校……。
 リサに対して、デイライトから資金が供給されてなかったら、2着購入は躊躇したかもしれない。

 愛原「明日、俺がクリーニング屋に持って行くから。汚れたのはブレザーとスカートだけ?」
 リサ「それとマフラー。首を刺されたから、マフラーが1番汚れてる」
 愛原「マフラーは……いいだろ。これは捨てよう。また、新しいの買ってやるから」
 リサ「おー!……マフラーより、ネックウォーマーの方がいいかな」
 愛原「そうなのか?」
 リサ「わたしはね」
 高橋「ネックウォーマーくらい、コンビニでも売ってますよ」
 愛原「黒かグレー1色のヤツだろ?品質はいいんだろうがね……」
 リサ「ずーん……
 愛原「ほら、嫌がってるぞ?」
 高橋「なにっ!?」
 リサ「もっとかわいいのがいい。キュートなの……」
 愛原「……と、仰ってますが?」
 高橋「ワガママなヤツめ」
 愛原「まあ、そういうなよ。取りあえず、上に行こう。リサも腹減ったろ」
 リサ「うん」
 愛原「取りあえず、血の付いた制服は着替えてこい」
 リサ「分かった」

 私はエレベーターのスイッチに鍵を差し込み、それで3階と4階に行けるようにした。
 外部の来訪者が勝手に住居部分の3階や4階に行かないよう、普段は事務所部分の2階までしか行けないようにしかしていない。

 愛原「俺達は3階で待ってるから」
 リサ「うん」

 私と高橋はエレベーターを3階で降りた。
 引き続きリサはエレベーターに乗り続け、4階に向かう。

 パール「お帰りなさい」
 愛原「ああ、ただいま。大変なことになったな……」
 パール「ニュースでやってましたよ」
 愛原「やっぱりか」

 恐らく、明日の朝刊にも載ることだろう。
 ネットニュースによると、そもそも最初にトラブルを起こした男Aは、墨田区に蔓延した弱いTウィルスに感染したハエトリグモを捕まえて飼育していたという。
 それもメスのクモだけ。
 餌を与えると、どんどん大きくなっていった。
 そして、それを大崎に住む友人に見せるべく、普通の紙の箱に入れて山手線に乗ったところ、他の乗客から注意され、トラブルになったようである。
 男Aは鉄道警察に逮捕された。
 刃物を持っていたということで、銃刀法違反。
 あと、電車の中にTウィルスに感染したクモを故意に持ち込んだこと。
 1匹を残して、他のクモをリサが食べてしまった。
 それでリサはTウィルスの感染状況を調べるべく、警察の事情聴取より先に、浜町のクリニックにて検査を受けたというわけである。
 リサ曰く、『Gウィルスや特異菌を持っているのに、今更Tウィルスなんて平気』だよとのこと。
 確かにGウィルスや特異菌より弱いTウィルスがリサの体に入ったとしても、それらに食われて無くなってしまうというオチだろう。
 実際検査してみて、そのようだった為、事なきを得たわけであるが……。
 実はリサは、他に思惑があって、あえてクモを食べたということが明らかになる。

 リサ「今日はミックスフライ?」
 パール「そうですよ」

 体操服に紺色のブルマに着替えて来たリサは、ダイニングにやってきた。

 リサ「先生、これ、血のついた制服」
 愛原「ああ。明日、クリーニングに持って行くから」
 リサ「クリーニングで落ちるかなぁ?」
 愛原「大丈夫だと思うがな……」
 パール「あのー、御心配でしたら……」
 愛原「ん?」
 パール「私のメイド時代の仲間、『ルビー』ならそういうの得意ですよ?」
 愛原「何だって?」
 パール「ケンカ相手の血の痕跡を無くすことが、何より得意でしたので」
 高橋「それは重宝するな」
 愛原「現場の血痕を払拭する能力と、服についた血の痕は別だろう?」
 パール「普通はそうです。ですが、ルビーの場合は違うのですよ。自分の服についた返り血を、全く消してしまうほどの技術の持ち主です」
 愛原「フーム……。普通のクリーニング屋に持って行って説明するのも面倒だし、全部落ちなかったら、それも大変だ。生地を傷めず、血だけを簡単に落とせるのか?」
 パール「それで私達には定評がありました」
 愛原「分かった。料金は多少割高でもいい。きれいにしてくれるのなら、是非頼む」
 パール「かしこまりました」

 ところが、ここで待ったが掛かった。
 善場主任からである。
 何でも、普通の人間の血ならともかく、リサの血にはGウィルスや特異菌が含まれている為、それを外に持ち出すことは禁止されているという。
 ちょっとした血の汚れを家の洗濯機で洗う程度なら構わないのだが、クリーニングに出すほどの大きな汚れの場合は、感染者を出す恐れがある為、処分せよとのことだった。

 善場「予備の1着でしたら、こちらの費用で用意しますので、安全の為、その血痕のついた制服はBSAAに引き渡して処分してください」
 愛原「わ、分かりました」

 リサの血が噴き出した上野駅3番線・4番線ホームは封鎖され、完全に清掃が終わり、ウィルス・特異菌の滅菌が終わるまで、そのホームを発着する山手線外回り、並びに京浜東北線の蒲田~東十条間は終日運休となってしまったそうだ。
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