報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサの黒い考え」

2023-10-14 21:15:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月20日16時12分 天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→都営新宿線1512T電車最後尾車内]

 リサはレイチェルと別れた後、1人で都営地下鉄岩本町駅に向かった。
 BSAAが指定するBOW(Bio Organic Weapon。『生物兵器』)のA級(上級)に分類されるリサは、BSAA支部からの監視対象となっている。
 但し、あくまでも分類上というだけであって、実際は本部監視対象のS級(特級)の強さであるとされている。
 現在S級に指定されているのは、イーサン・ウィンターズ(故人)のみ。
 娘のローズマリー・ウィンターズは現在、2~3歳のヨチヨチ歩きの幼児ながら、既にリサと同じA級に指定されているという。
 A級だと常に監視が付くものの、例外的に単独行動が認められることもある。
 それがリサの場合は通学など、学校関係に限られているわけだ。
 S級に指定されようものなら、一切の単独行動ができないVIP並みの待遇だ。
 本部からの監視がしやすいよう、イーサン同様、ヨーロッパに移住させられるかもしれない。
 それもまた、リサがあえてA級にされた理由かもしれない。
 レイチェルはそこを怪しんで、『日本政府が核兵器を持てない代わりに、リサを抑止力に使いたいのでは?』と思っているようだが……。

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 リサが最後尾の車両が来る位置で電車を待っていると、トンネルの向こうから、轟音と強風を伴って電車がやってきた。
 車両は東京都交通局のもの。

〔4番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう、岩本町。秋葉原〕

 都営地下鉄でありながら、終点が千葉県という変わった地下鉄。
 どうしても、総武線と接続したかった結果なのだろう。

 

 比較的新しい電車であった。
 愛原に言わせると、初期車と比べて車内が明るく、座席も柔らかいのだという。
 しかし、そんなに空席があるわけでもなかったので、リサはドアの前に立っていた。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 短い発車メロディの後で、車両のドアとホームドアが閉まる。
 車両のドアチャイムは、JR東日本のそれと同じ。
 尚、乗り入れて来る京王電車のドアチャイムはJR東海のそれと同じである。
 ドアが閉まり切ると、車掌が運転士に発車合図のブザーを鳴らす。
 すると、エアーの音がして、電車が走り出した。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕

 都営地下鉄の車掌は、乗降扉を閉めても、乗務員室のドアは閉めない。
 出発監視が終わってから、ドアを閉めるのである。
 今はホームドアがあるので、見た目はそれほどでも無くなったが、ホームドアが無かった頃は、見ていて随分とアクロバティックな出発監視に見えたものである。
 これは何も都営地下鉄に限ったことではなく、例えばワンマン化前の札幌市地下鉄の車掌も似たような出発監視をしていた。
 リサはスマホで愛原とこれから帰宅する旨のやり取りをしながら、そんなことを思い出した。
 愛原が地下鉄など電車に乗る度、鉄ヲタ知識を披露してくるので、リサもいい加減覚えてしまったのである。

 男子高生A「……というわけで、学級閉鎖ってわけよ」
 男子高生B「つったって、土日挟んだら意味ねーべや」
 男子高生A「タイミング悪過ぎだよなぁ……」

 近くの席に座る男子高生達が何か話している。
 違う制服を着ているので、他校の生徒のようだ。
 どうやら話しぶりからして、その学校、インフルエンザが流行して明日から学級閉鎖になるらしい。
 ところがどっこい。
 明日から土日なので、この時点で学級閉鎖と言われたところで、あんまり意味無いと話していたのであった。
 少なくともこの2人の男子高生、リサと同じく黒いマスクをしつつも、特に咳き込んだりしている様子は無いので、感染者ではないようだ。

 男子高生A「あれ?オメーんちも誰か感染者出なかったっけ?コロナ?」
 男子高生B「ちげーし。ノロウィルスだよ。父親が飲み会でカキ食ったら、ノロウィルスになったみたいでさぁ……」
 男子高生A「マジで?それヤベェじゃん。ノロって、寄生虫だっけ?アメーバー?」
 男子高生B「知らねーよ」

 そうこうしているうちに、電車は馬喰横山駅に到着する。
 ウィルスの話で盛り上がっている男子高生達は、ここで降りて行った。

 リサ(寄生虫かぁ……)

 再び電車が走り出す。

〔この電車は、各駅停車、本八幡行きです。次は浜町、浜町。明治座前。お出口は、右側です〕

 リサは左手の掌を見た。
 そして、隠れてこっそり触手を少しだけ出してみる。
 ちゃんと自分の意志通りに、掌から触手が出た。
 最近は電撃が弱くなっている。
 恐らく体内でウィルスや特異菌の比率が変わったか、また変化が起きているようである。
 但し、見た目は何も変わらない。
 Tウィルスに感染した蜘蛛を食べたことにより、体内にあったGウィルスと特異菌が何か動いたものと思われる。
 そうしてリサの中で起きている変化というのが……。

 リサ(電撃使いではなくなって、また前の寄生虫使いに戻ろうとしている……か。ふーむ……)

 明日は土曜日である。
 しかし、今週月曜日の大雪による臨時休校のせいで、土曜日が振り替え登校日となってしまった。
 但し、遅れている授業を取り戻すだけなので、月曜日と同様、午後までマックス授業が行われるわけではなく、午前中だけである。
 また、月曜日の分の食堂のフードロスを防止する為、学食も臨時営業される。
 その後は、もう下校ということだ。
 そして、明日はレイチェルは登校しない。
 つまり、BSAAの監視が弱くなるということである。
 いくら養成学校からの留学生とはいえ、BSAAに籍を置いている者が近くにいるというだけで、実質的にリサに対する監視が強化されたようなものだった。
 それが若干弱まるということは……。

 リサ(ちょっと……試してみるか)

 リサはニヤリと笑った。
 黒いマスクをしているので口元は見えなかったが、マスクの下は鋭い牙が覗いていたことだろう。
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“愛原リサの日常” 「1月20日の夕方」

2023-10-14 15:54:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月20日15時56分 天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅・高いホーム→山手線1505G電車・先頭車内]

 下校したリサとレイチェルは、JR上野駅に向かった。
 淀橋と小島は、部活動の関係で学校に残る為、リサとレイチェルが先に帰ることになった。

 レイチェル「クラブ活動ですか。楽しそうですね」
 リサ「わたしは禁止されてるからなぁ……」

 許されているのは、助っ人要員くらい。
 新聞部の手伝いもあったし、生徒会の手伝いもやったし、文化祭実行委員会もやったし……と。
 本格的に入部は許されていないのがリサだった。
 ぶっちゃけ、BOWは学歴不問なので、中卒でも良いくらい。
 それをデイライトの計らいで、大学までは行かせてやるという大盤振る舞いなのだから、文句は言えない。
 BOWがどこまで人間の生活ができるかの観察の為、ということになっている。
 もちろん暴走したら、すぐにBSAAが対処に当たることになっている。
 まずはレイチェルが、鞄か制服にでも隠し持っている銃を発砲することになるだろう。

〔まもなく3番線に、東京、品川方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。次は、御徒町に、停車します〕

 レイチェル「私も留学生ですから、入部は許可されてませン」
 リサ「あれ?他校だと、陸上部とか野球部とかに、たまに留学生がいるけど、あれは?」
 レイチェル「そういう目的で留学しているのでしょう。でも、私は違います」
 リサ「ふーん……。運動神経は抜群なのにねぇ……」
 レイチェル「養成学校でキビシい訓練を積んで来ましたから」
 リサ「……わたしには無理だわ」

 そして、電車がやってくる。

〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、御徒町に、停車します〕

 いつぞやのように、アタオカ野郎が刃物持って飛び出してくることはさすがに今日は無く、普通に下車客が降りて来るだけであった。
 2人は先頭車に乗り込んだ。
 レイチェルは中目黒駅の近くに住んでいるというが、『魔王軍四天王』の1人、美術部の桜谷が公営住宅に住んでいるのに対し、レイチェルは別の地区のマンションに住んでいるという。

〔「お待たせ致しました。まもなく、発車致します」〕

 女性車掌の肉声放送が流れる。
 上野駅はターミナル駅なので、たまに電車が時間調整で1分ほど停車することがある。
 すぐにホームから、発車ベルの音が響いてきた。

〔3番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 ホームドアと車両のドアが閉まり、電車は走り出した。

〔この電車は山手線外回り、東京、品川方面行きです。次は御徒町、御徒町。お出口は、左側です。都営地下鉄大江戸線は、お乗り換えです〕

 リサ「明日も学校があるけど……」
 レイチェル「残念ですが、明日私は休みです」
 リサ「えっ、どうして?」
 レイチェル「毎週土曜日は、BSAAで1週間の報告とRemote lectureがあります」
 リサ「リモートレクチャー?」

 リサは首を傾げたが、どうやらBSAAの養成学校生は、外国に留学しているからその講義が免除になるわけではなく、重要な座学においては、DVDに録画したものを学習しなければならないようである。

 レイチェル「他にも戦闘訓練を受ける日もあります」
 リサ「わたしみたいなヤツを倒すのに、本当大変なんだね……」

 リサはレイチェルの活動が、自分達を退治する為の物であることは知っているので、少し複雑な気分だった。

[同日15時59分 天候:晴 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅]

 2人を乗せた山手線電車が、秋葉原駅に到着する。

〔あきはばら~、秋葉原~。ご乗車、ありがとうございます。次は、神田に、停車します〕

 2人は電車を降りた。
 中央線と総武線が交差する比較的大きな駅ではあるが、南北に走る通勤電車がここで時間調整をすることは、ダイヤの乱れ以外では殆ど無く、すぐに発車メロディがホームに流れる。

 リサ「レイチェルは、家での食事はどうしてるの?」
 レイチェル「BSAAで用意してくれてます」

 通常の留学生であれば、ホストファミリーの家に滞在することもあり、食事はそこが用意する。
 寮に入る場合は、寮で用意されるわけだが、レイチェルの場合は特殊である。
 国連軍の一派BSAAの養成学校生ということもあり、滞在先はBSAAが用意したマンション(官舎?)。
 食事もBSAAの基地で取ることになる。
 レイチェルの言う『報告』や『訓練』も、そこで行うようだ。
 自衛隊の駐屯地が近い上、バイオテロに使われたウィルスの研究もそこで行われているということもあり、そこにレイチェルが関係しているのだろう。

 リサ「大変だねぇ……。レイチェルは、BSAAに本格的に入ったら、何をしたいの?」
 レイチェル「医官を目指しています。つまり、軍医ですね」
 リサ「お医者さんになるの?」
 レイチェル「はい。とはいえ、まずは衛生兵からですが」
 リサ「本当に大変だ……」
 レイチェル「BOWとの戦闘に倒れた兵士を治す仕事に憧れています」
 リサ「な、何かスイマセン……」

 兵士に大ケガどころか、食い殺すのがBOWの仕事なので。

 レイチェル「タイラントとの戦闘訓練の時は、訓練中の事故で、私の同期の養成員が何人か死亡しました」
 リサ「シュールだな、おい!……てか、戦闘訓練でタイラント君って、ちょっと厳し過ぎない!?」
 レイチェル「厳しいと思います。でも、これからもっと凶悪なBOWが世に出てくることでしょう。そんな時、初期のBOW程度で負けているようでは、話にならないのです」
 リサ「今度タイラント君に会ったら、『もう少し手加減してやって』って言っておくから」

 底冷えのする東京の冬だが、リサはレイチェルの話で、別の意味で震えたという。
 そして、秋葉原駅は昭和通り口から出る。
 結局、レイチェルとは和泉橋の袂にある東京メトロ日比谷野線の乗り場の前で別れた。
 リサはその和泉橋を渡って、その先にある岩本町駅に向かうことになる。
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